7話 モフモフ☆ルンルン
モフルンは絶え間ない攻撃を仕掛けて、俺たちを圧倒する。魔法を使おうとすれば、攻撃を受けそうになる始末。これでは、こちらの体力が尽きてしまう。俺は剣を当てることすらままならない状況だから、余計に不安になってきた。
右からモフルンが突進してきたので、避けたと思えば、味方のモフルンが突進しているモフルンの手を掴み、遠心力を使ってもう一度突進してくる。それと同時に、別のモフルンが俺の逃げ道を塞ぐように壁を作る。一体一体は1メートルくらいの高さだが、2体が重なり合えば、俺の身長を簡単に越える。
逃げ場がない。まぁ、こいつの突進くらいどうってことないだろう。一発受けても、体勢を崩さなければいいだけの話。
「おっふ⁉︎」
覚悟していたはずなのに、想像を超える強さに思わず朝食を吐き出しそうになった。それだけでなく、俺が怯んでいる間にも攻撃は飛んでくる。なんとかミルとユカノが守ってくれたおかげで、集団から暴行を受けずに済んだ。
「私たちが時間を稼ぎます。その間に水魔法を使ってほしいです」
「わかった」
俺はミルとユカノに身を任せ、水魔法を使う。
「渦巻く
その名の通り、渦を巻くような軌道の水を辺りに散りばめた。モフルンの体毛は水を吸収しやすく、濡れたモフルンの素早さは激減するのだ。素早さが取り柄のモフルンだが、濡れてしまえば弱いものである。しかし、技が当たっていないモフルンもいた。
「花の
ミルが草原に炎の花を咲かせ、水を当て損ねたモフルンたちは次々と焼けていった。
「二つの
双剣に電気を纏わせ、勢いよく横に振るう。濡れているせいで広範囲にわたって感電してき、モフルンは次々と倒れていった。
この3つの魔法だけで、9割以上のモフルンを倒すことに成功する。残りは剣で切り刻んで、モフルンの一掃を完了させた。
剣がモフルンの体を貫く時の感触は慣れないもので、途中吐き気に見舞われたりもしたが、ミルにカッコ悪いところを見せたくなかったため、踏ん張った。
「よし、と。これで最後かな」
ユカノが一息ついて剣を片付ける。モフルンの毛皮は濡れなければ質がいいらしく、剣で倒したモフルンの毛皮をいくらか剥ぎ取り、持ち帰ることにした。
「こんな感じでいいと思います。そろそろ帰りましょうか」
「そうだな。帰るか」
ちょうどお腹もすいてきて、早く帰って昼飯にしようという考えであった。
「あたいもうお腹の中が虚しくてしんどい。ねー収入源、私に昼飯奢りなさいよ〜って......何これ......」
「も、もしかして、あの『世界の創造主』と言われる......」
俺はなんのことを言っているさっぱりわからないが、なにやらとんでもない敵と遭遇してしまったらしい。
リント=ヴェルムート。世界の創造主であり、この世界で最も強いと言われるドラゴンである。魔法の原理を生み出したのもこのドラゴンだ。リント=ヴェルムートを見たことある人はただ1人で、彼の名をシャルホという。彼は人間という種族が数々のモンスターに対抗すべく、魔法という武器を作り、それを応用した。シャルホが人類最強と呼ばれるようになった数日後、彼はリント=ヴェルムートと会うことになる。
彼がリント=ヴェルムートと一戦交えた後、彼はボロボロの状態で村に帰還したという。そして、彼はリント=ヴェルムートの情報を一部だけ話し、その後すぐに亡くなった。その時の彼の情報はこういうものであった。
雲ではない、黒い影が空を覆い尽くした時、真上にはドラゴンがいた。黒く、強靭な体をしており、なんの攻撃も通用しなかった。その攻撃で私のことに気づき、喋ったのだ。あのドラゴンの名はリント=ヴェルムートと言い、こいつはこの世界の創造主だ。こいつは人間の知る魔法の概念を覆すようなやつで、誰もこいつに勝てるやつはいない。たとえ、この世の全ての生き物が攻撃したとしても、おそらくこいつには勝てないだろう。だが、安心してくれ。こいつは強いやつと戦いたいという考えだけで動いている。だから、簡単に人間を襲うようなことはしないだろう。
そんな記憶にない情報がどこからか流れてきた。これはレベルが上がり、能力が追加されたおかげなのだろうか。それはさておき、たしかに空がいつのまにか太陽の光が遮断され、辺りは真っ黒い草原になっていた。
耳がはち切れそうなほど大きな遠吠えが天から降り注ぎ、それと同時に立っていられるのがやっとというような強風が俺たちを襲う。
「お腹すいたーよ」
そんな声が聞こえた気がしたが、爆音のような音だったため、思わず耳を塞いだ。
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