16 世界でもっとも有名な日本企業

 20世紀後半、世界でもっとも有名な日本企業はウォークマンを発明したソニーだった。ウォークマンの登場はiPod、iPhoneに連なる衝撃的な文化革命だった。21世紀になると、国際企業化に失敗したソニーは凋落して、グループ企業のソニーミュージックにすら後塵を拝した。代わってプリウスのトヨタが世界で最も有名な日本企業になった。しかし、EV(電気自動車)で遅れをとってトヨタも2020年代以降に凋落した。

 2038年、世界でもっとも有名な日本企業は、人型ロボットメーカーに転換したホンダもなく、STAP細胞のオボカタでもなく、マイクロマシンのウシアである。

 ウシアのマイクロマシンは、半導体製造技術によって生み出されるMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)、超微細機械加工技術によって生み出されるマイクロロボット、遺伝子工学によって生み出されるDNAマシン(DNAナノ構造体)のハイブリッドであり、MPL(マイクロ・スード・ライフ)ともいう。

 ウシアのマイクロマシンは、インヴィジブルフォン、オンデマンドオートマチックモビール(ODAM)など、現代の超集積テクノロジーにとって必須の中核技術になっている。

 しかし、ウシアの地位を不動にしたのはUチューブというAP(人工寄生虫)である。Uチューブは赤血球の半分の大きさで、血管内に数年間にわたって共生するロボットであり、全身の血管や血液の健康状態をモニターし、血栓やプラークの溶解を自動的に行い、寿命が尽きると分解して代謝される。Uチューブは静脈注射によって一単位千体が血液中に導入される。

 Uチューブを用いたAP療法によって心筋梗塞、脳梗塞はもちろん、動脈硬化症によるあらゆる疾病、糖尿病、あらゆる種類のガン、さらには膠原病、感染症、痴呆の予防まで可能になった。人間の平均寿命は90歳前後で限界に達していたが、AP療法普及率90%の先進国では110歳を超えている。最新のUチューブは脳血管関門を通過して脳細胞に寄生し、知能指数を50%以上向上させることに成功している。

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