第15話

「案外モンスター討伐って簡単ねー」

 「お前ゾイルってモンスターの中でも下の下の下の下の存在だぞ。RPGでいう一番最初にプレイヤーが倒す奴だぞ。むしろもっと速く倒せたはずだ」

 「うっさいわねー。初クエストで緊張してたし、途中で入ってきたモブに配慮しながら戦わなきゃいけなかったのよ。むしろ初めてにしては上出来だったほうでしょ」

 「初クエストと三回目のクエストの感想を聞かせていただけませんか?」

 「あんたも私とさほど変わらないのね」

 「お前あのクエストが俺にとって三回目のクエストなことなんで知ってんだよ」

 「ちょちょっとね」


 舌をペロッとだすバイブルとそれを見て少し怖がるロバイル。そしてそれを見るサイクロ。

 さて、この物語の主人公はどうしているかというと、


 自室に引き籠もっていた。


 よし、まずは状況整理だ。

 こないだのクエストを一から振り返ろう。


 ゾイルに遭遇

    ↓

 仲間が技を仕掛ける

    ↓

 俺も仕掛けようとする

    ↓

  少し怖気づく

    ↓

  スキル発動 

    ↓

   モブ化





 「いやわけわかんねぇ!!!!!!」


 どゆこと?なんでそこでスキル発動した?チョー迷惑なんですけど。


 落ち着け、落ち着くんだ吉野はやと。


 ファスト自身は気づいていないが、テンパると彼は実名が出るのであった。


 どこかで鐘がなった。チャイムと似ていた。


 ええとええと、とりまバイブルに相談


 「できるかああ!!」


 そんな


 「俺、モブになってしまうんだ」


 なんて言えるか!恥ずかしすぎる。



 よし一回廊下に出て空気吸って風景を眺めて落ち着こう。


 「ふぅぅ」


 こっちの世界の空気は綺麗だ。吸うとすっきりする。


 よし、一旦寝るか


 「寝たらもっとおちつくだろってバイブル!!!!!」


 椅子にバイブルが座っていた。


 一言、ただ一言で良かった。



 衝撃


 「お前いつ入ってきたんだ?」

 「さっきワープで入ってきました」


  ワオ


  「ええと、何か用?」

  「いや~、実は」


 実は?



 ゴクリ


 つばを飲み込む 


 「ファストさんに対する呼び名を変えようと思いまして」


 そんなことか!


 「そうですね、候補として。ご主人様や...


 おお!響きがいい!



 「モブ様などどうでしょう?」

 「絶対だめええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」

 「お前やっぱ知ってたのかよ!」

 「私のスキルはどこぞの凡スキルとは違って『全知』ですよ?知らないわけないじゃないですか」

 「今人のスキルを馬鹿にしたな!」


 今までコンプレックスなんて抱いたことなかったし、気になるようなことがあってもそこまで気にしない俺であったが、こればかりは気にせずにはいられなかった。


 「そのスキルは残念ながらこの私でも初めて見ました。正直私ににはどうすることもできません」


 まじか


 「ただ、そのスキルが何なのか知れべられる人はこの世に沢山います」


 おお!


 「色々な分野がありますが、こういう時、つまり新種なんかが出たときに一番いい対応が行えるのは『科学』でしょう」


 「行きましょうか。近くにあって大きい科学都市はクリパです。すぐに出発すれば明日には着くでしょう。皆には私から説得しておきます。あ、もちろん秘密にしておきますよ」


 なんて優しいやつなんだ


 「バイブル、ありがとう」

 「それはすべてがわかった後にとって置いてください。それに、あなたを助けるのが私の役目ですから、ご主人様」



 バイブルはにこりと、綺麗にほほ笑んだ。

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