最初の一歩
昼を済ませたあと、
動きやすい服装に着替え、デイパックに水や軽食を詰め込み、ついでに日焼け止めも塗っておく。
昨日と同じ鶏ささみを持って駐車場に向かった。
「おそぉーい」
「ごめんごめん。支度にちょっと時間掛かっちゃって」
テトはよほど腹が空いていたらしく、巡が包みを開いて置くと、鬼気迫る勢いでささみに食いついた。
「そんなにお腹すいてたの。……もしかして、また大暴れしたんじゃないでしょうねえ」
「してないよ。昨日はちょっとそこらへんを見回っただけ。なんだかこの身体は燃費が良くなくてさ、能力を使うと特にお腹が減るんだよ」
「ああ、わかる」
と巡は頷く。
「今までだって頑張れば疲れたけど、それでも現状の余裕の無さに比べたら無尽蔵って感じよね。私もちょっと運動しただけで体中が重いわ怠いわで、もう何もやる気しない」
「巡の能力だけが頼りなんだから、しっかりしてよねえ」
「わかってるわよ。……とりあえず、ダイエットは後回しにするわ」
しばらくしてテトの食事が終わると、二人は本格的な捜索を始めることにした。
ただ探すだけなら巡とテトでふた手にわかれたほうがより広範囲を捜索できるが、恰好が恰好であるために、たまさか犯人を発見したとしてもそれを他方に連絡する手段が無く、そのうえ現在の能力で相手に対抗できる保証もない。能力に関しては犯人も同じようなものなのだろうが、未だその正体をつかめていない以上、不用意な接触は危険だ。
なので、捜索にあたってはバディでの行動を原則とし、能力も同時的に集中して使うことで相手にこちらの戦力を悟られないようにする。
以上が、二人がなけなしの脳みそを使って考えだした最善の作戦だった。
「まずは一度、確認を――っと」
そう言って巡は小枝を立て、テトに意識を集中させる。
小枝はテトと反対方向に倒れた。もう読み間違えたりはしない。
「よしっ!」
気合一発、巡は宣言する。
「捜索開始!」
二人は同時に能力を発動させ、〈枝〉の在処を探った。
やはりテトの〈
枝を立てる。
神経を集中する。
指を離す。
枝が倒れる。
たぶんあっち。
その一本を振り出しにして、二人は最初の一歩を踏み出した。
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