第5話 わたしと彼の終わりのはじまり

彼が何を思っているのか、何をしているのか、わたしには全くわからなかった。


彼は浮気をしながらも、私たち家族に嘘をつき、それを隠しているのか。

それとも本当に仕事が忙しいだけで、わたしがひとりで疑念を抱いているだけなのか。


彼のスマホを見ることは容易かった。

なぜならわたしは彼のスマホのパスワードを知っていた。

でも、それが出来なかったのは多分わたしがまだ彼を信じていたから。

それにスマホの中を覗いて何もなかったら、自分がひどく卑しくて嫉妬深いことが証明されてしまうような気がしていた。


わたしは彼の様子を伺いながら、いつも通りを装い日常生活を送っていた。


あれは水曜日の朝だった。

彼はいつも通り朝方に帰宅し、シャワーを浴びていた。

わたしは子供たちと朝食をとっていた。

テーブルの上にうつ伏せていた彼のスマホが震え、反射的に手に取ってしまった。


画面には数日前に見た犬のぬいぐるみが。

「愛してる」


目眩がした。

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