第3話 勧誘③
朱色の空に肌寒い風が吹く。
少年の髪はなびくが少年は気にせずに上へ上へと歩いていく。
そして着く。街が一望出来る場所へと。
「やっぱり最後は......この場所かな......」
少年の声は弱々しかった。
この場所は少年にとっては特別な場所だった。いじめられた時には必ずこの場所に来ていた。この場所は今は亡き母が教えてくれた場所だった。
服にはほこりや砂がつき、顔にはあざやかすり傷があった。
少年は学校に行けばいじめを受け、家に帰れば家族からは無視をされる。
日々の生活の中で少年は精神的に疲れてきていた。
「死んだ方が楽なのかな......」
少年は柵を乗り越え、落ちるギリギリの所に立つ。
するとガサガサという音がした。音のする方に行くとそこには黒色の猫がいた。
「どーしたんだい?」
人間の本能的ななにかなのだろうか。自然と話しかけてしまう。猫に言葉が通じないことは分かっているはずなのに。
「聞いてくれるか......?」
少年は今までのことを話し始めた。
猫にも通じたのか猫は少年の側から一向に離れる様子はなかった。
「聞いてくれてありがとね」
そう語りかけた時どこからか声が聞こえた。
「それは大変だったにゃ」
精神的な何かと思ったのか、声を無視して柵をまたごうとする。
「ほんとに死んじゃっていいかにゃ?」
まただ。またどこからが声が聞こえた。
「気のせいかな......?やっぱり精神的に......」
「下にゃよ」
そう言われて下を見るとそこには先程の黒猫がいた。
「え......君が喋ってるの......?」
「そうにゃ!」
まさかおとぎ話のようなことが現実で起きるとは。少年は最初は驚きはしていたものの今はもういつもの顔に戻っていた。
「まさかおとぎ話のようなことが起きるなんてね。僕は今から死ぬんだ」
「ほんとにいいかにゃ?」
「あぁ。もう辛いんだ......」
「そうかにゃ。だったらこれを読んでほしいにゃ!」
そう言われると空から1枚の手紙が落ちてきた。
恐る恐る開け、中身を見ると......
あなたは非常に優秀な才能の持ち主です。君のその優しさ。いずれ仲間ができた時に役にたつでしょう。そして君のその賢さ。更には君には動物と話せる特別な能力があります。
どうですか?是非私共と一緒に楽しいお遊びをしてみませんか?
「なんだよ......これ?」
「それはお遊びの招待状だにゃ!」
「お遊びってなんだよ?」
「それは企業秘密だにゃ!この場所に来てくれるかにゃ?」
少年は考え込んだ。学校にも家にも行かなくて済む。だが新しい先でまたいじめられたらどうしよう。
そんな不安と恐怖が少年の内にはあった。
少年の心を読んだのか否か黒猫は......
「心配しなくていいにゃよ?君みたいな人や優しい人達がたくさんいるにゃよ!」
その一言が少年の心を押したのか少年の顔は明るくなった。
「それじゃ行ってみるよ!新しい仲間を作ってみるよ!」
「良かったにゃ!」
そう言うと柵を乗り越え黒猫と共に支配人の所へと歩き始めた。
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