第6話 わたしと現実
震える手で、彼のスマホ画面を自分のスマホで写メった。
はるたは朝食のトーストに夢中だった。
わたしはゆうきを抱き抱えてソファの上に横になった。
貧血で倒れたことは何度かあったが、そのどれとも違う、不思議な感覚で立っていられなくなった。
予感はしていたのにこんなに目眩がするなんて、わたしは多分、自分で思っていた以上に彼を信じていたんだなぁ。
その時はただただ信じられなくて、涙どころではなかった。
彼がシャワーから出てきた。
もう聞かずにはいられなかった。
「ごめん、スマホの画面みた。あれなに?」
彼の動きは止まった。
だが、水曜日は絶対に外せない会議があると、彼が以前言っていたのをわたしも聞いていた。
だから、今夜仕事から帰ったら話をしようと言われた。
わたしにも少しひとりで考える時間が必要だったので、それを承諾した。
彼を見送ってから、家事のルーチンをこなしながら、自分の頭の中を整理しようとした。
今夜、何を話すのか。
相手はどこの誰なのか?
いつから?
わたしたちは離婚するのか?
ひとりで考え込んでもパンクしそうになった。
育児休暇中なのが痛い。仕事でもしていれば気も紛れたのか。
でも、仕事をしていたら彼の浮気の確証を得ることは出来なかっただろう。
もやもやしながら、昼休みを見計らって信頼できる友人に電話をした。
友人はとても驚いていたが、やはりわたしより冷静だった。
とりあえず今夜の会話は録音するよう言われて、スマホの録音アプリをインストールした。
友人と話をしていたら涙も零れてきて、たぶんここで、わたしは初めて事実を受け止められたんだと思った。
その日はどこかぼんやりとしたまま、1日を過ごしてしまった。
今夜、彼は何を話すのだろうか。
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