第6話
今までは庭に出てもひとりでいることが多かった。
でも、梅ちゃんと仲良しになってからは少し変わってきた。
梅ちゃんはいつもエミちゃんたちの方にいるのに、わたしを見つけるとこっちに来る。
そして、わたしを群れの方に押して行く。
エミちゃんはお隣だし時々お話はしてるけど、他の馬はあまりお話したことがない。
いじめられないか不安になるけど、梅ちゃんはお構いなしでわたしを群れの真ん中に連れて行く。
ちょっと、ドキドキした。
でも、エミちゃんは柵をかじってるだけだし、他の馬もめいめい好きなことをしてる。
「ここの馬たちはみんな優しいから大丈夫だよ~。わたしもいじめられてないから」
そう言って梅ちゃんはニッコリと笑った。
晩ご飯の時間が一番好き。
お腹いっぱい食べられるから。
お姉さんが持ってくるときは少しだけお姉さんと遊べるし、お兄さんのときはおしゃべりをしてくれる。
それにご飯がおいしいから。
でも、今日はいつもと違った。
部屋の前に何か変な生き物がいた。
ご飯を持ってきたお兄さんはそれを見るなり、「もちこ呼んできてー」と言いながらどこかに行ってしまう。
変な生き物はご飯の桶を見つめてる。
何をされるかわからなくて、正直怖い。
「何にも心配ないんやで」
またあの声だ。
「もちこが来たらなんとかしてくれるやで。安心して飯食うてええんやで」
でも大丈夫?
「大丈夫やで。ほれ、もちこ来たやで」
もちこちゃんは変な生き物に猛然と吠えかかっていった。変な生き物はあわてたように逃げ出してどっかに行ってしまう。
「な。心配ないやろ?」
わたしはご飯を食べながらうなずくしかなかった。
「前にわたしにも役割があるって言ったよね?それって何?」
ご飯の後、わたしは聞いてみた。
「そのうちわかるやで。ここんとこお医者さんさん来てるやろ?」
健康診断じゃないの?
「シュシュの役割に関係あることなんやで」
そうなんだ。そしてあなたは誰?
……今日も返事はなかった。
わたしにももちこちゃんみたいな役割があるとすれば、どんなことをするのだろう。
人間と遊ぶのは嫌いじゃないし、そういう役割ならいいんだけど。
わたし、サラブレッド。
名前はシュシュブリーズ。
自分の役割はまだわからなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます