第3話
パンケーキのお店を出て向かったのは、私がどうしても入りたかったけど入れなかった、可愛い可愛い雑貨屋さん。
自分には似合わない。かっこいいメンズとかの方が似合うだろう。
とかおもって今まで避けてきた場所。
今日なら碧さんいるし……。
と思って行くことにした。
「次はどこに行くの?」
「……ついてからのお楽しみです。」
なんとなく、言うのが恥ずかしくて言えなかった。
いや、まぁ、少女趣味ってのは既に知られてるんですけど……。
なんでこんなにも恥ずかしいのか……。
だんだんふたりとも、名前で呼ぶのに抵抗なくなってきてる……?
あ、意識したら恥ずかしくなってきた……。
私めっちゃ恥ずかしがり屋だなあ。
「汐織ちゃんってさ、すぐに顔に出るよね〜」
「えっ?!そうですか?!」
「普段はもっとスマートなのにね(笑)」
正直仕事中は仕事のことしか考えていない。
職場で恋愛するつもりは無かったし、だから、顔に出ることもなかった。
だから、たぶん、スマートなんだろう。
いまは、ほぼ素がでてる。
一緒にいて楽な人だから。
「素を出してくれてる、ってことかな?」
見透かされていた。
なんだか、碧さんは私のことをとてもわかってくれる人だなあ。
「……そーゆーことですね。」
「嬉しいなあ。」
碧さんはどうなんだろう。
さっきから見る笑顔は、素なのだろうか。
でも、会社で見かける時のような笑顔のような気もする。
私には、そのあたりは見抜けないや。
「あ、あと少しで目的地つきますよ。」
「ほんと?楽しみだなあ。」
るんるんってしてる碧さんが可愛くて、思わず手を握りそうになった。
流石に繋ぐのはやめておいた。
付き合ってるわけでもないし……。
そんなことをひとり悶々と考えていたら、目的地についた。
「何このお店、めっちゃ可愛いじゃん!!!」
雑貨屋につくと、碧さんは大はしゃぎ。
私も初めて入れたから心の中ではしゃぐ。
あああ、可愛いものがたくさん。
顔が緩みそうになるので真顔を作ろうとする。
が、むりそう……(笑)
「汐織ちゃんよくくるの?ここ」
「初めて入りましたよ。私には似合わない場所ですし。」
「そう?似合うけとなあ。これとか汐織ちゃん好きそう」
そういってもってみせたのは全体がレースで覆われたテディベア。
めちゃくちゃ好みです。
色も淡いピンクの布地に白のレース。
その隣には水色ベースのものも。
玄関とかに二体揃えて飾りたい。
「これ、好きなんだね。」
ずっと手で口を塞いでいたらそう言われてしまった。
「……大好きですね。」
「かわいい。私水色買おー。汐織ちゃんは?」
碧さんが水色を買う。そうなったら私は……
「ピンク、買います。」
「お揃いだね。」
「はい。」
お揃いが嬉しいからなのか、可愛いものが買えて嬉しいのか、私の頬は緩みっぱなし。
あれ、だいぶ最初の方から私デレデレ過ぎないか?!
でも別に、ドキドキしてるわけじゃない……?
あれ、「好き」ってなんだっけ?
私は、碧さんのこと、「好き」なのかな?
???ん?
「汐織ちゃん!見てみてこれ!」
碧さんの呼ぶ声で我に返った。
いまは、そんな事考える時じゃない。
今を精一杯楽しまなくちゃ。
「どうしたんですか?」
「これ!『甘〜い恋のミルクココア』と『苦〜い恋のダークココア』だって!」
「なんですかそれ、可愛いですね。」
ここの雑貨屋さん、面白いもの置いてるなあ。
2人で1本ずつ買うことにした。
そのあとも雑貨屋さんをまわり、最後にココアとあのテディベアを買って近場の公園に行くことにした。
公園についたのは既に夕方で、人影はほとんどなかった。
さっきの雑貨屋さんで買ったココアを飲むとめちゃくちゃ甘いのとほろ苦いのとで合わせるといい感じだった。
「今日はありがとね〜。」
「いえ!こちらこそ!楽しかったです。」
すごく楽しかった。
ここで、別れてしまうのがもったいないくらい。
「今日これだけで好きになってくれたり、した?」
「んー、内緒です(笑)」
「内緒かー(笑)私は、新しい一面が見れたから、惚れ直したのに(笑)」
「えっ」
自分の気持ははぐらかしたのに、碧さんにはっきり言われて恥ずかしくなった。
この人サラッと言っちゃうんだもん、すごいなあ。
わかっている事は、
今このまま帰るのは嫌だ。
碧さんは可愛い。
碧さんと一緒にいたい。
碧さんといると、どきどきする。
でもこの気持ちが、恋なのか恋じゃないのかわからない。
「ゆっくりでいいよ。」
「へ?」
「ゆっくりでいいよ。自分の気持ちに気づくのは、ゆっくりでいい。焦らなくていいんだよ。」
そう言って、碧さんはさみしそうに笑った。
そんな顔しないで。
そんな寂しそうな顔で笑わないで。
気づいたら私は、碧さんを抱きしめていた。
「し、汐織ちゃん……?」
「そんな顔しないで。」
「え?」
「さみしそうに笑わないで。」
私の胸が、キューってなるから。
「ごめんね。……今日はもう帰ろ。だいぶ暗くなってきたよ。」
優しく諭すように私を体から離す。
ぬくもりが離れていく。
さみしい。
「もー、そんな顔しないでー?」
「……。」
「明日も会えるよ?」
「……部署違いますし。」
「んー、お昼一緒に食べる?」
「……食べます。」
明日お昼ご飯一緒に食べる約束をし、その日は分かれた。
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