第16話:再び下町へ

ホープ村を後にした私は、未だに、涙を浮べて、王のいる城へ走って行く事を決めた。

城下町へ着いた頃には、村でいた時の夕暮れ時が、夜明けを迎える時だった。下町は、以前に来た時よりも更に静寂となっていた。そして、何があったのか、廃墟となっている一部の建造物もあって闘争の後のようであった。地面には、家屋の一部分の瓦の破片が彼方此方に至っていた。とても歩くのが、困難だった。

とうとう、城門の近くまで着いた。門が閉鎖されていて、中へ入る事ができない状況であった。城門の前で立ち尽していると、右傍の方から、傭兵隊がこちらに歩いて来るのが見えた。「ガルディメス王子。ご無事でしたか」と傭兵隊は、私の存在を見捨てては、いなかった。寧ろ、心配してくれていたのがわかった。「ああ、無事だ。それよりも、姫は、どうした?」と傭兵にいつもどおりに王子らしく笑みを零して、言った。「はっ!フィリネ姫は、ご自分の部屋にて、何やら元気のない面持ちでありまして…私がご案内致します」と畏まって傭兵が言う。「うむ、では、頼む」と私は、その傭兵にいつもの如く頼った。

姫のいる部屋へ向う間に、私は、傭兵に聞いてみた。

「お前の他に傭兵は、無事でいるのか?」

「いえ、大半が王に背く行為を行いまして、処罰されています。下町の者も大半が亡くなられています」と怯えながら、私に話してくれた。「そうか…話は、変わるが、私の小さな頃を知っているか?」と続けて私は、傭兵に聞いた。「はい、私の上位の隊長から、話は聞いております」と傭兵が言う。

「どのような、お方だと言っていた」と私が変な聞き方だが、真相を知る為に、恐れながら聞いた。「はっ、とても立派な方で、様々な事を積極的に行っていたといいます。いつも下町の者達を考えていたそうです。ちっ因みにですが…王子と姫様の関係をご存知ですか?もしも、喪失なされているのならば、姫様に直々、聞いて下さるとよいのですが」と何かを隠している様だった。私は、それは、勿論、王子と姫の間柄であるから、婚約関係だろうと思っている内に姫の部屋の前へやってきた。「こちらでございます」と部屋の方を指して礼をした。私は、頷いて、部屋の中へ入った。

 そこには、机の所で頭を覆って悲しんでいる姫の姿だった。姫は、私の姿を見て、信じられない顔をして、もうボロボロと涙を流しながら、こちらに向って来て抱き着いた。泣き弱りながら「ご無事でよかった」と繰り返して言った。

少し涙ぐむのが無くなってきた頃になると、私は、姫の顔を見ながら言った。「私は、姫と何の関係だったのか…教えてくれ。その事をもう何年間で、喪失してしまっているようなのだ」と、「わかりました。全てを話しましょう。以前に貴方様に語った話は、メイドからの証言でしたが、私自身が知る上の事です」と昔の幼い頃の話をし始めた。

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