ヘイトフル・エイト

 むしろこの映画を語りたいがためにこのエッセイをはじめたというくらい、猛烈に心揺さぶられちまった作品です。


 クエンティン・タランティーノ監督。


 名前はよく聞くけど、あんまり観たことがない。血がビシャーな映像が多い。私はそういうのが平気な人でよかった。今回もめちゃくちゃビシャーてなってました。


 ひゅう!

 最高だったぜ!!



 舞台は吹雪の山小屋。時代は南北戦争直後。


 ハリウッドではなかなかに気を使う黒人差別と、はじめは静かにだべっていくのが、だんだん登場人物も増え、緊張感も増していって、衝撃のラストに続く!



 で、ネタバレありで語ります。


 まずね、最初に出てくる黒人の少佐がかっけーのなんのって。


 何百人もの白人に敵視され、追われ、命を狙われた極悪非道とも言えるぶっとんだヤツで、なのになぜ今もピンピンしているかと訊かれたら、「理由はひとつ、おれだからだ」と言い放つ。


 か、かっこいい……!

 抱いて!!


 そして2番目にあらわれるのが、白人だが黒人に同情的な賞金稼ぎのおじさん。

 こいつもなかなかいいヤツだ。ろくでもねえのはたしかだが(つーか、登場人物だいたいろくでもない)差別発言にガチで切れたり、リンカーンの手紙を読んで涙したり、「おれの仕事は処刑人に届けること」という信念で、捕まえた生死問わずの悪人を生きたまま町まで連れて行く。(そしてそのせいで死ぬ)


 で、三人目がいけすかない白人の保安官(自称)。

 若く、黒人を嫌い、ろくでもない。


 この三人が賞金稼ぎの連れてる女とともに馬車に乗り、山小屋に非難して吹雪がおさまるのを待つ。しかしそこにはすでに、数人の先客が待っていて、事件がおこる。



 ひゅう!


 舞台はそろった!

 こっからが面白いんですよー!!



 基本的に長いセリフの応酬が続くので、合わない人はとことん合わないのかもしれない。だが、あえて言おう。


 この映画面白いよ!!


 登場人物ひとりひとりがくせ者ぞろいだし、え? 次なにが起こるの?? と飽きさせない。そしてそれぞれに意思と信念があって、誰が善玉で誰が悪玉なのかわからない。いいや、たぶん全員ワルだ。これはそういう作品だ。


「オメーラ目ん玉かっぽじってよく見やがれ! 映画ってのはこういうもんだー!」


 というタランティーノの叫びが聞こえてきそうである(聞こえない)



 個人的に大好きだったシーンをいくつか。


 もちろん筆頭は黒人少佐の「オメーの息子に会ったことあるぜ」からはじまるおそろしい長ゼリフ。

 そして「ミニーのシチューは」からはじまる、ソファの毛布をひっぺがすシーン。

 さらに、コーヒーを飲むところ。


 震えたぜ。


 黒人少佐と白人の保安官(自称)が、はじめから反目し合っていたくせに唯一共通の認識で「たとえ賞金首でも女を殺すのってどうなん?」と言っているのがたいへんに面白い。そしてラストで、そのふたりが手を取り合ってくだんの女賞金首を首つりにするシーンが、もうね、最高にいい。血まみれで瀕死のふたりがゲラゲラ笑いながら女を殺すシーン、もういっそすがすがしいほど楽しそうである。ここにふたりの友情が確立された!


 めでたしめでたし!



 ちなみに画面に出てきた人間、全員死にます。


 ごちでした。

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