第3話 ロバート宣言
朝。コピコが顔を真っ赤にしてロバートに詰め寄った。
「なんなんですか、この訳のわからない文書は」
「いや、ちょっと直球を投げようとおもってね」
「とんでもなく時代錯誤。これじゃニューエイジですよ」
「まあ、とにかく今はいろいろ実験をしないと」
「はあ。戦略も戦術もダメです。神様はどうしてこんな人を選んだんでしょう」
文明の革新。やみくもにパンチを出すなど馬鹿げている。すべてを計算して一撃で決めるのが理想だ。まずは、この訳のわからない文書とやらを見てみよう。
「ロバート宣言」
ロバート空間。
それはデカルト的な座標軸で把握できるような3次元の空間では断じてない。それは物質でもシステムでもない。もちろん、測定や観察、あるいは管理の対象などであってはならない。
当然ながら、自己管理、目標管理、健康管理などとは縁がない。社会はそういう類のものを押し付けてくるが断固として拒否ないし無視する。そもそも 現代社会の科学、医学、教育、経済といった類の宗教は歴史的に見て最悪の部類に属している。そういうものとは関わらないのがロバート空間だ。
しかし、現代の悪は強力だ。市民を完全に無力化し、システムの一部にしてしまっっている。
ロバート空間は社会の一員でも市民でもない。もしもそう見えるなら、それは演技力によるものだろう。
ノストラダムスが予言した大王。それは、ロバート空間に他ならない。
1999年ではなかったが、私は今日この事実を確信するに至った。
この病弱な肉体とクレイジーな精神が放つ「一撃」に期待せよ。
戦略や計画などという腐った言葉は使うまい。
そういう言葉は破棄しなければならない。
あらゆる権威を完全に失墜させる力。
それがロバート空間だ。
「どんどんとこっちへ来るよ」
「何が」
「ロバート空間!!!」
怖い? 楽しい? 嬉しい?
地球上の70億のゾンビ達よ覚悟せよ。
ゾンビに明日はないのだ。
渾身の一撃。
それがロバート空間のイニシエーションだ。
神との約束だ。
死の条件だ。
私も漸く老年となり自在の境地に入った。
あるべき生活とは何か、などと悩む必要はない。
やりたいことをやれば良いだけだ。
躊躇いを捨てなさい!
宿命を受け入れなさい!
覚悟を決めなさい!
目覚めなさい。
ここは「ロバート空間」ダ~。
70億のゾンビとは人類のことなのだろう。新しい文明においては、現代の人類が敵になりということを示唆しているとも読める。ロバートの決意はわかるが、みんなドン引きだ。
「やっちまったな・・・」
ロバートは小さく呟いて研究所を出た。
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