2.農書から見る土寄せ・中耕・除草

参考書:農業全書


土寄せ・中耕・除草・・・大きく5つの効果がある。


1.土の中に空気を取り込み生育をよくする

2.雑草が生えにくくなる

3.肥料と合わせて行うことで、効果を促進させる

4.作物の倒伏を防ぎ、根もの野菜は生産性を多くすることができる

5.雨で流れ出た土を戻すことにより、土の乾燥を防ぐ



農民は畑に種をまいた後、中耕・除草を行う。

この作業を怠ると、田畑が雑草であふれ、作物が実らなくなってしまう。

特に、雑草はその土地の主であり、蒔いた種よりも生長が早く、生育を著しく阻害するものである。

「良いことは栄えにくく、悪事がはびこるのが常」という言葉あるとおり農民は、余所から来た客人のように苗を守る必要がある。


・上農は、雑草が生える前に、中耕を行い除草し、

・中農は、雑草が生えてから、中耕を行い除草し、

・下農は、雑草が生えても、中耕をせず放置する。


下農の行いは、もはや罪人ともいうべきものである。


作物が、うまの耳のような形(種籾の発芽した状態のことと思われる)になる頃に、中耕を始めるのがよい。

苗の高さは1寸から2寸(2cm~4cm)になる頃に行う。

その際に、畝に高低差があったり土塊があれば、かきながら整え、草を取る。

(代掻きのことを説明している)


水田の草なら取ったあと苗の根本に踏みしめ、畑の草ならば陽のあたる場所に広げ、枯れてから苗の根わきによせ、その上に土を寄せて肥料をまけば土が良くなるものである。


この作業を”くさおおう”と言い、昔から行われている。

(現在の草マルチのことを指していると思われる)


中耕を行う際、小鋤(すき:スコップのようなもの)がよいが、鍬(くわ)や熊手などでも細かく丁寧に中耕することもできる。

大鍬は、向いていない。

作物の中耕時期は種類によって異なるが、強く荒く中耕をすることはよくない。

雑草は、草の根を丁寧に取り除き、苗の根を傷つけないように行わなければならない。

10回も細かく中耕が行えば、収穫が8倍になり、よい実がなるものである。


〇季節ごとの中耕作業について


◎春


春の中耕は、土を掘り起こすように、行うとよい。


湿気の多い時期は中耕してはいけない。

土が硬くなり苗が痛んでしまうためである。


◎夏


夏の中耕は雑草を削り殺すようにして、行うとよい。


夏は梅雨時期が過ぎた6月から7月(新暦:7月から8月)になれば、中耕してもよい。

夏ともなれば、作物が茂り、地面に日が当たらなくなるため、夏の中耕は湿り気がある土でも固まらず、たいした害にならないためである。

しかし夏は熱気が強く、下層まで乾燥しているが、このときに中耕を行うと苗を痛むことがある。


〇中耕を行う際の注意事項


キビや粟は、苗の草が畦の頂きに達しないうちに、一度中耕を行う。

その後、5日から7日に再度中耕する。

その後は、1回から3回は中耕を行うとさらによい。

難しい場合は、無理にしなくてもよろしい。

また、作物が大きく伸びた後も1回は軽く中耕をするとよい。

ごまと、大豆は中耕を2回で止めた方がよい。



作物に対して、はじめて中耕を行う際は、深く中耕してはいけない。

2回目に深く中耕を行い、3回目からはまた軽く行う。

なぜかというと、1回目は雑草が芽吹こうとするため、彼らを削り取り、

2回目は土深く中耕することで、苗の根を下層深くまで根を通すため、土塊を砕く。

3回目は、わき芽もはえているため、深く中耕すると根が切れてしまう。

浅く行うことで、乾いた細かい土が下層に入り、作物の土がよくなじむので大切である。


ことわざに、「中耕を8回行えば、犬が餓死する」といわれている。

これは、田も畑も中耕を多くすれば、良いものが収穫でき、犬が食べるクズなものがなくなり、犬が餓死してしまうという意味である。


中耕には、鍬、鋤、熊手などがあるが、素手で土をかいて回り、雑草を抜いて回った方がよいとされている。


田畑の畔や、周辺にも草を生やしてはいけない。

土の養分や雨露の水気まで奪い取るからである。


土が湿った時は、決して中耕してはいけない。

しめって黒い土は、日の光や風当たり良い日に白く乾いたところで1回行い、その後4回、5回と中耕すれば効果が大きくなる。

また、土の質が砂状の場合は、中耕を行いすぎると、だめになりやすい。

粘土質の場合は、多く回数を行った方がよい。

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