各章

一章.農業書籍を読んで

1.農書から見る耕作方法

参考書:農業全書、百姓伝記


耕作・・・畑を耕し、野菜などを栽培すること


ここの説明は、主に種を蒔くまでの準備を説明する。


○耕し方について


耕し方がうまい人は、一人で十人を養うほどの生産が行える。

畑の面積は、実力以上の面積を作らない、足りないくらいでちょうど良い。

何事も、基本は耕す事である。

特に深く耕し暖かい気を土に蓄える事で収穫が得るのである。

必要以上の野菜を作る事は耕す回数が減り、かえって収穫ができず、生活が破綻(はたん)する。

田畑が多ければ、1、2年休ませながら、少ない者は、輪作をすることで、収穫を安定的に得ることができる。

また、田んぼを1,2年使い、水を抜き、畑として1,2年使い、田んぼに戻すということを繰り返すのも、収穫を上げる方法である。

人や牛などを使う者は、思いやりを持って接しなければ収穫が減るものと心得よ。


〇農家の心得と、道具の扱い方


1年は春に耕す事に始まり、1日は鶏の鳴き声で始まる。

日の昇り初めと共に田畑へ向かうものである。

農業は、準備よく耕し整えれば、天の恵みとなってかえってくる素晴らしい仕事であり、ろくに考えず、怠け、口答えばかりする者に収穫を上げる事ができない。

また、考えもなしに耕すだけでは収穫を上げる事はできない。

何事にも正しい行いと、技術と知識が備わって初めて収穫が上がる。


道具も重要である。

よい道具を使えばおのずとよい結果が生まれる。

また、手入れを怠ったり、良い農具へ出費を惜しめば、作業がはかどらず骨折り損の状態となり、収穫が増える事はない。

良い道具をちゃんと手入れをするとしないとでは、生涯にわたって大きく収穫を生むものである。

また、何事も高価な物を買うのではなく、背丈にあった良い物が一番よい。



○地質と、陰と陽の気について


水気の多い土を、陰。

乾燥のした土を、陽。

という風に、土の状態を見極めることにより耕すべきかを考えよ。


陰 湿った土、粘ってかたい土、軽く柔らかくヘドロのような土。

陽 乾燥した土、砕けやすくさらさらの土、重くしまってボロボロの土。


この土の性質を理解すること。


谷間の日の当たりにくい土地、冷たい水の湧くところ、赤さびた水の出る土地は、稲作に向かず、肥料を多くあげたところで、この結果は変わらない。

しかし、冷たい水であれば、日の光をあて、水が温たまるように迂回させてから、田畑に戻すなどすることで、植物が育つ場合がある。


何事も、工夫次第である。


○耕す際の注意事項


雪や冷たい水を土の中に入れるのはよくない。

陰の気が強く土の質が悪くなり、収穫も落ちるからである。

春先などの寒いころは日が高くなるのを待ち、日が昇り暖かくなってから、耕したほうがよい。


1,2年おいた田畑や、作物を植えた後の田畑は、深くを耕した方が良い。

初めに深く掘り起こさなければ、土地が熟さないためである。


良くできる土地では、草を殺し、回数を合わせて深く耕す。

しかし、深く掘りすぎると質の悪い土が上に上がり、だめになることもある。


種を蒔く際は、土を耕さないで、土表面をほぐすくらいで良い。

下手に土を掘り起こしてから、種を蒔くと返って悪い土を持ち上げてしまい、育たなくなったり、育ちにくくなるからである。


すく1かく6(漢字が出ないのでひらがなで書いてます)ということわざがある。

深く掘る(「すく」)ことも大事だが、肥料やたい肥となじませるように、「かく」ことも必要であるという意味である。

そうしなければ、土が肥えず、土塊も多く植物もよく育たないモノである。

しかし、砂地や、粘土分の少ない土は「かき」すぎると、逆に悪くなることがある。

こういった土地の場合は、土塊が少し残るくらいの方がよい。

土地の質を見極めて、耕耘することが重要である。



〇各季節での注意


◎基本知識

野焼きを行ってから、田畑を作るのがよい。

草原や砂地の場合は、人よりも牛の方が効率よく作業ができる。

二十四節気、七十二候、天気、気温、風の強さなどを確認しながら作業を行う。

季節の変わり目となる土用の間は、耕作作業を行わない方がよい。


土用・・・季節が大きく変化する時期。約15日間あり、この時期は畑作業をせずに、新しい季節に合わせた衣替えなどの準備などを行う。

また、季節の変わり目は体調が大きく変化する時期のため、「う」の名前が付いた食べ物を食べるとよいとされている。

代表的なものとして、「うなぎ」が有名である。


◎春

春は耕しやすく、秋や冬の半分の能力ですむ。

春は、雪が溶け日が昇り暖かくなってから行う。

土が凍った状態で耕耘作業はもってのほかである。

春は冬至から55日過ぎた頃(啓蟄あたり)に、始めるのが良い。

早く行うとすると、陰の気を多く取り込み、土がだめになるからである。

正月から、雪が溶け日の光が良く当たる河川近くの田畑から耕していくのが良い。

春は、一雨降り、青草が生え始めた頃に耕し始めるのが良い。

雨を待たずに掘り起こすと、土が硬く土塊も砕けず、植物も腐りにくく土をダメにするためである。


春は、草木の芽吹き方、花の咲く頃、動物などの動きを参考にすること。

「春耕は手に尋いで労す」ということわざがあり、春は、深く掘り起こしたらすぐ土を砕いた方が良い。

春は二度目、三度目は浅く掘り返すのが良い。

春は風が強く、土が乾燥しやすい。


晩作の稲を作ったのなら、その田は次の春が来るのを待ってから耕すのがよい。

理由は、晩作の稲は丈夫で硬く、耕すのに苦労するため、冬の寒さで腐らし、春に耕した方が、牛などの負担が減るためである


春は暖かければ朝から夕方まで耕してよい。


田の実りが悪い場合は、緑肥をすき込む事で収穫が増える。

一番よいモノで、緑豆、小豆、ゴマなどがよい。

旧暦五,六月(新暦:6月中旬)に蒔き、よく育ったところで、土と一緒にすき込み腐らせ、次の年の春に、よくかき混ぜると収穫が上がる。

下手に肥料のみで対処するより、多くの実りを得る事ができる。


〇春の陰の土、陽の土の耕耘

・春に耕耘する際、陰の強い土は、2通りの言い伝えがある。

1.粘土質で、黒く粘りの強い土は、春の遅い時期に耕し始め、土塊をよく砕き、その後草が生えたら、再度耕。

小雨を待って、再度耕し、土を良くかき混ぜれば、土塊も減り良い粘土質の土になると言われている。


2.粘土質の堅い土は、正月(旧暦の1月:新暦の2月)に1度、耕した方が良いという話がある。


・陽の土は杏の花(旧暦2月:新暦3月)が咲く頃に耕し、花が散る頃(旧暦3月:新暦4月)に再度耕。

草が生え、雨が降ったらその都度耕す事で土に粘りが出る。

それでも軽い状態なら、牛に土を踏ませることで粘りのある土になる。



◎夏

夏の開墾は、非常に困難だが草木をすき込む事で土の肥料となる。

しかし春の開墾作業と比べるとかなわない。

夏は、夏至から90日(秋分にはいる頃)に土を耕せば、1度に5度分の耕耘をしたことと同じになる良い時期がある。

これを膏沢(こうたく)といい、動物の油ののったような質の良い土となる。


夏は、夜遅くまで耕してよい。


旧暦五,六月(新暦6,7月)に耕すのは良いが、七月(新暦8月)は辞めた方が良い(台風の時期と重なるため)。

草刈りや中耕を行った方がよい(夏の土用とも重なり、耕作を避けた方が時期のため)。


田から畑にする際に、

秋作を行わないのであれば、秋から耕し始めるのもよい。

稲を刈ってすぐに、耕し、土を乾燥させ、2,3度かき混ぜる。

雪や霜にあて、春に3,4回かき混ぜるだけで湿り気のあるよい土ができる。

しかし、そのような余裕がない場合は、きびや大豆を育ててから、春に耕し始めてもよい。


カヤツリグサやススキなどのイネ科が広がる場所は、牛などに葉を踏ませつぶし、七月(新暦の八月)の終わり頃に、耕すと葉も腐り牛などを使わずとも耕す事ができる。


〇湿田で、麦を栽培する際の注意

麦・・・秋頃から冬にかけて種をまき、梅雨時期ごろまでに収穫する植物。

水気の少ない土地でよく育ち「大豆から麦、麦から大豆」という二毛作が有名である。


湿田や田では麦を育てるのは難しい。

しかし、水気を落とし(暗渠:あんきょ)、深く掘り、土塊を乾燥させ、砕き再度掘り起こすを繰り返すと、土が乾燥し、麦の実りも多くなる。


暗渠・・・大きな竹を唐竹割りで半分にし、節を砕き片方に穴をいくつか開け、麻ひもで縛り元の形に戻し、穴を麻布でおおい、土深くに埋めることで、土の水が、竹の管を通り、土の水分が抜けていく仕組み。


◎秋

秋は草などを乾燥させてから火を付け焼き、荒く土を掘り起こしてから、そばやからし菜を蒔く。

そばは、種を蒔くと周りの草が育ちにくくなり、からし菜は冬の寒い時期でも腐らないためである。

秋は「秋耕は白背を待って労す」ということわざがあり、寒く乾燥する時期は、深く掘り起こし、一,二日おいて土が白くなってから土を砕いた方が良い。

しかし、雨に打たれたり、霜が来る時期は辞めた方がよい。

この時期に耕すと、土が硬くなりかえってだめになる。

秋は、日が昇り暖かくなってから耕すべきである。


〇秋の田の耕耘について


「秋耕は青きを覆う」ということわざもあり、残暑の頃の青い草が生える時期に草ごと掘り起こせば、草が腐って、田が肥えると言われている。



◎冬

水田を雪が覆ったら、雪を耕し足で踏みしめることで田の水気を守り、中にいる虫を殺すことができる。

コレにより、翌年もよい稲が育つ。

冬に、田を乾燥させないことが重要である。

水田に水を張って、凍らし春耕す方法がある。



☆作者の習った情報による耕作作業☆


種まきや苗を植える、30日以上前に耕耘を始める。

30日前は、たい肥を混ぜ合わせる。

20日前は、苦土石灰など土の酸度を調節するモノを混ぜる。

10日前は、米ぬかや、油かす、鶏糞などの肥料となるモノを混ぜる。

5日前は、土を混ぜた後、たっぷりと水をかけ、一雨降った状態にする。

種まき当日に、土の乾きを確認し、土を軽く掻き、種または苗を植え、水をまく。

種をまく作業は、晴れた日の午前中に行う。

苗を植える場合は、昼が過ぎてから行う。

また、次の日が、曇りや雨である時期が一番良い。

理由として、次の日も晴れだと土が乾燥しやすいため。


苦土石灰と、たい肥の順番が逆でもよいらしいが、同時に混ぜてはいけない。

化学反応により、目的以外の効果が発生し、生育に影響を与えるため。


たい肥や肥料などはよいものを使うこと。

未熟なものを土に入れると、腐敗により土がだめになる。

ただし、完熟したものでも、熟し過ぎれば肥料などの効果もなくなるので、程よいものを見極める必要がある。

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