第18話:再謁見

直ぐに、王との再謁見が許された。

「御揃いとなって、謁見に集まったという訳か。今度は、どのような要望に来たというのだ?命乞いをして、殺されていった村民に救ってくれとでもいうのか?それとも私をその罪に罰する為か?何れにせよ今や王位となる私の支配下となっているのだ!」ちまだ、わかってはいない王に私は、言い正した。

「何が、命乞いですか…何が支配下ですか…貴方は、未だに何も分ってはいない。人間という価値というのを見す見す塵として扱っているにしか私は想えてならない」と私は言った。「又しても口答えをするというのか!?何回言っても聞かない奴だ!そやつをこの場で八つ裂きにしてやれ!」とついに傭兵を扱って命じた。私の周りには、六人の傭兵が剣をこちらに向けて立ち並んだ。「この様に、傭兵までも汚い扱いをなさるのですか」と私は、命乞いはせずに言った。「ええい!やってしまえ!」と王は命じた。私は、傭兵達に言った。「これで、良いのか?お前達は、王の命じで、動くというのか?ベルメス大王の息子である私を殺すというのか?このまま、暗黒な世界を渡り歩こうというのか?」と傭兵達に訴えかけた。しかし、傭兵達は、一人も微動だせずにいた。態々見てみると、手足に震えを感じ、汗が一、二滴程流れているのがわかった。心が揺らいでいたと見え、相当、王を恐れているのだろう。「私に剣を向けたくはないのならば、納めなさい」と私は、傭兵を止めた。「王子は、何か悪事を働かせたのですか!?貴方方は、罪を王によって、左右されるのですか?」と姫が困った顔をしながら、言った。すると傭兵は、剣を一斉に納め始めて、跪いた。「何をしておる!?私の命令に従わないか!」と王は、焦り出して思わずその場から立った。

「ダングラース王…貴方は、傭兵を縛り、自ずから動かず、罪を擦り付ける卑劣な御方だったのですね。他の者を考慮せずに、活殺自在に支配するつもりの計画だった」と私は、王を真剣な眼差しを与えた。「黙れ!それが私の成す事だ。迷いのない正しい事をしたに過ぎん!」と焦燥感に纏わるのだった。「ベルメス大王を何故、廃除させて城外へ追放したのだ!」と私は、突付けた。「記憶を取り戻したのか…ガルディメス」と王は、驚きに溢れ返っていた。

「ベルメス王は、私と現の王女との婚約を許諾されてはいなかった。ベルメス王は、剣を向けた時もあり、憎まれていたのだ。それが私は、憤りを感じせざるを得なかった。

丁度、姫とお前の様に私が重なってしまったのだ。ベルメス王を、つい、追放させてしまったのだ。久しく老ってしまった姿のベルメス大王と再会し、改めて、法を正しくしようと思い、話し合ったが…ベルメス王は、変わろうとしなかった。それで」と王は、ベルメス王の過去を語って下さった。「それで…廃村するとは、関係がない筈だったというのに、どうして実行をしたというのですか!?」と私は、更に突付けた。「ベルメス王は、始めから、近くにいたではないか…お前と二年の間…」と王は、曝け出した。「まっまさか…!?」と姫は、口を手で抑えて、驚いていた。

 「二…二年の…間……近くに…いた?」と私の脳裏にハッキリと浮んだ人は、村長の姿だった。二年間共に過ごしたのは、村長だけであった為に、強く浮んだのだった。「道理で懐しさが滲み出たのか…」私は、目を思い切り見開いて、気狂いした様に、笑った。「

!?」と王は、縮こまっていた。私は、身体をふらつかせながら階段を一段一段と上って、とうとう王座の前へ着き、王の胸倉を掴んで、短剣を突き付けようとした。「それで、村長(ベルメス王)を殺し、村を廃村させ、私をも…」ともう私自身も止めようがなかった。

「ひぃー」ともうスッカリ追い込まれた王の顔を見たが、何も引き受けなかった。

「ここで、ベルメス王の様に死んでもらう」と私は、もう遣り兼ねなかった。すると、どこからか大きな声で「いい加減に静まりなさい!ガルディメス、ダングラース王!!」と聞えた。それは、謁見の間中に響き渡った。私は、その声のする方を見て、驚きを隠せなかった。何故なら、そこには、私の姉に辺る王女が見受けしたからだ。私は、茫然としたまま、立ち尽していた。

 「何なのですか?!この騒ぎとやらは!…姫もどうしてここにいるのですか!まったく、傭兵がスッカリと気絶してしまって」と言いながら階段を上って、私の方に向かってくる王女だった。「ダングラース王、貴方という立派な方が、どうして残酷行為を犯すのです!民衆達を考慮するのが貴方の本来、成すべき事でしょう!私が病に侵されていた中で、平和という齎しをしなかったのですか!?」と王女は、王を責めた。本当に愛し合う仲で、王は、素直に、返答した。「私は、私は…父上ベルメス王に嫉妬をしてしまっていた。重なり合ってしまった。ガルディメス王子であるお前とフィリネ姫を一時的に遠ざけようと、勲章を廃除して、父上の息子であった為にじゃったが…結局は、私も…父上のように婚約から背いていただけじゃった。すまなかった…ガルディメス王子……フィリネ姫」と王は、初めて、眼に涙を一杯に浮べ泣いて言って下さった。私には、痛感に想えてしまった。

「私は…ベルメス王(父様)を理解してくれれば幸です。ベルメス王は、ちゃんと平和が来る事を常に願っていました。私は、ベルメス王を誇りに想っています」と私は、正直な事を王に話した。「私、以前の様な優しいダングラース王が好きです」と姫も正直の事を話す。王は、手を地面について、土下座をした。それは、あの町村民を惨くあしらっていた時とは、正反対の王の顔だった。内なる優しさだった。私には、分からず、姫にだけにしか、分らない本当の王の顔であった。

「私は、もう王の資格は、ない。このように傭兵にも民にも殺めてしまった。もう取り戻す事は…」と王が泣きながら弱気で言った。「もう良いのですよ。起こしてしまった、殺めてしまった事を振り返っても、何の解決にもなりませんよ。罪を犯した分、罪を償うと共に、又、再見しなくては、一生、民や兵に怨まれてしまいますよ。再見をお願いします。」と王女は、王の手を握って悲しげな顔で言った。王は、私と姫と王女を一人一人、ゆっくりと見合わせ、様子を見て、その後に頷きました。私は、何だか、申し訳のない気持ちになってしまった。心許無かったが、肩の力が一気に緩んでしまった。何だか、永かった王の野望も王女によって打ち砕かれ、平和が齎された。王は、元の王の成すべき権利を持ち、法の再見を考え直した。互いが信じ合える平和な国にするという法を改定した。残った民は、王の法に従って、民と王家との信頼を築く事ができ、それから後に、町と村を新たに造って、大國となって平和な毎日が訪れました。

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