第5話 閃光っ!その命線香花火の如く
「誰が来るんだァ?順番に殺してやるゾォォ!!」
TVと違ってその口から出された声に美声もクソもなく、掠れた大声が辺り一帯に響き渡る。
クソ馬鹿息子のせいでこちらの居場所などとっくにバレているので透明化を解除し姿をあらわす。
「ねえ、あのさ。一ついいか?」
「冥土の土産に答えやる」
「雑魚ども、まとめてかかって来い。とか言わなくていいの?ヒーローなんでしょ?」
「なんだと……まさか複数で攻撃するつもりなのか!?こ、この卑怯者が!」
え?
戦いに卑怯者もクソもあるかよ。
ヒーローならば、
まとめてかかって来い!
とか言うのが相場だと思うのだが、俺は何か間違ったことを言っているだろうか?
「誰からだ!さあ来い」
「だったら俺がいく!」
「ダメだ、お前は作戦を台無しにした挙句、こちらの居場所をバラし仲間を危険に晒した挙句、相手に全くダメージを加えられなかったボンクラだ。
お前に任せたら一生終わらないから俺が行く」
「待って!そのアホ息子はダメかもしれないけど、私も行くわ!」
「ダメだ、今回は俺が行く。
これはワガママとかではない。
ソラさんがいなくなるとボスもそのバカ息子も親子揃って逃げられないボンクラだ。
ブスでカッコ悪い能力だけの取り柄のボスでも役に立つからな。
いざと言う時は俺を置いて先に逃げろ!」
「そうね……わかった」
「ねぇねぇ、さらっと言ってるけど君達酷くない?」
「「だって真実だし」」
「うわ、いや……マジか、マジなのか」
「お、俺を!無視ィするなぁァァァアァアァア!!」
放置しすぎてついにキレた"閃光"は目にも留まらぬ速さで俺に突っ込んで来た。
来いとか言ってた奴が自分から来てどうするよ…
目にも留まらぬ速さで動き、脅威的な再生能力でいかなる攻撃も無効化する
能力的に見ればボスと並ぶ強さを持つと思うが、ウオーとか言いながら攻撃して来たり、能力について隠そうとしなかったり、馬鹿正直に突っ込んで来たりという行動がいただけない。
そう敵を分析しつつ、こちらも反撃をする。
「"透明化"からの〜"分身"分身"分身"分身"」
スウゥと本体が消えた瞬間にその場から四人の分身が現れ、突っ込んで来る"閃光"に武器を向ける
「増えても無駄ダァ!」
そう叫びながら奴は分身に向かって光の玉を打ち込んで行く。
分身達は俺の意思に従って最小限の動きで光の玉を交わし、すれ違いざまに攻撃を加えて行く。
が、すぐに再生しその攻撃も無駄となる。
ーーーピュン!
突然飛来して来た長剣に咄嗟に反応した"閃光"は器用なことに空中を蹴り後ろへと飛んだ。
一瞬、視線を長剣に奪われた彼は、突然出現した大量の矢に全身を撃ち抜かれ地面に落下する。
落下して行く間にも絶え間無くやたら貫通力のいい矢が全身を撃ち抜き再生を阻止している。
再生の能力により明らかに元の身体の体積よりも血が流れて出した頃、突然ぶくぶくと蠢き出した血が彼の身体を包み込み矢を跳ね返して行く。
まだ隠し球があったのか!
そう驚愕する俺に、完全再生を果たした"閃光"が勝ち誇ったかのような顔でこちらを見下して来ている。
先ほどの戦闘ですっかりエネルギーを使い果たし肩で息をしている俺を見てのことだろう。
「はぁ、はぁ……くそが…」
そんな、この俺が…
そんなことがあっていいはずがない!
嘘だ!
「くひひひ、テメェは負けだ!これで、終わりだァ!!!」
狂気的な笑みを浮かべた"閃光"が俺へと迫りくる。
思いっきり地面を蹴り、命を狩ろうと手に持ったナイフを俺に振り下ろす
ああ。
本当に馬鹿だよなぁ…?
ニイッと哀れなものを見るような顔をして奴を眺める。
その刃が俺の心臓に迫った瞬間!!
張り巡らされた糸が一気に引っ張られ弦を弾いたような音を鳴らす
何が起きたのか理解出来ていない張本人である"閃光"は目を見開いたまま地面に頭を転がす。
金属で出来た極細の糸によって細切れよりも細かくバラバラにされたのに気づかず、口をパクパクとしている。
頭だけになるほどバラバラにされているにもかかわらずその側から再生しているところを見るとこいつの理不尽が見て取れる。
再生されたら困ると素早く頭を拾いあげた俺はホルマリン漬けようの瓶に詰め、ボスの元に向かって行く。
お前、疲れてたんじゃなかったのか、
そんな顔をしたボスに動く生首が入った気持ちの悪い瓶を手渡し先に徹底する。
はぁ……マジで疲れた。
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