第5話:決心と恨み

家に戻って来てもノソノソと床の上を歩く時の軋む音が、父さんの思と重なって、余計に、心苦しく想えた。どうして廃村なんか、廃村なんか…と頭中で巡らされた。

私がベッドで寝る時でも中々、寝る事が出来ず、寝返りを繰り返し、ついには、ベッドから出てしまった。そう、王が父さんに告げた3つの事柄が脳裏にあって、恨みだけが募るのだった。その怒りで思わず村外へ出て行ってしまった。

ふと、夜空を見上げると、星の輝かしさが、城外で目当りに姫がいて、非常に悲哀を訴えていた事を思い出して、照らしあってしまったのが、私の心を揺さぶった。

「あれは、間違いなく、王は、大きな失態をしてしまっている事を思い兼ねずに、助けを私自身が誰かに訴えかけていたSOSで、最初最後だった大祭会なのでは…もう二度、起さないフィナーレの姫と町外の村人達へのフィナーレの祝いであったのか…。それで、町の人達は、姫の幼気な感情と優しさを笑みで隠し、貫いていたのか!!王の思いのままに、支配下の弱き地位者へのフィナーレパレードを見せつける仕舞だったのか。なら何故、町人は、止めなかったのか、町人は、王を止める事の権利があってもおかしくはない筈だ!地位の違いで、定めの掟に反しては、いけないと思ったからなのか!」とフツフツと怒りか震蕩して来た。もう私の心は、王への怒りしか思いがなかった。自分自身でさえ、止められなかった。

町へ着いた頃には、私の震えが治まり、ヨロヨロと四時間、歩いて来て、疲労困憊寸前であった。勿論、町の人は、外には、無用心な為、朝であっても昼であっても、外に出る気配とやらが見当らなかった。私がヨロヨロと歩いて城へ向う姿を女の子が見ており、じーっと怪しくはないかと思いつつも近寄って来るのが見受けた。

「お兄ちゃん…」と声を震え声で言った。

私の眼付きは、尋常ではなく、怨敵の感情で一杯になっていた為、近寄り難かった。

女の子は、一歩下り、又「お兄ちゃん…外でウロウロとしていたら、ダメだよ…入って来て…家に」とやはり震えながらかけた。

私は、一旦、我に返って、現実の事を思いながら、恐る恐ると女の子の家に招いてくれた。中には、一般家庭の物が村とは違い、寒い冬を越す為の暖炉や寝具、キッチン、全てが珍しかった。

村にあった物となると比べようがなく、寝具と囲炉裏、薪ぐらいで、町と村とでは、民衆の地位も違った事が私にはわかった。

奥の方から、女の子の母親らしき人が出て来て、「随分と、ボロボロになって、…ちょっとここの椅子に腰を掛けて下さいよ」と気を遣って下さった。

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