4(死)話 

 ――コンコン。

「もう構うなっつてんだよ!」

「澤さん、お見舞いに来たの」

「て、てめぇ! どうして家が分かった?」

「これくらい近づかないと、届かないから」

 ガチャリ。

「鍵が! ひっ! 入って来るな。な、ノブが……なんて力だ」

「こんにちは、澤さん」

「ゆ、雪村……なにやってんだ、お前……」

「これ? 台所にあった包丁を借りたの。上手く心臓にさせているでしょ」

「狂ってやがるだろ! おかしいだろ! わざわざ 自殺しに他人の家に上がり込んで、部屋まで入ってきて……。何がしたいんだよ!」

「見てわからない? じゃあ、試してみる?」

「何言ってんのか、わか……ら……、――」

「じゃあね、澤さん。包丁はここに置いといたほうがいいかな? そういえば、消防と警察、どっちを先に読んだらいいのかしら。ねえ、澤さん」

「――」

「死んだら答えられないよね。自分で調べるわ、じゃね」



 ――キーンコーンカーンコーン。

「あら、ベル」

「うわぁ⁉ い、今何か⁉」

「どうしたの? そんなにこの質問嫌だった?」

「ううん。あとえと、か、可愛すぎて怖いのかも。あははは」

「あら、なんかショックだわ。お肌の手入れやめたほうがいいのかな」

「ごめん、変なこと言って。トイレ行くから、ごめん」

「あ、京谷くん」

 何だったんだ、今さっき頭に流れてきた会話は? 俺の妄想? 違う! 俺はホラーものとかサスペンスものとか苦手で、見ることだってないのに。澤の声? 雪村の声? なんだったんだ? 訳が分からないっ。

 僕は特別教室の階に走り、そのトイレの個室に入ると、鍵を強く閉めた。雪村が襲ってくるかもしれない、そんな恐怖にかれてしまったからだ。便座にフタをして上に座ると、僕は肘を立てて顎を置いた。右に左に目が動くけれど、頭の中は真っ白だった。

 

 コンコン。

「ぅ⁉」

 慌てて口を塞いだ。

 この学校のトイレは未使用でも閉じられていてるはず。ここをピンポイントにノック? 鍵が閉まっている赤いマークを狙われたのか。

 コンコン。

 くそっ。チクショウ……。僕はここで死ぬのか。雪村に殺されるのか? でも待て、冷静に考えろ。本当にあれが現実に起こったことなのか? 全部僕の妄想なのかもしれないじゃないか。でもだったら、どうして雪村の裸じゃなくて殺しの現場なんだよ!

 

 コンコン。……ゴンッゴンッゴンッ。

 もうノックじゃない。殺意を持って殴ってきてる。なんなんだよ、僕がなにかしたのかよ! てか、雪村なのかよ、誰なんだよ。

 そうだ、誰かの悪戯かもしれないじゃないか。そうだよ、質の悪い。

 誰か確かめてやる。下の隙間からスマホで撮れば……。

 ドゴン!ドゴン!ドゴン(カシャ)!

 僕はその写メを確認した時、心から恐怖した。それが男の股ではなく、女子のパンツだったから……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美少女 瑠輝愛 @rikia_1974

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ