第5話

梅ちゃんとはすっかり仲良しになった。

今日も一緒に草を食べながらおしゃべりしてた。

梅ちゃんは何十回もレースを走ったことがあるみたいで、わたしの知らないことを色々教えてくれた。

「シュシュの方がすごいよ~。わたし重賞出てないもん」

梅ちゃんはそう言ってわたしを持ち上げる。

わたしすごくなんかないんだけどなあ。


ここに来て出迎えてくれた白黒のかわいい生き物。

お兄さんやお姉さんは「もちこ」って呼んでた。

もちこちゃんはわたし達には近づこうとしない。

柵の側までは来てくれるけど、そこから入ろうとはしてくれない。

梅ちゃんももちこちゃんと仲良くなりたいねーって言ってたし、どうにか出来ないものかしら……。


「何にも心配ないんやで」

またあの声だ。

「もちこはシュシュや梅ちゃんやみんなを守る役割があるんやで。遊んでるうちにおっかないものが来てもいかんのやで」

……そうだったのか。てっきり私たちが嫌いなのかと思ってた。

「もっとも、もちこは馬が苦手らしいやで。そっと見守るのがええんやで」

うん、そうする。でもあなたは誰?


……やっぱり返事はなかった。


そういえば、わたし達にも役割があるって、お兄さん言ってたな。

どんな役割なのかはまだ聞いてないけど、きっと出来ないことではないはず。

不安だけど、今はこう思うしかない。

役割をがんばってるもちこを見ながらそう思った。


わたし、サラブレッド。

名前はシュシュブリーズ。

自分の役割を考えるようになった。

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