第3話

キミと僕が知り合ったのは

僕が就職して2年目に入って

仕事もなんとなく慣れた5月。


職場に出入りしていた業者の

年はひとつ上の人と

なんとなく話していて

友達を紹介してくれると

言ってもらったのが

始まり。



キミはオープンカーに

乗ってやってきた。

ホロは閉じていたけど。


初めて会った日

正直言って

何をしたのか

どこを走ったのか

全く記憶がない。

僕は舞い上がっていたから。


映像としての記憶は

ないのだけど

映画を観に行ったと

思う。

もちろん内容なんて

全然覚えていない。

ジャッキーチェンだったか?


キミは働いていなかった。

その初めてのデートは

割り勘だったけど

後々のデートは

僕がお金を払ったと

記憶している。


安月給だったけど

通帳がマイナスに

できたので

マイナスギリギリに

なるところまで

デート代を出した。




一人暮らしだったので

僕の家にキミはしばしば

泊まっていった。

キミの車は赤い色で

よく会社でからかわれた。

また車停まってたね。と。


ずっと一緒にいたかった。

それだけだった。


キミは自宅ではなく

ある演歌歌手の家に

居候していたね。

僕がそこに泊まることも

ちょくちょく。



車で行けば

そんなに遠くないけど

その当時、

僕は車を持っていなくて

キミに会いたいと

思ったときは

歩いてでも会いに行った。

夜中でも。


2時間?3時間?

キミに会えるのなら

全然平気。


キミの棲むところに

近づくにつれ

キミに会いたい気持ち

いっぱいであふれて

辛くなかった。


キミはそんな僕を

受け入れてくれた。

僕は別に会えなくても

大丈夫だった。

帰るつもりだった。



そんな半同棲的な

生活は2年〜3年くらい

続いた。


キミは居候先から

出るように言われ

行くところがないと

僕の部屋に

転がり込んできた。


本当に毎日一緒の

生活が始まった。

僕が望んでいたことで

嬉しかった。




相変わらず

お金がなかったので

苦しかった。


でもキミは

僕にお金がないこと

知っていたんだ。

別れるとき

キミは教えてくれた。




キミはお金を使わないよう

貯金していた。

なんともすごい

守銭奴ぶりで

僕は辟易していた。


欲しいものをがあると

いろんな店を調査して

それがデートだったのか

僕にはキツかった。

待たされるのが

とても苦手だったんだ。


しつこいくらい

欲しいものを何度も

見に行っては

買わずに帰る。


お店は1日に何件も

回ったんだ。

僕は関係ないから

ただの苦痛でしかないが

ついて行った。



お揃いが好きなのか

キミは野球チームの友達と

車にアンテナにつける

ニコちゃんマークの飾りを

一緒に買ってたね。


僕はほんとはそういうの

嫌いだった。


それこそいらなくない?

いつもは買わないのに

そんなものは買うんだ。


口から出そうになるが

我慢した。

だって僕とキミは

対等でなかったから。







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