登場人物紹介1


布団に転がっていた俺はある夜に、ふと思った。


「そういえば、俺たちの情報って次元間に絶対にあるよな」

「いったい何を言い出すのよ。いきなり」

「いや、昔の実験装置や幼少期の魔法技術なら不可能だけど……今の俺ならできるんじゃないかと」

「やるなら、勝手にやったら。私は眠いから、もう寝るわ。おやすみ」


そう言って、詩帆が横になったのを見て、少しからかってやろうと思った。


「じゃあ、まずは詩帆か、ら」

「ちょ、ちょっとあなたからにしてよ」

「あら、寝るんじゃなかったのか」

「……意地悪」

「はいはい、拗ねるなって。いいじゃんか、好きな人から調べても」

「うるさい」

「ゴメン、ゴメン。悪かった」


そのまま彼女を悪ノリして、押し倒そうとした。……その瞬間、彼女の右手に魔力が集中した。


「<火炎弾ファイアバレット>」

「うおう。……冗談だって」

「悪ノリに付き合うのも嫌だし、早く寝たいのよ。後、あなたに私の個人情報を勝手に探られるのも嫌だから早くして」

「はいはい、分かりましたよ。<次元空間情報ワールドインフォ干渉インジェクション>」

「私の変な情報が見られるのも嫌だから、まずあなたからね」

「はいはい」


そう言いながら俺は自身に関係する情報を壁面に映し出した。


湊崎 雅也

現代の天才物理学者。次元層の狭間を流れる情報データを完全解読するも、内容の危険性から大部分の研究成果を秘匿した。それでもその発表した一部の研究データの功績によってノーベル賞は確実と言われていた。T大学の准教授に27歳という異例の若さで就任するも、病床の妻とともに29歳の若さで自殺し、この世を去った。


真面目で研究バカ。愛妻家で恐妻家。趣味は研究。本人は悲観しているが、顔は上の下ぐらい。



「顔は上の下って何よ」

「そこか?突っ込むところは」

「いや、後は次元空間の情報にもあなたはは死亡。って記されるのね」

「まあ、そりゃあ死んでるからな。というかお前もだと思うぞ」

「うーん、やっぱり私の方も気になるから……調べて」

「……結局かよ。まあ、最初からそのつもりなんだが」



湊崎 詩帆

旧姓 洲川 詩帆。T大学医学部を首席で卒業した天才女医。将来を嘱望されていたが、脳腫瘍により余命宣告され、人生に悲観して夫とともに研究室で自殺していたところを発見された。享年29歳。


恐ろしい悪女的な一面もあるが、根は一途で雅也を溺愛していた。雅也によるとデレるとかわいい一面もあるらしい。大和撫子そのものというレベルの黒髪和風美人。



「やっぱり自殺扱いね」

「そうだな」

「後、私の性格に関するところ、少し納得がいかないのだけれど」

「そこを言い出したら、俺も文句はあるぞ」

「あら、あなたはその通りじゃない」

「いや、お前もそう……すみません」

「……まあ、最後まで言わなかったし許してあげるわ。じゃあ次は私に関係する人についてね」

「結局ノリノリだな」



洲川 水輝

詩帆の父方の従弟。雅也の研究室に所属する大学院3年生。性格は単純で、一度やり始めると止まらない。趣味はゲーム。不運なことに、湊崎准教授に研究のすべてを託される。25歳



藤川 直久

詩帆の指導医であり詩帆の主治医になっていた先生。性格はとても穏やかで 周りに不安を感じさせない程の安心感を生み出している。普段は優しい内科の先生にしか見えないが、手術の腕は超一流な脳外科医。脳神経外科の権威であり、精神医療にも詳しい。52歳



「あなた、水輝にそんなことさせてたの」

「どのみち始末しないといけないなら、あいつに頼むのが手っ取り早いからな」

「あの子も災難だったわね……」

「まあ、俺が押し付けたことには変わらないけど。それにあいつが選んだことだし、なによりできるだろうとは思っていたからな」

「……はあ。にしても藤川先生お元気かしら」

「元気なんじゃないのか。ああ見えて外科医だから体力もあるはずだし」

「そうよね。心配する必要はないか」

「じゃあこっから本題な。現世の俺とユーフィリアの個人情報パーソナルデータ」



クライス・フォン・ヴェルディド・フィールダー

湊崎 雅也の生まれ変わりで、ルーテミア王国の南方の地方領主であるフィールダー男爵の三男。異常な量の魔力を持つ超越級魔導士。詩帆を探すことより魔法研究を優先してしまう研究バカぶりはひどい。


茶髪、黒目、顔は中の上。服装はずっと子供用の貴族服。



ユーフィリア・フォルト・フォン・グレーフィア

湊崎 詩帆の生まれ変わり。伯爵家の長女として生まれるも、父親は性欲抜群ロリコンのⅮV男で、母親は精神病にかかっているという不運な人。魔法の才能はクライスほどではないが世間では十分に天才と呼ばれるレベル。


性格は外では典型的な貴族のお嬢様、親の前では優等生。金髪のストレートヘア―、青い目。清楚系美少女。服装はドレスかワンピース。



「そういえば、あなたと最初に会ったときはローブ姿に中も普通のシャツだったと思うけど」

「さすがにダサすぎたから師匠の家にいるときに、な」

「にしても超越級っていいわよね」

「いや、そこまでいいものでもないし。後、お前も超越級だろ」

「そうだったわね。……あなたがすごすぎてたまに忘れそうになるのよ」

「はあ。にしても前世にしろ現世にしろ妻が美女っていうのはやっぱりいいわ」

「……いきなり、なによ」

「おっ、動揺した?」

「し、してないもん。そ、それより次は……あなたと私の転生後の家族」

「なんか怪しいけど……了解」



ミレニア・フォン・ダーリア・フィールダー

クライスの母親。生まれは王国中央部のデミニュ子爵家の次女。家事全般ができるスキルはメイドさんが多い貴族家ではあまり役に立たない。王都の高等学院を出ているので、実はお父さんより頭が良かったりする。父の政務を手伝っているためお父さんは彼女に頭が上がらない。子供に甘い。



ガーディア・フォン・ヴェルディド・フィールダー

クライスの父親。外では威厳のある父親、賢い男爵様を演じているが、全く母に頭が上がらない。

恐妻家。子供たちの進路には割合寛容。クライスの立てた手柄によって陞爵の可能性が出ている。



セリア・フォン・ヴェルディド・フィールダー

クライスの兄で男爵家の長男。責任感が強く好奇心旺盛。騎士志望で将来は武官肌の男爵になりそうな人。姉弟たちをとてもかわいがっている。クライスの六歳上。



シルバ・フォン・ヴェルディド・フィールダー

クライスの兄で男爵家の次男。頭脳明晰な人だが、基本マイペース。将来は領内の財務統括者として働く予定。クライスの三歳上。



リリア・フォン・ヴェルディド・フィールダー

クライスの妹。黒髪の青い目をしたロリ系美少女。クライスのことが大好き。おとなしいが恋には積極的。実は兄であるシルバより頭が良い。クライスの二歳下。



グヴァルド・フォルト・フォン・グレーフィア

グヴァルド伯爵家は軍務大臣を代々、輩出する名家だった。が、彼の父親が急死し、若くして家督を継いだ際にその家の地位をどん底にまで叩き落した。三大欲に飲まれ、数々の大問題を起こし、最初の内は古くからの家臣が止めていたものの、それらの家臣を惨殺したためますます暴君となってしまった。

それでも政治手腕はあったようで裏社会と深いつながりを持ち、現在では他の閣僚や国王も表立っては止めることはできない存在。


その醜悪な顔と、奥さんへのDV癖は王都中で有名。



アリー・フォルト・フォン・グレーフィア

王都の軍務閥の零細子爵家の出身。かつては社交界で名を馳せた美女だったが、夫の暴行にさらされ続けた今となっては見る影もない。ユーフィリア(詩帆)の見立て通り重度の精神病で数度の自殺未遂事件を起こしている。


金髪・美しい青い目はすかっり濁ってしまったが、その美貌は確かに娘に受け継がれている。



「にしても…あなたは家族に恵まれてたみたいね」

「そ、それは悪かったな」

「いいわよ。もう怒ってはないから」

「そうなのか」

「ええ、半分わね。むしろリリアちゃんのことに関して詳しく聞かせてくれないかしら」

「バカ。俺は絶対にお前以外には手を出さないから」

「本当に?」

「神に誓ってもいい」

「……あなたがそういう意味の神を信じているとは思わないけど。まあ、妻として夫を立てましょうか」

「ふう。じゃあ次は俺がフィールダー男爵領時代に出会った人を調べていこうか」



アレクス・ガルダ

フィールダー男爵家の従士長家の次男。明るいお調子者だが正義感は強い。剣の腕は普通より若干上。マリーに恋心を抱いている。赤髪、ワイルド系の美少年。



マリー・コルド

フィールダー男爵家の経理を担当しているコルド家の長女。銀髪ストレートの儚げな美少女。性格は基本的に温厚。



リサ・ファート

フィールダー男爵家の使用人を統括している家、ファート家の次女。青い髪のロリ系美少女。普段、眠たげに見えるが、実は頭の回転はすこぶる速い。



コーラル先生(=マーリス師匠)

魔法学から政治学にまで詳しいクライスの家庭教師。フィールダー男爵家の治療師でもある。性格は温厚だが、経歴の大半が謎の人物。



マーリス・フェルナー

古代に魔人を封じたとされる七賢者の第七位。普段は物腰穏やかなフランクな良識者に見えるが、根は気分屋で短気。全属性の攻撃魔法に精通しており、戦闘能力は非常に高い。 趣味はボードゲーム。ただし根気はない。クライスの魔法の師匠。


ぼさっとした黒髪に眼鏡。顔は眼鏡をはずすとイケメン。服装はローブの下にセーターやワイシャツを着ていることが多い。



「ほんとに友人にも恵まれてるわよね」

「それはお前もだったんだろ」

「ええ、だってせっかくの魔法のある異世界なんだから、二度目の青春ぐらい楽しまなきゃ損でしょ」

「そうかい。それは良かったよ」

「なんなら話してあげるわよ」

「あっ、普通に聞きたい。ひょっとしてクラスのイケメンに告られたとか」

「そういうのも聞かせてあげるわよ」


ということで彼女の一人語りはかなり長かった。俺も中盤覚えてないから、こんど書き出しておいてもらうか、そのころの日記でも見せてもらおうかな。



「……それで、他の人は」

「結局のりのりかよ。……魔力消費激しいんだが……いいか。……ただし今夜は寝かさないぞ」

「ねえ、あなた。この状況で言ったらすごく卑猥だからね」

「……あのさ、冗談にそんなに突っ込まないでよ」

「ふふふ、はいはい。……私はどっちの意味でもいいんだけどね」

「あのなあ、さすがに俺も隣に子供がいる状況でやらないぞ」


遠い未来の夜は着実に深まっていく。

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