第2話

引っ越しの次の日。

お兄さんたちがわたしの誕生日を祝うんだと言って、わたしの部屋にやって来た。

人間はこういう時に「ケーキ」というものを食べるらしい。

なので、お兄さんはわたしにも食べられるものでケーキを作って来たみたいだけど、わたしには食べられるものには思えなかった。

だって、見たことがないものばかりだったから。

それよりも、お兄さんの隣にいた人が気になった。

お兄さんによく似た人。

もしかして、お兄さんの兄弟かな?


隣の部屋のひとと挨拶ができた。

お兄さんが「エミちゃん」と呼ぶその馬は、いつも不機嫌そうに体を揺らしてる。

壁の小窓から見てるといつもこうだから、声をかけたら怒られそうで。

前のところでいじめられた記憶が戻って来る。

仲良くなりたいけど、やっぱり正直不安。

そんなことを考えていたら、小窓越しに目が合った。


「なんにも心配することないんやで」

誰かの声が聞こえた気がしたら、小窓の向こうから声がした。

「いじめたりしないから安心しなさい」

エミちゃんは向こうを向いたまま、体を揺らしながらこう言った。

少しだけ安心した。


風はまだ冷たいし、考えれば不安なことはいっぱいあるけれど、きっとそんなに気にすることはないのかもしれない。

お兄さんも小柄なお姉さんも優しいし、ご飯はおいしいし。

ご飯の桶だっていつもきれいだし。

欲を言えばもっと食べたいぐらいだけど。


わたし、サラブレッド。

名前はシュシュブリーズ。

新しい友達が出来そうな気がした。

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