第18話
「よっしゃお前ら次のクエスト行くゾォ!!」
「あいつまだあの気性抜けてないの?」
「ぜんぜんイメージと違う…怖いです…」
「ほらぁ、ファスト、萌ちゃん怖くて縮こまちゃってんじゃん!」
なにぃ?!
俺があんなにか弱い女の子を怖がらせてしまったのか…
「ごめん!神無さん!」
「ひゃぁあ!私はだいじょーぶですよ。あと、萌でいいです」
右斜め下を見ながら話す萌
うぅーーん、ザ・萌え!
「では次のクエストに行きましょう!」
そうして僕たちが目指したのは、リテロという街だった。
「随分とひっそりしてんなぁバイブル」
「そうなんですよご主人様。実は最近ここらへんでとても強くてでかいモンスターが暴れていて、村人達が襲われて困っているそうなんです。今回はそれを討伐しに来たんですよ」
なんだその設定。昔話とかでよくあるやつやん。
「ねぇねぇそいつって私達でも倒せるのかな?」
「おいおい弱腰だなサイクロ。それじゃうちの神術使いは務まらないぜ。見ろよのこのうちのリーダーの立派な…立派な、それはそれは立派な…
「もういいわ!」
絶対ぶち殺してやる。
この時ファストは狂気と悲しみで溢れていた。
「まぁまずはあるあるとして村の人に聞き込みですね」
「お前ファ○ナルファ○タジーとかド○ゴンク○ストとかやってた?」
「一通りそこらへんのは手つけてますよ」
なんて気の合いそうな神導書でしょう
「村を荒らしてるモンスターについてか?わかった教えよう。立ち話もなんだ。そこの小屋で話そう」
親切にも老人はすんなりとファスト達を受け入れた
優しいじっちゃんだなぁ。いや、それとも俺らに簡単にすがるほどピンチって事なのかなぁって
「デカ!これ明らかに小屋じゃないだろ!」
ファスト達が入った小屋は周りから見ると確かに小屋だが、中は体育館ほどの広さがあった。
「なぁなぁこれをお前らは小屋って呼ぶのか?」
サイクロに確認したら納得いく答えを聞いた
「あの人は周りから見たら小屋だけど中は開いってことを言いたかったんでしょ。ちょっとしたジョークね?もしかしてそんなんもわからなかったの?」
「なわけ」
ここは気力で誤魔化す
「あいつらは急に現れたんじゃ」
「あるあるですね」
「山の方から降りてきてな、周りにあるものをなぎ倒すなり、吹っ飛ばすなりしてどんどん破壊しながら村まで来たんじゃ」
「あるあるですね」
「そしてついに村を破壊し始めたんじゃ。たまたまこの村には神源が近くにあってな。そこから神力を抽出して払い神術を完成させたんじゃが、それを作れるものも殺されてしまった。もうわしらは何もできん」
「あるあるですね」
「あるあるかなぁ?!途中までは確かにあるあるだったけれども、後半あんまり見ないタイプじゃね?てかさ、いくらRPGやってるからといっても『あるあるですね』っていうのはやめようぜ?すげえうざいから」
「まぁ、ご主人様が言うのなら…」
キュン!
「村の人で怪我をしている方はいらっしゃいますか?回復できますよ?」
「そういやお前いたな」
「えぇ?!、、」
ラノベ主人公ばりの鈍感さを見せるロバイルと真面目に戸惑う萌。
うん、このコンビいいかもしれない
「おぉそれは助かる。こちらへ」
「じゃあその間俺たちは作戦会議といくか」
「さて、ファスト軍曹のお考えをお聞きしようじゃない」
「お前どしたか」
「まず森に向かい、今日の夜は偵察とします」
「ねぇ俺がいうんじゃないの?」
「見ろよファスト萌の髪ふさふさしてるしほっぺたプリンみたいにプニプニだぞ」
「ちょっと待ったコラァァ!ロバイル!」
なに勝手にロバイルは萌に触れとるんじゃあぁぁ!
「で最終的にこいつが例のスキルを発動と」
「こいつじゃねえよこいつじゃ、ご主人様って呼ぶやつどこ言った!てかお前なにげにカミングアウトしてんじゃねえよ!」
「見てみてアホ毛三本もたったー!!」
「いやぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあああぁぁあぁあぁ!」
数分後
「では改めて説明する」
「「「はい」」」
彼らには「はい」しか言えない神術をそこらへんにいた神術師にかけてもらった。
「まず森で対象を観察。以上!」
「「「はい」」」
「よし、森へと進んでいくぞ、皆用心するように」
「オッケー」
「了解した」
「は、はい!」
「わかりました」
ちなみに「はい」しかいえない神術をかけたままだと色々と危ないので解いておいた。
5人で森をどんどん進んでいく。ちなみに順番は、バイブル、サイクロ、俺、萌、ロバイルの順番だ。もちろん安全に、そしてどんな状況でも臨機応変に対応できるように考えたものであって、私情は一切絡んでない。決して女の子に挟まれたかったからとか、バイブルは怖いから遠のいておいたとかじゃないから。
「ご主人様、どうかされましたか?」
「ヒィ!なんでここに?!団体行動を乱すな!いいか、女子女子男子女子男子だ!」
今気づいたけどこのパーティーちょっとだけハーレム。
しばらくファストたちは森の中を進んでいった。険しいと付け足したかったのだが、例の獣が森中の木という木をなぎ倒してるのでまったく険しくない。ただの平地。
「いつになったら遭遇するのでしょうか…」
ちなみにこの萌の発言は全員無視であった。何故だろう。まぁたまにこんなことある。
「しっ、静かに。前方をよく見てください」
バイブルの合図に皆止まったが、まだ何も見えない。
だが、しばらくすると、
その影が見え始めた。
「あら意外とおっきぃ」
サイクロぅ、「おっきぃ」なんてもんじゃなくね?!
まだまだ距離はあるが、前方にいるのは巨大な獣であった。
ロバイルと一番最初に出会った時のモンスターに比べればまだ小さいが、それでも3階建ての建物ほどある。さらに、ロバイルが倒したあのモンスターは縦にひょろ長かったが、こいつは全身がガチガチの筋肉質で、どの部位も固そうだ。
イメージして欲しいのは鬼。
てか、鬼。うん、鬼。鬼そのもの。
「あれってなんという種族なんですか?」
「なぁ、あれって完璧”oni”だよな?」
バイブルに小声で話しかける
「えぇ、完璧”oni”ですね」
「なんでこっちにいるの?てか日本のもんじゃないの?」
「えぇ、”oni”の起源は日本です。おそらくどっかの神がこっちに召喚したんでしょう。それか、人間と対等に渡り合える存在ではないので全部こっちに移したんでしょう。」
まじかよ。
「あれは鬼といってな、まぁ倒しやすいんじゃないか?だって犬や猿、キジに負けるようなやつだし」
「あ、そうなの?じゃあ私先制攻撃やりまーす」
「ちょちょちょちょ!ご主人様何をいってるんですか?人間界でもまあまあ強い生き物でよ!それがこっちに来てるんですよ!おそらく何かが強化されてるし、ステータスも大幅に上がってるだろうし、何か日本にいたときとは違うスキルがついてるかもしれないんですよ!」
それ、ま?
「ご主人様の体も同じですよ!ただのモブがあんなに動けるようになってるんですよ!どれだけステータス倍増してると思ってるんですか?」
「まぁ落ち着けバイブル。俺がどんだけレヴェルを上げたと思ってるんだ。俺のレヴェルは87、いっておくが、俺は強い。俺の体は鋼でできている!」
「ご主人様それ色々混じってるし、だいたいそれ結構主人公が成長した後に言うセリフですよ」
「うるせぇ!見てろ!これがお前らのリーダーだ!」
腰の鞘から刀を取る。刀の名は朱真と書いて『バーミリオン・ソード』と読む!火属性のこの刀は神力を注ぎ込めば刀全体が炎を帯び、斬った後には一筋の炎の刻印が残る…。
「さぁ、行くぜぇ!これが特訓の力!」
俺の丸々一週間かけて特訓した剣術をみよ!
「フレイザンダァ!!」
高速で相手の目の前まで掛け走り、鞘から剣を抜き出すと同時にそのまま相手を斬る。烈火の如く炎を帯びた俺の剣が鬼の横っ腹をぶったぎる!
と、行く前に、ファストは鬼の巨大な金棒を真正面から受け、残すところHPは97。
「この人何やってんの?全然聞いてないじゃん!てかきてるし、ヤバ!」
サイクロが前を見るともう2メートル先には鬼が。
「みなさん村に向かって走る用意を!ここは私が止めます!」
「お前、どうするつもりだ?」
「ロバイルさん、私が倒れたから運ぶのお願いします」
「喰らえ!アロトオデンの力!」
そうバイブルが言い放った瞬間、バイブルが持っていたスナイパーライフルが変形し始めた。銃口は一つの先が鋭く細長い棒へと変わり、尖った先の周りには神方陣がある。本体自体もとても大きく、全長が1.5メートルはあるが、幅もまた太く、全体を見るとちょうど高校生くらいの大きさがある。赤黒いその武器は、生成されると同時に起動し始め、先端の部分にテニスボールほどの大きさの紫色の球ができ、それからは雷が血走っている。
「くっ、今の状態ではこれほどしか!でも仕方ない!喰らえ!」
バイブルがトリガーを引いた瞬間機械全体が大きく開き、紫色の球が鬼へと発射された。
その球は鬼に当たった瞬間鬼ごと奥へと飛ばしてしまった。
「さぁ、今のうちに逃げますよ!」
こうしてこのクエストは失敗になった。
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