6.農書から見る収穫・貯蓄・倹約について
参考書:農業全書
◎収穫の心得
ここでは、米・麦・そば・豆・粟・キビの順で収穫方法を書く
〇米
良い収穫を得るためには、春は耕作に努め、夏は草を刈り、秋に良い天候に収穫を行うことで初めて良い実りを得るものである。
特に、春先の耕作から手を抜くものに良い実りを得ることはない。
盗賊から襲撃を防ぐように、かたときも気を休めることなく行うことでよい収穫を得るものである。
秋の収穫は日和を見極めながら行う必要がある。
これを誤れば、一年中の苦労が水の泡となってしまう。
場合によっては昼夜問わず作業を行わなければならない。
また、収穫したものの出来というものは、刈り取ってから初めてわかるものである。
無事に収穫を迎えた場合は、地の神を拝み初穂をお供えするとよい。
天地が万物を育てる心は、人が作物を育てる心と同じであり、人が天に感謝し祈れば、天もまた人を喜ばすものである。
天地が養育するために準備した穀物を無事に収穫できたのであれば、ありがたいことであり、心から感謝すべきことである。
そもそも、天地が答えることは、影が形に従い、山でこだまが返すがごとく、物事を正しく正直に、怠ることなく努力することで収穫を得られることは間違いない。
しかし、凡人というものは、欲望に限りなく、身の程をわきまえず、貧欲の心ばかりが深く、天の恵みが足りないと不平を言うばかり、これでは天道を逆らうことであって、災いを招く道である。
天から与えられた職分を気持ちよく作業し、貧富の事は天にまかせればよいのである。
〇麦
麦を刈る際は、初めのころ青穂が少し混ざるころから刈らないと、終わりごろに梅雨にあう心配がある。
さらに、刈り遅れれば麦後の耕耘も遅れ、他の田畑で除草する作業も遅れてしまうため、油断してはならない。
ときには梅雨時期でも、蓑笠をしてでも刈り取らねばならない。
〇そば
そばは、十分実らせてから収穫しようと放置していると、一夜の霜や暴風でダメになってしまう。
〇豆
豆は、収穫後、庭で熟すといわれ、青い莢が少し先に残っていいるうちに、引き抜き、庭で乾かしたあと、収穫するものである。
〇粟
粟は、実がよくなってから収穫するとよい、早いと実の出来が悪いからである。
〇キビ
キビは、実がなったら早く収穫するとよい、遅いと実が落ちるからである。
・収穫の際の注意事項
刈る鎌の刃は、よく切れるものが良い、鈍いものを利用すると、収穫時に実がこぼれやすいからである。そのため、多少の出費をしてでも、良いかまを準備するのが良い。
・凶作を回避する方法
農を行うものは、一つの穀物を大量に植えるものではない。
いろいろな穀物などを育てることが大切である。
そうすることで、凶作の年であっても必ず利益が得る物があり、すべてが被害にあう心配がないからである。
もし、一つのものを多く作るならば、大きな得ることもあるが、それは稀であり、ほとんどが災害に合うことが多い。
したがって、農民は多くの穀物などを育て、土地に合った作物を求め作るのが良い。
◎貯蓄・倹約の心得
農民で、富が多いものは少ないと思われる。
そのため常に蓄えておく必要があり、怠れば飢餓から逃れることが難しくなる。
生活を謙虚に倹約を守り、備蓄を計画をよく考えておけばならない。
中国の名君は、9年間も洪水にあっても、7年間も干ばつでうまくいかないときがあっても、人民に餓死させなかったと言われている。
これは、倹約を守り、備蓄をよく計画をした結果である。
「名君は五穀を尊んで、金をいやしむ」といわれる。
これは、金銀財宝は飢餓にあっても食べて飢え満たすことも、寒さをしのぐことができないが、五穀であれば飢えを満たし、わらなどを使い寒さをしのぎ、苦しみから逃れることができるからである。
昔は、3年のうち、1年分は食料に残すという考えがあった。
そのため、災害や疫病などにより窮地に落ちようとも、倹約を行い、蓄えを行っていたことで、困窮するものがいなかった。
また、鳥獣でも冬のために、すみかと食料を用意するものである。
それすら怠るものは、鳥獣より劣るというべきと言うほかない。
貯蓄をするためには、毎年の収穫量から計画を立て、ぜいたくや消費を省き、ときには暮らしの質を7割まで下げ、収量を4つに分け、その1分を蓄えとし、生計を営むのである。
こうすることで、たいていの凶作や疫病などから生活を守ることができる。
(月収10万とした場合。年120万の収入なので、そのうち30万「月々約2万5千円」は貯蓄に回すことになる。
また、残りの月8万のうち7割。5万2千円が生活維持費であり、これを超える生活をしているようであれば、一度、生計の見直しをした方がよいと思われる。
残りの2万3千円が、衣服や道具などを買うために使ったり、さらに貯蓄に回せるお金と考えられる)
しかしながら、近頃は贅沢なものが多くなり、倹約をするものが少なくなった。
これも時代の流れかもしれない。
いつ凶作に見舞われるとも考えず、豊作の年があれば来年も同じようになると考え、ぜいたくに米を浪費することを楽しみ、貴重な食料を土砂を捨てるようになくしてしまう。
これでは、いつか凶年により、家財を売り、田畑を質に入れ、利息のために働くこととで困窮し、凶作と土地のせいで落ちぶれたなどと言わぬか、行く末を心配するばかりである。
『”凶年に罪はない”』
3年あれば、1年は豊作、1年は普通に、1年は凶作に合う年もある。
豊作にあった年に、備蓄しておけば、凶作の年に補えるのである。
また、書物「洪範(こうはん)」の中で「”食料”」と「”財”」は身分の上下にかかわらず、倹約を守り、適切に使用することは、このうえなく大切な道であると書かれている。
これを「財用を節約する」と言う。
ただし、極端なケチや蓄えばかりを行い、親や親類、友人が窮地に落ちようとも助けようともせず、慈愛や慈悲の心なくひたすら欲が深く、蓄えるものがいる。
これを、「守銭奴」という。
こういったものは、人として相手しない方がよい。
「贅沢」と「ケチ」は天地の通りにそむく罪であることを知っておくべきである。
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