5.農書から見る種子の選び方、播種の仕方

参考書:農業全書


◎種子について


〇良い種子を収穫する方法


種子は、生命の根源であり、生育の基礎が秘められている。

それ故に、良いものを慎重に選ばなければならない。

良い種子を採るには、通常の作柄と比べ出来すぎず、害虫被害もなく、色好きがよく、さらに適期に収穫できたものからとるのが良い。

収穫が多い場合は、作業場にいくつか持ち帰り、選び余分に蓄えておくのもよい。

種子の貯蔵には、土蔵が適当であるが、湿気に触れ発芽することがあるため、穴蔵などに入れておく方が最適である。


〇良い種子の選別方法


収穫した種子の中から選別する際は、丸く色味が均一で、粒のそろったものを保存し、時々、日光や風に当て、乾燥させる。

その際に傷んだ種子を見つけた際は、必ず取り除かなければならない。

これを怠り、悪い種子を栽培すれば、発芽してもすぐ枯れてしまったり、出来の悪い米ができてしまう。

出来の悪い米が混ざると、精米をおこなっても、うまく出来たのかわかりにくく、味も落ちる。

また、売るさいも買いたたかれてしまい、いいことが一つもないため、種子選びは念には念を入れて選ばなければならない。

収穫の稲の中に、赤くなった米や、色の悪いものがあるが、これは、種子選びをおろそかにした証拠である。

米を作るものはこういったものが出ないように、種子選びをしなければならない。

種子は、水に入れ沈んだものを選び、乾燥させて保存する方法がある。

ただし、木の実などの油が多いものは、水に浮かびやすいものなので、必ずしもこれがよい種子の選び方ではない。


〇種子を播種するまでの対策、播種する前にする技術


害虫対策として、馬に種子を三口か五口ほど食させ、その後、踏ませてから貯蔵すると、虫がつきにくくなる。

寒中の雪水を貯蔵し、春先に播種する前に種子をこれにつけることで、害虫がつきにくくなる。

そのため、寒いうちに、雪を壺に入れ、日陰の土中に埋めて置き、必要に合わせて取り出すとよい。

「種子を蒔く前に、馬の骨を煎じ、その汁を種子に浸し、乾燥後、蒔くと害虫や病害なども受けず実りが良くなる」と書物に書かれている。

また、尿や魚の油をひたし、灰をふりかけ、もみ合わせたものを蒔くと、順調に生育する。


〇種子から良い収穫を得るために行うこと


種子には、その地域ごとに様々なものがあり、いろいろと試してみるのが良い。

その地域名産のものでも、自分の土地に合わないものがあることを理解しなければならないが、全くできないということは稀である。

作物を管理し肥料のやり方などを研究し極めれば、十分とはいかずとも収穫することはできるものである。


しかし、土地や気候によって全くできないものはある。

寒い地域では、柑橘類やショウガ、さらに雪が多い地域では竹を栽培しようとしても、すべて枯れてしまうものである。

このような場所では、人の力ではどうすることもできない。


鳥や獣など子が親の性質を受け継ぐ、形や心が似るという理屈と同じく、良い種子を選び、蒔くことで優れた収穫の中から良い種子をを得続けることは間違いない。


☆現在の種子選別技術☆


1.唐箕による選別

ほこりなどと一緒に質の悪い種子を分ける


2.比重による選別

振動や、塩水に入れることで、質の高い種子などを判別する


3.形状確認(丸い種子の選別)

斜面に種子を転がしていき、まっすぐに転がったものは、良い種子

逆に、右や左に曲がっていくようであれば、いびつなため、質の悪い種子


4.色による選別

種子の色を確認し、おかしいものを取り除く


こういった方法を行い、現在の種子は販売されている。



◎播種する季節などについて


〇四季を理解する


一般的に播種する時期は、四季(春夏秋冬)、八節(立春、春分、立夏、夏至など)、二十四節(八節よりさらに細かく分けたもの)を確認し、播種前の準備をして播種を行うのが大切である。

1月や2月などの月を基準に行動をすることはよいくない。

地の利をよく理解した人でも、天の時を理解して作業を行わなければ、苦労しても実りが少ないものである。

ただし、南北の違いや、山川など土地により、寒暖の差があり、そこに合わせた適期があるため、一律に決められたものではない。

播種時期は、その土地ごとに基準となる場所を決めておき、そこに生える草木の発生期を見計らい植えたりするのが良い。

播種時期は早すぎると発芽せず、遅ければ実りが少ないものである。


〇種子の蒔くための知識、苗を移植するための知識


播種時期が遅れてしまった場合は、焼肥などの陽気を下に多く施してから播種することで多少収穫の量を上げることができる。


種子は気温に従って発芽するものである。

それぞれの発芽時期を見計らって蒔くのが良い。

「古くから代々聖王や、賢君というものは農民に耕作時期を教え、間違えないようにお示しになった」と書物に述べられている。

そういった者から、播種時期を学び、茂りの良いときに肥料を施し育て、生育する方法を学ぶことで、凶作の年であれど災害を逃れ、実りが期待できないということが少なくなるものである。


種子を蒔く場合は、午前中が良い。

それは、日が昇るにつれて土が乾き陽気が盛んになるためである。

そのため、晴れた日が良い。


苗を植える場合は、午後が良い。

午後であれば、日の光が和らぎ、夜の空気に触れて活着していくからである。

曇った日に行うとさらに良い。


作物の多くは、月の初めごろに植えることが多い。

播種や移植する時期を誤ると、その後の収穫の量に多く影響するため、しっかりとした準備をして行わなければならない。

逆に収穫をする際は、多少遅れても十分に実りを得た状態で刈り取った方が良い。

ただし、台風や長雨なども考慮しなければならない。


〇農業計画の重要性、農作業への心得について


農家たるもの暦を常に確認し、災害に注意しなければならない。

用具の手入れや、仕事の手順を寝床に入るまでに行い、常に季節の変わり目に対応できるように心掛けなければならない。


仕事とは作業を進める前に、その手順を決める工夫が大切である。

これは、農業に限ったことではない。

天候に関心をおろそかになれば、数か月の苦労も無駄となる。

決して油断してはならない。


農業とは、戦と同じであり、絶えず歩みを進まなければ勝利を収めることが、おぼつかない。

太陽や月が休むことがないように、片時も怠けた心を持ってはならない。

ことに、播種前の耕作、播種の仕事は太陽の恵みを心から祈り行われる仕事である。

横着をして、日が昇ってから起き、時間を考えず怠けていれば、「今日という日が再び来ない」ということを忘れ、怠け癖がつき、次第に田畑は荒れ、月日の災難が降りかかった際には、飢えたり、こごえたりする心配にさいなまれるものである。

そうなれば、子は親元を離れ、他人にこき使われる身に落ちぶれ、困窮した暮らしからは這い上がることもできなくなる。

心ある農民でも、困難に出会わないとも限らない。

天の与えた好機を逃さず、時間を大切にし、創意工夫を行い、決して怠けてはならない。


☆作者の失敗談など☆

種子のパッケージには、播種時期(6月から8月など)が書いてあり、これ参考に種を蒔いたが、発芽しなかったり、よい収穫が得られないことがあった。


理由は、生育場所の気温に合っていないため、発芽がうまくいかなかったり、遅すぎて失敗したからです。

パッケージの情報は、播種時期だけでなく、生育温度も書いてあるので、ここを見ながら種をまくなどしていった方が、良い野菜が作れます。


また、野菜の旬を理解するのもお勧めします。

(旬のお野菜等の情報は、料理に関する本などで出版されています)

例えば、キャベツは季節を関係なく出荷されてますが、一番作りやすい季節は秋から春にかけてになります。

これは、一番の天敵である、青虫による食害が少なく雪に埋もれても枯れないからです。

それ以外の季節で栽培した場合、春にキャベツの種をまくと、青虫に食害され、大量の農薬を必要になります。

夏に蒔けば、東北などの地域であれば育つかもしれませんが、南国である地域では他の草などが大きく成長し、キャベツが十分に育つだけの環境ではないうえに、気温が高すぎると結球しないという問題も発生します。

現在の技術であれば、ある程度の作物は季節に関係なく作れますが、逆に自分が食べている野菜などがいつが旬のものなのかわからない人もいます。


栽培をする野菜の旬を今一度、確認して栽培しましょう。

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