3:Welcome to My World
彼女の世界
眩しくて目が覚めた。
カーテンの隙間から顔を出した太陽が、瞼の裏の闇を白く塗りつぶしている。
もぞもぞと寝返りを打って薄手の掛け布団を股ぐらに挟み込み、枕に顔を擦り付ける。
そうやってしばらく、重ったるい蜜のような惰眠を舐めていたが、無粋な太陽は遠慮なく後頭部を炙り、部屋の中をどんどん温めていった。
光を浴びて身体の機能が回り始めたのか、体温がにわかに上昇し、全身の毛穴からにじにじと汗が噴き出してくる。寝汗を吸った寝間着の不快感に意識が収斂する。
微睡みの快楽に見切りをつけ、大きく吸った息を夢の残滓もろとも吐き出して、えいやっ、と気合で上体を起こす。
乾いた目をあくびで濡らし、壁に掛かる時計を睨んだ。
午前五時である。
ベッドから降りてぐいと背伸びをする。
昨日は頑張りすぎたせいか、体中がだるい。
シャワーでも浴びてさっぱりしようと思いたち、部屋を出た。リビングの隅に蹴り寄せられていたカゴから、取り込んだままにしていた下着とTシャツを掴み出し、脱衣所に向かう。
薄暗い脱衣所には逃げ遅れた夜の雰囲気がこもっていた。風呂場の明かりをつけると磨りガラスの向こうから偽物の朝焼けみたいな光が溢れ、洗面台の鏡に――
「――はあ?」
素っ頓狂な声をあげて、鏡の中に信じられないものを見たような顔をして固まった。
鏡の中には同じく信じられないものを見たような顔をして固まっている少女がいた。
ぼさぼさの寝癖髪に覆われたその顔は、まだあどけなさの残る一七歳のそれである。
少女は名を
ここが〈彼女の世界〉だった。
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