■第8話 プリンセスメイデル(5)


●5




 かくして巨蛇から切り離したフランヌの下半身を、腕を生やしたときと同じく【大回復{ビッグヒール}】で再生してやった。すぐには目を覚まさなかったが、構わずポルテに背負わせて、俺たちは豆の木の巨大な葉に乗り込んだ。


 ゼロはもう、転移魔法で追いかけてくることはなかった。

 俺がヤツを圧倒したから、慎重になったのかもしれないが……単純にこっちがフランヌを取り戻したため、ここまで跳躍してくることができなくなったか。


 やがて俺たちは地上に出る。そこはちょうど入って来た階段のあった、ダンジョンの入り口だった。下へと向かう階段を押し破る形で豆の木は伸び、地上ではぐにゃりと曲がって地面に垂れる。

 必然的に動く葉の角度も変わり、俺たちは飛び降りるまでもなく、草地の上に滑り落ちた。俺もマリアも、フランヌを背負うポルテもうまく着地したが、女神だけが無様に尻餅をつく。


「きゃうっ! い、痛いですわああ~~~、うう」


 涙目になる女神だが、その声でフランヌが意識を取り戻した。


「は、う……フランヌ、ちゃん、は?」

「起きたですか!」


 ポルテがそっとフランヌを下ろせば、全裸にいつぞや女神が使っていた白い襟巻きを巻いただけのキメラ娘が、自分の足で大地に立った。

 と同時に、自然と簡易ステータスが現れる。


 気絶からの状態が変化したことを示すものだが……なんだ?

 俺は一目でぎょっとさせられた。


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【フランヌ】LV20

HP:401/401

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「どういうことだ! フランヌの数値が、おかしいぞ」

「え、なに? あれえ? 名前も、キメラ巫女とかじゃなかったっけ?」


 マリアも気付いて首を捻る。それどころか「??」だったレベルが20になり、2万以上もあったHPがだだ下がりだ。


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名前/種族:フランヌ/キメラ

年齢/性別:??/♀

ジョブ/ランク:??/?

LV/属性:20/従

HP:401

MP:???

AGI:87

LUK:38

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 詳細ステータスを確かめれば、明らかにおかしかった。攻撃力{ATK}も出なければ防御力{DEF}の表示もない。しかも属性が「従」だって?


「完全に非戦闘キャラだぞ、こいつは……」

「あー、つまりバグったってことじゃないの?」


 一緒に目を通すマリアが結論を口にした。


 確かに……これだけ「?」が多ければ、そうとしか考えられないが。


「クライの蘇生魔法はやはり、この世界では禁忌なのですわ。ポルテが記憶を取り戻して変化したように、フランヌの場合はその逆が起きたのでしょう」


 説教臭く語るのは白の女神シルヴィーナだ。


「あのゼロから切り離した影響があるのかもしれませんが、転生を伴わない生命の循環は、不安定なのですわ!」

「あのう、フランヌちゃんは……」


 フランヌが申し訳なさそうな顔をしているが、知るか。


「いいのですよ。あなたはもう、戦わなくて」


 そっと女神が抱きしめた。

 ポルテのときと違い、女神の弱体化は起きない。やはり別種のバグなのだろう。


「フランヌちゃんは、フランヌちゃんは……あーーーーーーん!」


 頬を濡らしてすがりつき、フランヌはわんわん泣いた。


 あれだけ強かった彼女の面影はもうどこにもない。

 手駒として使えば便利そうだったが、まあいい。どうせ俺はソロプレイが好みだ。


 しかし俺の手をそっと握るのは、寄り添うポルテだった。


「ポルテはずっと、ご主人様のお側にいるですから。大丈夫ですよ?」

「……そうか」


 気の利いた言葉が返せない。コミュ障だからな。ともかく、事態はようやく一段落ついた。その証に、俺たちの頭上に大きな表示が現れる。


【契約依頼が果たされました】


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【依頼契約】――達成――

履行者:白魔道士クライ

達成条件:ウェスタ王国領域にいる邪神勢力のボスの撃破

成功報酬:5000000G+プリンセスメイデル×1

依頼署名:プリンセスメイデル

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 ゼロは倒せなかったものの、ウェスタ王国のイベントはヨルムンガンドとそのダンジョンを潰したことで、無事に達成できたらしい。


「今回はこれでよしとしよう」


 ほら、と俺はマリアを促した。


「とりあえず王都に帰るぞ。わかってるな?」

「あー、アタシの魔法の出番ってわけね。はいはい」


 マリアは自分の【魔法】リストを呼び出して、【帰還跳躍{リターン}】を選択する。

 そして俺たちは一瞬で、ウェスタ王国の首都へと転移するのだった。



          ◇



 ゼロのことはともかく、王都では領土内の魔物を一掃できたことで、またもや大宴会が催された。


「んーーーーー! 美味しい料理に、美味しいお酒! たまらないですわああ♪」


 さっそく女神が酔っ払い、喜びに沸くゴルドラやアンジェリカに絡んでいる。


 王城の大ホールは大盛り上がりだ。以前と同じく冒険者たちも城内に入れ、またもや薬命酒{エリクシル}が振る舞われる。

 しかし、やはり俺は大勢の前に出るのが苦手だ。


 だから勇者であるマリアを、祝福するメイデル姫のもとに押しつけてきた。


「ちょっと、クライくーーーん!?」

「ポルテ。逃げないように捕まえておけよ」

「はいです、ご主人様!」


 ポルテに命じればしっかりマリアの腕を掴み、姫のいるホールの壇上に引き留める。

 そしてまた、メイドたちが群がってたくさんのドレスを持ち寄ってきた。

 今度は一回り小さな、明らかにポルテ用と思しきものも混ざっていたようだが……。


 どうでもいい。俺はそそくさとこの場を離れる。また時間を潰すため、適当な部屋にでも隠れておくことにしよう、と決めた。


「あの、クライっ。今、よろしくて?」


 だがそこをメイドの1人に見つかってしまう。


 面倒だなと思ったが……その相手を見て俺はぎょっとさせられた。


「お前、フランヌか?」

「はい。ど、どうかしら、これ」


 はにかんでメイド服のスカートを持ち上げたのは、つぎはぎが顔に残るキメラの少女だった。


「人手が足りないから手伝いなさいと頼まれましたの。確かに、罪滅ぼしにこき使われるのも道理だと思って、引き受けましたのよ。……よくって?」

「王国側がお前を受け入れた、ということか」


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【キメラメイドフランヌ】LV20

HP:401/401

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 確かにフランヌの身柄は騎士隊長のゴルドラに預けたが、まさかこうなるとは。簡易ステータスで確認すれば、肩書きもしっかりと変更されている。

 まあ、今のフランヌは完全に無害なNPC{ノンプレイヤーキャラクター}だからな。


「あなたのもとに身を寄せることも考えました。でも力を失ったフランヌちゃんにできることは、こうして奉仕することだけでしょうから……」

「好きにすればいい」

「ええ、そういたします。今はこの国のために働きましてよ。それもクライにいただいた、この体あってのこと。感謝していますよ……誰よりも。だから、ほら」


 頬をそっと赤く染め、フランヌが俺に寄りかかる。


「おかげでフランヌちゃんのアソコ、新品になりましてよ。お試しになられます?」

「なに?」


 俺の手を取り、スカートの中に導いてきた。

 確かにフランヌの下半身は、俺が魔法で再生したからつぎはぎのないきれいなものだ。白タイツを穿いた太股に指が触れ、その滑らかさにぞくりとした。


 いきなりフランヌとの2回戦の始まりか。


「ふふ、でも今日は先約がいらっしゃいますので、フランヌちゃんはまたの機会に」


 だが一番大事な箇所に届く前に、フランヌがするりと離れた。


「先約?」

「ええ。フランヌちゃんはクライを呼びに来ただけでしてよ。おわかり?」


 恭しくお辞儀をして、フランヌは王城の奥へと誘う。

 その動きはもうすっかりメイド然としたものだった。



          ◇



 誰が俺を呼んだのかは、だいたい予想がついていた。なにせまだ、依頼を果たした報酬を受け取っていないからな。


 俺がフランヌに通されたのは、見覚えのある一室だった。この王城の、最上階に位置する広すぎる寝室だ。

 メイデル姫の寝所であり、かつてフランヌが暴れ回った場所でもある。


 だがその破壊の痕跡はもう、すっかりきれいに片付けられていた。

 ここで俺はしばし1人で待たされる。


「呼び出したのに支度に手間取ってしまった。まずは非礼を詫びよう、冒険者クライよ」


 そして寝所にやって来たのはもちろん、あのメイデル姫だった。


 しかしその出で立ちは、さっきまで着飾っていた煌びやかなドレスではない。

 半ば透ける素材でできた、フリルのあしらわれた豪華な肌着だ。長い金色の巻き髪も、今は後ろでひとまとめにされている。……どうやら湯浴みをしてきたのだろう。ほんのりと肌は上気し、側まで近づいてくるととてもいい匂いがした。

 石けんや花の匂いとはまた違う、華やかな香水の香りか。


 抱かれる準備をしっかりしてきた、ということだろう。

 なにせ今回の報酬は500万G{ゴールド}もの大金と、メイデル姫本人だからな。


「Gもまだであったな。受け取るがいい」


【5000000Gを手に入れた】


 差し出したメイデル姫の手から輝きが俺に移り、Gの譲渡が完了する。


 さあ、あとはヤるだけだが。ふふふ、と余裕の表情を浮かべるのは姫だ。

 そこに俺は違和感を覚える。おそらく姫にとってこれは、初体験になるはずだが。


「待ちわびていたのか、メイデル」

「うん? そうであるな。なにせ余を抱きたいなどという酔狂な者が現れ、約束を果たしてしまったのだから」


 姫は自分から、天蓋付きのベッドへと上がった。その上で立ち上がり、俺を見下ろす。


「大臣どもはまだ渋っていたが、そなたは勇者とともにこの国を救ってくれた英雄だ。余の体で喜ばせることができるのなら、安いものよの?」


 そして自分から肌着を脱ぎ出した。こいつ、単にエロいだけか?

 恥じらいがあった方がいいが、そういうのも悪くない。俺も白ローブを脱ぎ捨てた。


 その頃には姫の、そう大きくはないが形のいい美乳がさらけ出され、薄紅色の乳※が丸見えとなった。だが……俺はとんでもないものを目の当たりにする。


「なんだ、それは?」

「見ての通りであろう。貞操帯だ」


 すべてを脱いだメイデル姫だったが、その下半身に装着していたのは、鍵のついた鋼のショーツだ。完全に秘所はガードされていて、それを誇らしげに見せつけてくる。


「すまぬな、クライよ。余は王族なのだ。王国繁栄のため、国王として見初めた相手と添い遂げるまでは、清い体を維持せねばならぬ務めよ。よってこの鍵は外せぬぞ。それ以外の箇所ならば、好きに触れることを許そう」

「お前……」

「ほれ」


 笑みを浮かべてメイデル姫が、真っ白な足を持ち上げて、俺の前に伸ばしてくる。


 舐めていいという意味か。この上から目線、さすがは王族というところだろう。

 攻略難易度Sクラスと噂されるだけはある。やっとのことでこいつとエロイベントに突入しても、本番はできない仕組みになっているのか。


「……気に入らないな、まったく」

「ほう。ではやめるか、クライ? そなたからそう申し出るのならば仕方ないことよの」


 意外でもなんでもない様子で姫が足を引っ込めた。


 そうやって何もさせずに終わらせる、というのが本来の目的か。

 一国を預かる姫としては強かで、さすがだ。けれども相手を間違えたな。


「その貞操帯さえ外してしまえばいいのだろう? たぶん、簡単に壊せるぞ」

「ふ。これは王家に代々伝わる、余が幼い頃から身につけている代物ぞ。壊せるものか」


 乳※を揺らしてメイデル姫がふんぞり返る。


 いいだろう。その態度……思い知らせてやる。


「これでどうだ。【成長促進{バースト}】」


 俺は白い魔法の輝きを、貞操帯に向けて放った。

 古びた金属製のそれに、わずかながら錆が浮いていたのを見つけたからだ。


 植物の種さえ爆発的に成長させる魔法だ。錆も例外ではなかったらしい。

 瞬く間に貞操帯の金属が浸食され、赤茶色に染まると、ぼろりと崩れた。鍵どころかすべてが腐食し、姫の足下に落ちる。


「な、なっ……なんだと!? きゃあーーーーーーー!」


 髪と同じ金色の下の毛がさらけ出され、かわいらしい声を上げてメイデル姫が大慌てで蹲った。真っ赤になって大事なところを手で隠す。


「そなた、なんてことを! 見たか、見たのか? ぶ、無礼であるぞ! 手打ちに……」

「物騒なことを言うなよ。挑発したのはそっちだぞ」


 今度は俺が迫る番だ。服をすべて脱ぎ捨てて、大きくなった肉棒を見せつけながらベッドに上がった。


 間近でこれから自分の中に入ってくるモノを見せつけられ、初めて姫が青ざめる。


「まさか、余を※すのか? 冒険者ごときが、王国の姫を!」

「それがお前の交わした契約の報酬だろ」


 そして『エムブリヲ』では報酬の支払いは絶対だ。


「だっ、誰かおるか!」


 姫が声を張り上げたが、外から警護の者が押し入ってくる様子もない。皆、酒宴で出払っているのだ。


「そんな、い、いやあっ!」

「うるさいぞ」


 今までの態度を改めさせてやる。俺の中で暗い情熱が湧き上がった。反射的に振るうのは、剥き出しの肉棒だ。

 ぺちん! と姫のきれいな頬にぶつかり、いい音を出した。


「きゃあっ!? ……な、なんたることを!」


 まだ生意気に睨んでくるが、今度は反対側の頬を竿でぶった。

 いわゆる「お※ん※んビンタ」というヤツである。


「あうっ! はうっ!」


 そのたびにメイデル姫の目に恥辱が混じった。さほど痛くないはずだが、こんなこともちろんされたことがないのだろう。一振りごとに姫の心が屈していく。


 いいな。萎え気味だった俺の一物も、すっかり硬くなっていた。


「もういいか。さあメイデル、お仕置きの時間だ。俺に懇願しろ」

「よ、余は……でもっ」

「姫だとか関係ない。今のお前は、ただの俺の肉オ※ホだ」

「肉……? お※ほって、いったい?」

「好きに突っ込まれるだけの、生きた穴っていう意味だな。ほら、股を開け」

「あ、ああ、そんな……!」


 姫がベッドに力なく横たわり、仰向けのままついに手をどけた。言われたとおりにだらしなく開脚する。


 だが俺はそのとき見抜いていた。いつしかメイデル姫の表情は緩み、誰の侵入も許したことのない縦筋も、すっかりいやらしい液で濡れそぼっていた。

 観念するどころか、初めて屈服させられたことで、あっさり陥落したのである。


 ……俺はそれが面白くない。だから、硬い先端をあてがったのは、濡れた筋の下で締まる蕾だった。


 この『エムブリヲ』はあくまでゲームであるためか、食べても出す必要がない。

 なのに、なぜどの女キャラにも尻※があるのか。

 それは突っ込むためだけの、もうひとつの場所というわけだ。


 めりめりっと蕾を割って、俺は姫の「後ろの初めて」を奪った。


「あぐううっ!? そ、そこではな……おふうぅんッ♪」

「こんな穴で感じているのか? まったく、とんでもなくいやらしい姫様だな!」

「あはあああん♪ い、言うでないっ、クライ~~~~~!」



 ――メイデル姫は快楽に溺れ、ついには「アヘ顔」を晒すのだった。

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