第2話




どうしてこうなった……。

なんか、勢いでデートすることになった気がする。

まあ、嫌じゃないんだけど……。むしろ、ちょっと浮かれてるというか……。

なんでだ……。

とりあえず!!服どうしよう?!何着ればいいの?!女の子とのデートってどこまで着飾っていいものなの?!

あれ?そもそも可愛い服とかなくない????シンプルイズベスト、かっこいい服しか着ない……。

迷うううううう


「おそっ…遅くっ…なり、まし、たっ……。」

「大丈夫だよぅ今来たところだから!」


服がなかなか決まらず、待ち合わせの時間ギリギリになってしまった。

走ってきたから髪ボサボサの汗だく……。汗臭くないかな……。あああ、メイクもよれてそう……。

待たせてしまって申し訳ない。デートの定番みたいなこと言わせてしまったし……。


「髪グシャグシャだよー?」


そう言って手グシで直してくれる桃園さん。優しい。そして可愛い。

あと、地味に手が冷たい。やっぱり待たせてしまったせいかな?


「ありがとうございます。手、こんなに冷えきっちゃって……。」


いくら春とは言え、まだ寒い。というか、今日はちょっと寒いかな。

手をギュッと握って温める。

手、ちっちゃいなぁ。


「あ、ありがとう……。」


あれ?桃園さん、顔が赤い。って、そりゃそうか。私何恥ずかしいことしてんだ?!人様の手を握り込むなんて……。カップルかよ!!!!


「……大丈夫?顔、赤いよ?」

「だっ、大丈夫だす!!」


盛大に噛んだ…っ!!めっちゃ恥ずかしい……。

あと、桃園さんもお顔赤いですよ…。

なんか、さっきから恥ずかしいことしてばっかだわ…。調子狂う……。


「やっぱり、汐織ちゃんはかっこいいだけじゃなくて、可愛いね。」


そういう桃園さんがあまりにもふわっと、可愛らしく、とても自然に笑うもんだから、ドキッと心臓がはねた。

……まだ走ってきたぶんの動悸がするのかな?でも、それとは違って、痛い感じ。懐かしい感じがする。

今までとは違う、素の表情が見れた気がした。


「さて、お腹すきませんか?どこか食べに行きましょ。」

「いいね!どこ行く?」

「どこか行きたいとことかありますか?」

「んーとねー……あ!!行きたいお店ある!案内するね!」


待たせてしまったお詫びになにか奢ろう。心の中でそう勝手に決める。時間はお昼を過ぎているし、朝起きてから何も食べていない。正直私がお腹すいた。

お金もあるし、いくらでも、どんと来い!

パンケーキのお店へ向かう桃園さん。すごく表情がキラキラしている。可愛いなぁ。パンケーキ好きなのかな。まぁ、大体の女の子は好きか。


今更なんだが、桃園さん、普通に汐織ちゃん呼びしてるよね……?

よくよく考えると恥ずかしい……。まぁいいか!!!!気にしたら負けな気がする!!!!


桃園さんが案内してくれたパンケーキのお店は、それはそれはふわふわ可愛い

レースがいっぱぁいみたいなお店でして、すっごい女の子。私が入ってもいいのか迷うレベル。てか、これは男の人ははいれないわぁ……。って感じ。


「こーゆーふわふわした感じのところ、好きなんですか?」

「んー…まぁ、そうね。」


ん???なんか、歯切れが悪い…??

若干地雷かな?

桃園さんっぽいなあぁとは思ったが、思わず飲み込んだ。言ってはいけない気がした。

でも、私の憧れ。ふわふわ、キラキラ、可愛い、女の子。

桃園さんみたいな感じ。


「私にはこういう類のものは似合わないんですよねぇ……。」

「似合うと思うよ?」

「え?」

「こーゆーきらきらふわふわしたお店。汐織ちゃんいてもおかしくないよ。」


あぁ、この人は、本当にずるい人だ。

私が、言って欲しいと思っていることを、さらっと言ってしまうのだから。ずるいなぁ。一緒にいたら、染まってしまいそう。


「おかしく、ないですかね?」

「少なくとも、あたしはおかしくないと思うよ!」


嬉しくて思わずにやけてしまう。

今までに味わったことのない感覚。

今までに味わったことのない感情。

とても、幸せな感情だと思った。


「でもあれだよね、入るのに勇気いるよね。」

「わかります。一人でなんて入れないですよね。」

「あたしもだよ。ちなみに、初めて来た。」

「え、意外です。」


沢山行ってるんだろうなぁって勝手に思ってた。そんなことないんだ。いてもおかしくないのに。なんか、おんなじようなふわふわした女の子友達とかと行ってそうなのに。

あとは、元カノさんとか……。


「ん?」

「ん?どうかした?」

「いえ!なんでもないです!」


元カノさんのことを考えて、今、胸の奥がチクってした。

なんだろう。

なんで、チクってしたんだろう。関係ないのに。


「……大丈夫?なんか、深刻な顔してるけど。」

「えっそんな顔してました?!」


デート中なのに!!申し訳ない……。

今考えることじゃないよね!!元カノとかね!!どうでもいいよね!!

考えるなら家に帰ってゆっくり考えよ!!!!!

……いや別に考える必要ないんだけどね???


「……大丈夫?」

「大丈夫です!!すみません!!お店はいりましょ!!!!」


今はデートに集中しよう。今考えるべきことじゃない。というか、割とどうでもよくない?!関係なくない?!私が気にすることじゃないよね!!


……なんでもやもやするんだろう。


一人悶々としている間に席に案内された。

メニューを見ると、さっきまで考えていた事なんてどこかにいってしまった。

やばい……どれも美味しそう……。

どれにしようかなぁ。迷うな……。


そういえば、けっこう名前呼ばれてるよねぇ。

仕返ししようかな。名前呼ばれるの、恥ずかしいし、私のこと好きっていうくらいなら、名前呼ばれたら相当嬉しいんじゃ……?


「碧さん何にするか決まりました?」

「へ?!」


あ、これは思った以上に可愛い。

名前を呼ばれ慣れていないのか、顔を真っ赤にして驚いている。恥ずかしいのか、メニューで顔を隠す姿さえ可愛い。

もっともっと、こんな表情が見たい。

なんて、ちょっとSっぽいことを思ってしまった。


「どうしたんですか?何かまだ迷ってますか?碧さん。」

「っ〜〜〜〜〜〜!!……汐織ちゃんの意地悪〜。」


かわいい。涙目+上目遣いはやっぱり最強。思わずそばにあったスマホで写真を撮る。あ、天使がいるわ。


「あ!ちょっとー!写真撮ったぁ!?」

「撮りました。かわいすぎるので。」


なんだかんだ、碧さんに染まっていっている気がするが、まぁいいか。


「もぉ〜……。それで?何にするか決まった?」

「あ、忘れてた。碧さんは?」

「これとこれで迷ってるの〜。」


んーと、ひとつは生クリームたっぷりで、三種のベリーのソースがかかっててパイナップルがのってるやつ。

もうひとつは、生クリームと抹茶のアイスに白玉とあずきと栗。

なんか、和風と定番って感じ。


「すいませーん、注文お願いします。」


そう言って私はその二つを頼むことにした。

店員さんがいるあいだはすごく静かに、でもわたわたしていた碧さん。なにあれ、すごい可愛いんだけど。


「えっえっ、汐織ちゃんよかったの……?」

「はい!どれも美味しそうでしたし、どうせ食べるなら、碧さんの美味しそうに食べる顔、みたいじゃないですか。」


好きなものを食べる碧さんとか、すごい嬉しそうな顔して食べるんだろうな。ってかんがえると、迷ってる二つ頼んだほうがいいかなって。碧さん、嬉しそう。

あ、耳赤い。


「半分ずつにします?」

「そうする!!」

「ふふっ、かわいい」


あと、私どっちも好きなんだよねぇ。迷っちゃう碧さんの気持ちすっごくわかる。

それにっ!!!!憧れの半分こができるからね!!!!!あんまり友達とそんなことをやる機会はなかったから。

というか、三人以上でしか遊びに行かなかったからなぁ。

取り合いになってたな……。


「汐織ちゃん、抹茶食べれる人?」

「食べれますよ〜。むしろ大好きです!!一応元茶道部なんで」

「え!!すごい!!かっこいいー!」

「そうですか?もう何年も前なので、あんまり覚えてないですよ。」


高校の時に、ちょっと興味があって掛け持ちして茶道部に入っていたことがあった。

多少のお作法は覚えてるけど、もうそんなに覚えていない。

またお抹茶飲みたいなあ。


「今度、抹茶のカフェ行かない?美味しいお抹茶が飲めるんだぁ」

「行きます!是非!!」

「じゃあ決まりね!!」


そんなものがあるなんて知らなかった……!!!行くしかない!!!

とても嬉しそうに話す碧さん。ふわって感じの笑い方。これが素なのかな?

飲み会や、今朝の碧さんの家でみた笑い方とはまた違った感じ。

なんか、途中から告白されたことやら、処女奪われたことやら忘れていた。

今のこの短い時間だけでも、すごく楽しい。一緒にいて、楽しい。幸せな感じ。


パンケーキが届くと、二人してたくさん写真を撮った。インスタ映えするような写真をたくさん。

こんなに可愛いものがこの世に存在するんだね……。たべるのもったいないわぁ……。

私の目の前には三種のベリーソースのパンケーキ。碧さんの目の前には、抹茶のやつ。半分こずつにすると決めたので、とりあえず目の前のパンケーキをもしゃもしゃ。

んんっ!!おいっしぃ……。これは、今までこういうお店に入らなかったのを後悔するレベル……!!

まじんまぁ……。


「ふふっ、幸せそうだね汐織ちゃん」

「こんなに美味しいもの、初めて食べましたからねっ!!」


今までは、いつだったか、誰かに言われた、そんな可愛いもの食べるイメージ無いという一言から、食べるのをやめていた。なんとなく、食べづらかった。

でも、碧さんの前だと、すんなり食べられた。

何も気にせず、食べることができた。

なんか、一歩前進した気分。


「碧さん、ここ、クリームついてますよ?」

「え?どこ?」

「ここ、んーと、ここです。」


口の横に可愛らしくクリームをつけている碧さんなかなか取れそうにないから指で拭い、舐める。

うん、美味しい。生クリームは私のと同じなんだな。


「んぁ?碧さん?」


顔真っ赤にしてプルプルしてる碧さん。ん??なんかいけないことしたかな???


「ほんと…無自覚天然タラシめ……。」

「????」


無自覚天然タラシ……?なんか、最初より進化してない?


「プルプルしてる碧さんかわいい。」


ちょっとイケメン風(?)に言ってみた。もっと照れてくれるかなって思って。だけど、


「カッコイ表情も好きなんだけどさ、やっぱ可愛い表情の方が好きかな〜。」


そんなこと、初めて言われた。

いつも、女の子は、かっこいい表情をするときゃーきゃー言って喜んでた。なんか、拍子抜けするな。

でも、かっこいより、可愛いって言われる方がうれしいや。


「ありがとう、ございます……。」


「どーいたしまして!」


ありがとうの意味がちゃんと伝わったかどうかはわからないけれど、もっとこの時間を楽しみたい。

そう思った。


「食べ終わりましたし、次どこ行きます?」

「どこ行こっか。あ、お金。」

「払っときました。さ、行きましょ。」

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