第12話
二度目の種付けの日がやってきた。
今回もお兄さんが鎮静剤を入れに来た。
「今回は軽くしたからねー」と言いながら。
それから部屋を出て、身支度をしてもらう。
お出かけするときぐらいはきれいにしてもらいたいし。
それから車に乗せられて種付け場へ。
前より頭がはっきりしてるから、どこに行くかもわかる。
今度こそうまく行ってほしい。
群れのみんなが励ましてくれたし、何よりお兄さんに喜んでほしいから。
そんなことを考えてるうちに、種付け場に着いた。
当て馬のおじさんが準備してくれるのも前とおんなじ。
建物の中に入る前に種付け場の人達がしっぽや後ろ脚に支度をしてくれるのも前とおんなじ。
でも、風がなんだか前と違う。
どこかで嗅いだ懐かしいにおい。
きっとうまく行く。
そう信じて、建物の中に入った。
種付けが終わって出てきたら、お兄さんが心底ほっとした顔で迎えてくれた。
横にいたお兄さんに似た人は、「当て馬は僕の友達」とか言ってる。
きっと大事なことなのかもしれないけど、今のわたしにとってはどうでも良かった。
早く帰ってみんなに会いたかった。
会ってうまくやれたよって報告したかった。
なのに、帰ったらまたひとりだけ部屋に戻された。
後で戻って来たエミちゃんにはちゃんとやれたよと言えた。
エミちゃんは「そう。良かったわね」とだけ言ってくれた。
それだけでもうれしかった。
わたし、サラブレッド。
名前はシュシュブリーズ。
誰かのために頑張ることを知った。
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