第8話 わたしの知らないこと

それからの彼は、少し変化があった。


0時付近には帰宅するようになり、夕食を食べた後の皿も自分で洗うようになった。

また、土日は必ず家にいて家族と出かけたり、子供たちとお風呂に入っていた。


これは世間一般では普通なのかもしれないが、今までと比較してしまうとわたしにとっては大きな変化で、とても感動していたのを覚えている。

セックスも互いにぎこちなかったが週に1度ペースでするようになったし、子供が寝たあとは二人でレンタルビデオ屋さんで借りた映画を観て過ごす時間ももてた。


でも、そんな日は長くは続かなかった。


はるたがいたずらで棚の上の箱をひっくり返した。

それは彼が乱雑にレシート等を放り込んでいた箱だった。

あらら、と思いながら拾うと信じたくない文字がいくつも頭に入ってきた。


わたしは知らない。

こんな遊園地、水族館、飲食店、ラブホテル。

平日にセックスをしていただけ、と彼が言っていたのは嘘だった。

しかも日付はゆうきが産まれた直後から。


彼に嘘をつかれていた。


もしかしたら、まだ続いている?


そう思いながらわたしはレシートやポイントカードを一枚ずつ写真に残した。


わたしの心中は穏やかではなかった。

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わたしのこと。 結城春 @yu_ki_haru

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