第6話 初めての魔物
「・・・で、ここは私が元居た世界とは別の世界で、リールザルン王国だと・・?」
「そうですそうです。あ、そこ気をつけてください。サンダーフロッグです。踏むと感電します。」
「うわっ。」
先ほど居た場所から歩きながら色々な事を聞いている。
なんでもこの世界では魔物が出るらしく。
今足元にいる黄色と黒の縞模様の蛙、
サンダーフロッグなんかは自ら刺激しない限り比較的安全なようだが、
中には人を襲う獰猛な魔物もいるらしい。
そういった魔物を討伐することを生業としている人もたくさんいるようだ。
この世界では魔物の素材がいろんな分野に活かされており、素材を売却し生計を立てるのだそうだ。
「・・・・私、元の世界に帰りたいんだけど・・・どうすれば・・・」
「そうですね・・・。なぜ、強制転移されたのか気になりますが、とりあえず王都に向かうしかなさそうです。王都には転移魔法が使える賢者様のお一人がいますから。」
そうか、転移魔法は確か誰でも使えるわけじゃないんだっけ?
それはもう、その人に会うしか元の世界に戻る方法はなさそうだ。
「その王都には、どれぐらいでつきそうなの?」
『ふむ、このペースでいくと早くて二週間ほどかの?』
先程から前方をフワフワと浮遊している本、もといアグニラがくるりと表紙側をこちらに向けた。
あ、そっち前なんだ。というか前とか後ろとかあるんだ。
『む、お主今何か失礼な事を考えて』
「えっ!二週間もかかるの!?」
危ない。アグニラには人の思考を読む能力でもあるのかな。
それにしても今はもっと大事なことがある。
『むむむぅ。 そうじゃの。ざっとそんくらいじゃな~。ま、この先に街があるようだし一旦そこで休憩してはどうかの?』
アグニラはさっきの事をまだ怪しんでいるらしいが、街での休憩を提案してきた。
こっちとしても少しゆっくりしたいし、何より今は少しでも人を見て安心したい。
っといっても会えるのは異世界人なんだろうけど。
レイナも安全面を考えて街に向かうのは賛成のようだ。
「じゃ、その街に向かおうか。アグニラ、道わかる?」
『うむ。任せておくのじゃ。」
そう言ってまたくるりと今度は裏面をこちらに向けてフワフワと前方を浮遊している。
やっぱり・・・あっちが後ろなんだ・・・。
『む?』
あ、ちょっとだけ表紙がこっち向いてる。
咄嗟に周りの木々に目線を変えた。
改めてよく見ると。
大きく育った木々の周りに青白く光を放った虫がたくさん飛び回っており、その光の残光が辺りを青く照らしている。
とても幻想的で綺麗だった。
『人の手の入っていない森なんかは魔素が濃いからの。虫なんかも活発なんじゃろーな。」
「へぇ~。」
『それにお主。もう気分は大分良いだろう?』
そういえば、初めここに飛ばされて来た時のような頭がクラクラする感じはすっかりなくなっていた。
それどころか、逆にスッキリしているくらいだ。
ずいぶん歩いたと思うが、それほど疲れも感じないのだ。
『ま、初めて取り入れた魔素がこの濃さならの。気分も悪くなるというもんじゃ。 大方、魔力回路がようやく完成したというところかの?』
「うーん、よくわかんないなぁ、確かになんか体がスッキリしてるような気がするんだけど・・・。」
困惑していると、レイナが助け舟を出してくれた。
「つまり、お客さんの体が、魔素を取り入れて、魔力に変換できる体に変わっちゃったーってことですよ。」
「な、なるほど。じゃあ、私も魔法使えたりするのかな?」
「属性魔法は自分が適正がある属性の精霊様に加護を頂かないと使えませんが、無属性魔法なら練習すれば使えると思いますよー。」
魔法が使える。
そんなおとぎ話のような事、考えてもなかった。
嬉しいような。複雑なような。なんとも言えない気持ちになる。
でも少しだけ、ほんの少しだけ、心がワクワクした。
『くっ! 出来るだけ悟られぬように進んでおったつもりじゃがの・・・。簡単には抜けられぬか。』
突然前方を浮遊していたアグニラが呟いたと思えば立て続けに大きな声を発した。
『来るぞ!!お主ら気をつけよ!!」
何が?そう問うよりも自体は早く動いた。
近くの草木からザザッと何かが動く音が聞こえたと思った瞬間。
ザシュ
目に止まらぬ速さでソレはこちらに向かって来ていた。
「ロックシールド!!」
咄嗟に聞こえたその声と共に大きな岩壁が地面から出てきた。
ガンッ!!!
「ガッ!?ガ・・・ゥ・・・」
自分達を覆いつくす程の大きな岩壁そしてその向こう側では何かが勢いよく衝突する音と小さくうなり声が聞こえた。
『ほほー。やるのぉ小娘。お主は土属性持ちじゃったのか』
「は、はい。あと水属性も持ってます。」
『なんと!二属性持ちじゃったか! にしても水属性じゃと・・・ブツブツ・・・いっそ塗り替えて・・・ブツブツ・・・』
水属性という言葉にアグニラが何やら反応してブツブツ一人でつぶやいている。
この土壁はレイナの土魔法で作り出したらしい。
突然現れた何かからどうやら守ってくれたらしい。
「怪我はないですね?お客さん。」
「うん。ありがとう。なんだかわかんないけど助かったよ。」
「いえ、まだです!」
そう言うとレイナが構えなおす。
ガラガラガラ
先程作り出した土壁が土煙を上げながら崩れていく。
煙で視界が悪い中
獰猛な動物の様な声がする
「ガルルルゥゥゥゥ」 「ヴゥゥゥゥ゛ゥ゛」
やがて立ち込めていた土煙も消えその声の主が姿を現した。
3mくらいだろうか。
自分たちの倍くらいはあるだろう大きな体の狼が、牙を剥きながらぐるぐると自分たちの周りを円を描くように回っている。
その数5体。
「なっ!?でっかい!!」
「狼種の魔物です。完全に囲まれてしまいました! ですが・・・ッ!」
ガウゥゥゥ!!!
話の途中で狼の一匹がこちらに飛び掛かってくる。
「ウォーターカッター!」
レイナが言葉を発すると同時に透き通った水で作られた
大きな刃が勢いよく飛んでいく。
「ガッッッ!!!・・・・・―----ッ」
突如飛んできた水の刃を避けようとした狼だったが避けきれずその大きな体を真っ二つにされ
一瞬でこと切れてしまった。
「よし!まずは一匹ですッ! 大丈夫ですよお客さん。 お客さんは私が・・・絶対に守ります!」
そう力強く宣言したレイナは再び構えなおす。
魔法の威力を初めて知って呆気に取られるエマの隣では、
『おぉー!!!良いぞ良いぞ!小娘!! まぁ・・・水属性というのがちょいとしゃくじゃが・・・やはりこやつの属性を塗り替えて・・・ブツブツ・・・うむ・・くふふ・・・・』
っとブツブツ怪しい笑いが漏れているアグニラが浮遊していた。
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