第19話

徐々に体力が回復していくとはいえ、まだまだ辛い帰り道であった。既に意識を取り戻したファストは後悔と、あとどちらかといえば、恥ずかしさでいっぱいであった。


「マジ、ごめん」


「まさか一人で突っ込んですぐ死ぬとは、相当な賭けに出たねぇファスト君」


サイクロの言葉が突き刺さる


「弱いものばかりの倒し方ではなく、強いものの倒し方を手に入れなきゃな」


「私のアロトオデンがなかったらどうしたことか…」


「対策立てないと…次は絶対に勝つぞ!」


「やる気だけはあるけどそれだけじゃうまく行かないこの世界」


「まだ俺の冒険は始まったばかりなんだ!」


「ガハハハ、この隊飽きはしなさそうだな」


それ褒め言葉なの?


「萌ちゃんも回復ありがとねー」


「いえいえ、初めてのクエストで緊張しましたが、力になれてよかったです!」


「ご主人様、この後希望団の総会があるので、 家に戻る前に行きますよ」


「あぁ、わかった」


こんなくらい心境の中総会かよぉ。ちっとは休みたいもんだ




「次は団長の話です」


絶対ダルい


「皆さんごきげんよう団長のホーバー・続・ンルプです。今日は希望団の存在理由について今一度語りたいと思います。」


あぁ、ンで名前始まる人か


「我々希望団が目指すのは『永幸の被造世界』の完成。何度も話してきたとうり、全生物が永久の、不幸のない幸福だけの世界を創るというもの。これは世界の再建であり、世界軸、はたまたワールドまでもを変えることであります。しかしこれが完成すればこの世は本当の意味で完璧と言えるのです。補完とは違いますよ。新しく作り直すのですから」


「なぁワールドって何だ?」


「そういえば教えてなかったですね。いいですか、この世は主に2つの神によって治められています。1人はこないだ話したと思いますが、全てにおいてこの世で最も優れ、完璧を体現化したかのような神。総神です。ちなみに彼があまりにも優れているために彼を説明、比喩するために50余りの言葉ができたと言われてます。そしてもう1人がワールド。漢字では『世界』で、この世のありとあらゆる秩序、法則、因果その他諸々を司る神であり、バランスを保つ神でもあります。主にワールドがこの世の秩序を守り、総神様が秩序を乱すものを排除するとも言われますが、正直どちらも謎多き方々です」


「え、じゃあその2人が俺たちの起源を作ったってこと?」


「作ったのはワールドとされていますが、それも謎です。第1、ワールドと総神はどこから生まれたのかも謎ですし…」


「ふーん。正しく不思議だなぁ」


「ちなみに総神様は五代聖神のうちの1人であり、その他に、時空神、逆神、定設神、気神がいて、どれも強さは最強クラスです。また総神は代々変わっており、現在ちょうど99代目です」


お、じゃあ俺は100代目だな


「それで、どんくらい強いの??」



「総神級に強いです」


あ、言葉ができたってそゆこと


団長の話に戻る…


「ですから私たちはただ相手を殺すだけではなく、和解などの手段を用いて解決し、平和に近づくことも大切なのです。皆さん、これからも日々頑張って行きましょう」


「気おつけ!礼!」


この文化はこっちにもあるらしい…



〜ファスト達の家にて〜


どうすればあいつに勝てるんだ?あの多きな金棒、明らかに剣では太刀打ちできない。神術を打ちロバイルが、ってあいつは切れないんだった…じゃあどうすればいいんだ?萌ちゃんの護衛はバイブルに任せるとして、あいつも援護射撃しながら…うーん!全くわからん!


「バイブル、どう思う?」


本のままリビングのテーブルの上にいるバイブルに話しかける。


「今の私達ではかなり難しいでしょう。それに、彼の体に私達の攻撃はほとんど無効に近いです」


「えぇ!なんで?」


「あれは鬼族であり、彼らの最大の特徴は鋼鉄の肉体です。刃でも斬ることはできません。アロトオデンはあの時波動の神術を混ぜたので吹き飛ばすことができましたが、恐らく相手にはゼロダメージ。諦めましょっか」


「うーん、考えさせてくれ」


諦めるべきなのか?諦めていいのか?そもそもなんで俺たちはあいつを狩ろうとしているんだ?まぁ一旦ロバイル達に聞いてみるか。


「なぁロバイル、お前はあいつと又戦いたいか?」


「拙者はどっちでもいいが、少し行きたい気もするような…うん、お前に任せる」


マジかぁ。てかこいつ一人称拙者だっけ?まあ気にしない気にしない。


「サイクロ、お前は又


「好きにどうぞ。 また行くなら行くよ。それよりもねぇファスト、私まだ聞いてないことがあるの」


「なんだ?」


「前から気になってたんだけどさ、なんであなたは戦うの?なんのため?狩りするのは楽しんでるようだけど、もしかして、それだけ?」


悩み事増えタァァ!



確かになんで俺は戦うんだ。元々異世界に憧れてきたけれども、まあまあ異世界ライフはできている気もするけど、無残に他の命を自分のために殺して何がいいんだ?それは正義か?なんのためなんだ?そもそもなんで俺はこの世界に呼び出されたんだ?


しばらく考えることは続く…


永遠の幸福かぁ。 それがあれば、みんな笑って暮らせるのかぁ。いいなぁ、それ。敵味方無く、平和にかぁ。そんな世界作れるのだろうか。いや、団長はそれを創ると言っているのか。希望団に入ってるってことは、サイクロはそれを望んでるのかなぁ。


この時サイクロへの好意が、少しファストの心を動かした。


「まぁサイクロが望むのなら、そのためでもいっか」


「お前ら、明日もう一度あいつのもとへ行く。今日はもう遅い、また明日作戦は発表する」


「御意」


「了解した」


「オッケー!」


「考えはまとまった?」


サイクロが小声で聞いてくる。


「まぁな。おやすみ」


「おやすみ、明日、頑張ろうね!」


〜翌日〜

「よし、お前ら行くぞ!」


作戦は決まった。 あとは実行、そして成功あるのみ!行くぞ!俺たち!


「敵を発見」


「よし、みんな!戦闘配置につけ!バイブル、カウントダウンよろしく頼む」


「5」


「ロバイル、配置についた」


「4」


「3」


「サイクロ、配置についた」


「2」


「ファスト、配置についた!」


絶対いける絶対いける!頑張れ俺!


「1」


静まり返る












「0」


「発射!」


バイブルがスナイパーライフルのトリガーを引く。銃弾は木を突き抜け、鬼の頭に当たる。


しかし、甘くはなかった。鬼は金棒で銃弾を打った


何!でも、今だロバイル!


金棒をもう一度振り下ろすには時間があるはず、ここでロバイルが出るが、これは陽動。このあとすぐにサイクロが火球を鬼へとぶち当てる!


「ファリト!」


と、サイクロが叫び火球が飛んだ瞬間、ロバイルは陽動の役目をおえ敵から離れた。


そのまま火球が鬼にぶち当たる。


「そして俺!」


剣に宿すは雷属性。 このまま胴を真っ二つに切ってくれる


「サトラッシュ!」


さあ斬るぞ!


きっと奴の顔は恐怖で怯えて、、


怯えて…



この時、ふと思い出した

『不幸のない幸福な世界』

『和解などの手段を用いて…』


「ファスト!止まるな!」


「何してるの!今だよ!」


違う、まだだ。可能性はある。



よく考えるんだ、俺。お前は何がしたいんだ?



剣を鞘へと戻す



よし、決まった



「突然ですが、あなたは喋れますか?」


「あぁ、喋れるとも」


「なぜあなたは村を荒らすの?」


「私は荒らす気は無かった。ただ村の方へと行くと勝手に奴らが攻撃してくる。最初は耐え、会話しようと試みたが、相手にしてくれない。だから私は正当防衛として己の金棒を振るったまで。村を荒らしたことになったのは、その時の被害だ」


「じゃあお前はもし俺が攻撃しなかったら俺たちに攻撃して


「こない。なぜ無意味に争わなければならぬ」


「すまなかった。本当に、すまなかった!許してくれ!」


俺はそこで土下座をした。


「フフフ、わかってくれただけいいのだよ。よく気づいてくれた。私は嬉しいよ」



すると鬼はだんだん小さくなり、普通の人の形へとなった


「お主、名前はなんという。私は鬼神・堅羅・時轟という」


「俺はファストだ。よろしくなじどろき。なぁ、よければ


「喜んで」




平和ってこんな感じかなぁ




〜その夜〜


「では、新メンバーを祝って、乾杯!」


「ガハハ、流石にファストが止まった気は、息が止まったわ!」


「もう本当だよぉ〜。ファスト、あれ作戦だったの?」


「ううん、あの時気付いた」


あの判断は正解だったかな


「ご主人様、あなたらしい行いができましたね」



これが、俺らしい行いか。優しさか。



「よし決めた、俺はこれから平和のために、永遠の幸福を実現させるために、敵と対峙していく!」


「おお!よく言った!」


「いくぞぉぉ!!」


「私も頑張らなきゃ!」



「お前ら飲むぞぉぉ!!!」


「おっしゃファスト飲み比べじゃ」


「お、時轟望むところだ!」


「さぁさよってらっしゃみてらっしゃい、飲み比べだよ!」


バイブル何してんだ…

まぁいっか!


「おっとファスト選手倒れたーー!!」

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