第7話:部室の中で

時折、窓から灯がチラッとうつるのが見えた。その灯は、提灯の様に見受けられた。どこか、心地好く、懐しさが甦る様であった。

丁度、窓外には、城の一部の敷地内で、王の謁見へと繋る所であったが、灯は、恐らくは、番兵が行ったり来たりと、見張りをしていた。

暗中で誰かが窓外の近辺を歩いていく、草叢の音が耳を澄ますと聞えて来た。その音は、中途に足を止め、何者かが包紙を私の部室内に入れたのがわかった。何故かというと、その紙が落ちる音に、私は目が覚めたからである。直ぐ様、何者かは走ってどこかへいってしまったようだった。

やはり夜になると、とても暗いのがわかった。コンクリートであったために、余計に暗く感じた。只、昼の時に勇気付けられた灯の様に何者が窓から入れた包紙だ。この包紙だけが、そうであった。それは、悲しい事なのか、涙が出始めた。もどかしさと情けない悔しみが重なりに重なった悲しみだった。私は、暫くは、涙が止まらなかった。

王の秩序の無さと自己中心的な考え、羞恥心の欠片もない法と定めが、私の涙腺を震わせた。

その後の私は、スッカリ眠ってしまったのか陽の光りが窓から照らされていた。

気が付くと、包紙に光りが照されていた様であった。その紙を私は、漸く、手に取って開き読み始めた。

「この手紙を読んで下さる私の知らない方へ」とそれは、どうやら姫の書いた手紙だった。思わず驚いてしまって、戸惑いを隠せなかった。だが、続きが気になって再び、読み始めた。

「私は、王族の媛のフィリネプリンセスと申します。今日迄に、私の父上に当る王のダングラース王は、今や本来の私の知る王ではなくなってしまわれてしまいました。どういった事であったのか、私にも詳しい事が把握しておりません。村人、町人の方々を縛り、世界征服を企んでいるのは、確かだとは思われます。若しも、貴方様が、私の知る方であったのなら、明日の夜に、灯る青い火を合図変わりとして、その手紙で示す鶴を折って下さい。然為れば私は、御助けします。私の地位羞いだとしても、善悪共に私が信じます。

どうか、止めて下さい。王の処罰に値する行為を止めさせて下さい。若しも、あの方であれば…」と手紙の内容は、そこで終っていた。

 「あの方…であれば…?」とが疑問として浮かんだ。

とりあえず、合図が来る前に、急いで、鶴を折ろうとしましたが、どうも折り方がわからずに、折っては悩み、折っては、又戻しの繰り返しをしていた。

結局の事、折る事を止めてしまった。その手紙は、もうクシャクシャになってしまっていた。もうダメだと私は思った。でも、姫の一字一字が、とても何でだか、前に一度か二度、会った様に知る者であると私は、不思議にも思った。記憶が私の名前であるカートスのみだった。そう、喪失している事には、間違いは、なかった。

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