第4話
エミちゃんにこの間聞いたら、お兄さんはここのえらい人だったみたい。
「ちっとも偉そうに見えないところがいいのよね」って、エミちゃんは柵をかじりながら笑ってた。
確かに、えらい人には見えないし、どうかすると変な人にも見えるときがある。
でも、ご飯をくれる人だから。
とりあえず変なとこには目をつぶろうと思った。
庭に出れば、他の馬たちがいつもいる。
エミちゃんは他の馬の方にさっさと行ってしまうので、わたしはひとりになる。
前のとこではいじめられてたし、こっちにも怖い馬がいる気がして、なんだかそっちには行けなかった。
でも。
最近は庭に出たら必ず近寄ってくる馬がいる。
今日も出て来るなり「シュシュ~」と声がする。
「シュシュ、今日は何して遊ぶ?駆けっこなら負けないよ~」
その馬はにこっと笑いながら近づいてきて、わたしにじゃれてくる。
お兄さんたちはこの馬を「梅ちゃん」と呼んでいた。
わたしが答えずにいると、「じゃあ駆けっこに決まりね!さあ走った走った」とお尻を押してくる。
こんなに距離を詰めてくる馬は初めてだから、どうしたらいいんだろう。
変なことしたら怒られそうだし、正直不安。
「何にも心配ないんやで」
部屋のほうからあの声がした。
「単純に遊びたいだけやから遊んだったらええんやで」
それでいいならわたしにも出来る。でも、あなたは誰?
……やっぱり返事はなかった。
その日は梅ちゃんと思いっきり遊んだ。
他の馬たちが変な目で見てたかも知れないけど、気にしないことにした。
ここに来て、初めて心の底から楽しいと思えた気がした。
わたし、サラブレッド。
名前はシュシュブリーズ。
初めて友達が出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます