番外編:歴史書から人の一生を考える

参考書:風姿花伝、論語


『人の一生を考える』


人生には2つの生き方がある。

「体」と「知識」である。


まずは、「体」を意識した生き方。

これは、子供から大人。

さらに年を取って老体になるまでといった考え方である。


「風姿花伝」という能に関する古い書籍がある。

この中で世阿弥という人物が7歳から能を学び50過ぎまでに、こうした方がよいということをまとめている。

これをここに簡単にまとめる。


7歳・・・最初に学ぶのはこの時期である。

芸は幼子ならではの声や舞となるが、どこかおかしくとも基礎以外は子の思うがままに任せればよい。

もし、基礎以外の部分にまで無理に学ばせようとすれば、嫌がり学びたくなくなるものである。


12歳・・・体つきなども変わり始め、声変わりもおこる時期である。

また、知識も吸収しやすく芸に磨きがかかる時期でもある。

才能がある子であれば、それをさらに磨きをかけるのもよい。

しかし、この時期にあれやこれやと教えるのではなく、基礎をしっかりと学ぶ時期である。


18歳・・・この時期は、体の成長も落ち着き、声色も落ち着く時期である。

この頃は若いために、目の肥えた人からは、「全然できていない」と笑われたりする事がある。

だからとて、人より秀でようと、無理に高い声などに挑めば、声をだめにしてしまうものである。

ここからは、自分の声や舞などで一番あったものをただひたすら、練習するのみである。

それを怠れば、続けることすらできなくなってしまう。


25歳・・・この頃は、声や姿が良く見え、多くの人が来る時期である。

また、才あるものは、この時期に芸くらべで勝つこともあり、慢心におちいるものである。

しかし、若いから他のものより良く見えるだけで、決して才能があり、素晴らしい舞ができているわけではない。

この時期は、初心を思い出し、磨きをかけ、才あるものから、さらに学ぶ心が必要である。


35歳・・・演じるには、最も素晴らしい時期である。

この頃まで常に練習し磨きをかけ、すばらしい芸を身に着けていれば天下に名が響くものである。

もし、名が響いていなければ、これ以降に磨きをかけたとしても天下に名が響くことは”ない”と思った方がよい。

また、この歳をさらに過ぎても磨き続けることでさらなる高みにのぼることができる。


45歳・・・この頃には、老いにより見栄えが悪くなる時期である。

自分の芸がいかに素晴らしくとも、年をとった顔や白髪などで役が悪く見えたりするものである。

そのため、表舞台は若いものに譲り、後継者を育てることに精を出す時期である。

もし、演じるのであれば、脇に徹し、粗が見えないように演じるのも才である。


50歳・・・引退する時期である。

「麒麟(東西南北の神獣をまとめる主ではなく、名馬の事である)も老いれば、駑馬(質の悪い馬)に劣る」という言葉がある。

体も若いころと比べ演じづらく、できる演目も減ってしまうものである。

しかし、才あるものは、ほんの一瞬でも演じれば人を引き付けるものである。

長らく芸を磨き続けてきた結果である。





次に、「知識」を意識した生き方。

これは、先ほどとは違い、死ぬまで学びの道筋とほぼ言ってよいものである。


「論語」という、2500年以上前に書かれたものがある。

「吾十有五にして学に志す」から始まる、内容がこれにあたる。

これをここに簡単にまとめる。


十五歳のとき学問を学ぶことを誓い、

三十歳になって、その基礎を身に着け、

四十歳になると、心に迷いがなくなり、

五十歳になって、自分の使命が自覚でき

六十歳になると、人の言うことがなんでもすなおに理解し、

七十歳になると、自分の思うことをやっても、人の道を踏みはずすことがなくなった





最後に、この2つをまとめると


7歳に何か始め、

15歳にそのことを学ぶという道を決め、

18歳に才能がないと馬鹿にされ、

25歳に何をすればよいのかを見極め、

30歳に基礎が出来上がり、


35歳にして世間に認められ、

40歳にしてさらなく道を究め、

45歳にして後継者を育て、

50歳にして引退と後世に伝えるという目標を持つ。


あとは、余生とも呼ぶべきか

60歳でいろんなことを素直に理解でき、

70歳でやりたいことをやっても、人に迷惑をかけることなくなった

という感じだろうか?

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