初クエ:出発から
僕達、戦場のアトリエメンバー四人中三人が、出発地点である城門を目指して歩いている。
最後の一人であるカリンは未だ現れる気配はない。
「三人でクエストをするとなると索敵とかは誰がする。」
「俺やライガーが動くと鎧のせいで音が出るからな、フェルト頼めるか?」
「えぇ…、うん…、まあ仕方ないね。頑張るよ。」
なんて、彼女は来ない前提の話をして城門までの道を歩いていると。城門には僕達が乗るのであろう馬車が停まっている。そしてそこには小さな人影があった、
「やあ、やあ、諸君。随分と遅かったじゃないか。」
その人影が僕たちに向かって大きな声で叫びかけてくる。まだ朝でそこまで人がいるわけでもないが、こんな場所でそんな大きな声をだして恥ずかしくはないのだろうかなどと思っていると、馬車の御者さんが子供を見るような微笑ましい笑顔を浮かべているのが見えた。やっぱり子供が騒いでるように見えるよね。
その小柄な女性は集合場所に姿を現さなかったカリンである。
「集合場所はギルド会館って言ったはずだったんだか道にでも迷ったのか?」
トレントは、僕たちと馬車の間を通せんぼする形で、偉そうに胸を張っているカリンに言った。
「いや、迷ってない!」
カリンは自信満々に鼻を鳴らす勢いで答える。
「来る途中に荷物をたくさん持ったおばあちゃんに出会ったとか?」
トレントに続いてライガーが聞く。
「いや、そんなおばあちゃんには出会わなかった。」
カリンは今度は少しムスッとして答える。
「じゃあ、忘れ物して取りに帰ったとか?」
僕が最後にそう聞くと、
「もう!私そんな子供じゃないから!」
と言って両手を大きく上下に振って、右足を音がなるほど足踏みしながら憤慨している。
「子供じゃないなら集合時間におくれてくるんじゃない。」
カリンの頭をポンポンと叩きながらトレントが言った。
「だから今回は遅れても大丈夫なように馬車の方に先回りしたんじゃん。」
叩かれたところを両手で押さえながらカリンは答える。
「遅刻する前提だったんだね。」
「なんだとぉ。」
僕の指摘に対して彼女は睨みを効かしながら即答で答える。
「ほら、お前たちも早く乗れ。」
馬車に乗りこもうとしているライガーにそう言われた。僕とカリンは顔を見合わせ二人ともクスッと笑い馬車に乗り込む。馬車に乗るとトレントはもう乗り込んでいた。
「さあ、出発しよう。」
僕達が乗り込んだのを確認しトレントは御者さんに合図を出した。すると、馬車が少し揺れて出発し城門を抜ける。
城門を抜けるとそこは一面の麦畑が広がっていて、その中を大きめの道がまっすぐ進み、ある程度距離を行くと十字路になって各所に道が続いている。
まだまだ緑色な畑を地道に進む。冬が明けて最近は随分と温かくなってきて、今日みたいな天気のいい日はちょうどいい暖かさになる。窓を開けると生暖かい空気が入ってきて、馬車の揺れと相まってすごく眠気を誘う。
ウトウトしていると右肩が突然重くなる。気になって肩を見てみると、隣に座っていたカリンが僕にもたれかかって小さな寝息を立てている。
「お前も寝ていいぞ、まだかなり時間がかかるからな。」
目の前に座っているトレントがそう言う。トレントの隣のライガーもすでに寝ているようだ。
「トレントは寝なくていいの?」
「お前たちが起きたら今度は俺が寝るよ。」
「そうか、じゃあお言葉に甘えようかな。」
正直もう視界が霞んでいた。僕はそのまま眠気に身を任せて夢の世界に入りこんだ。
生産系の僕の冒険記 伍嶋ハロ(いつしまはろ) @harotan
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