■第6話 キメラ巫女フランヌ(2)


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 寝かされたフランヌの体は、全裸だった。鉄製のベッドから伸びる革ベルトの拘束具が首と腰、足首に絡む以外は、乳房もわずかに生えた下の茂みも丸見えだ。


 しかし、あまりエロさは感じられない。

 その肌に生気が感じられないせいか、作り物っぽく見えるからだろう。


 ……失われた両腕や翼に角以外は、もともとの彼女の体のパーツのようだがな。

 あちこちつぎはぎの跡があるものの、つんと上を向いたその乳※は、左右の大きさが同じだった。


「フランヌちゃんの体に見とれていますの? ふふ、美しいでしょう」


 そのフランヌは見られているのに羞恥を感じることもなく、むしろ誇らしげだ。


 はあ、と溜息を吐くのはイオリだった。


「終始、このような感じなんです……。最初はゴルドラさんたちが尋問をしていたのですけれど、辱めても効きませんし。痛めつけてみても、やはり効かなかったんです」

「ふっ。フランヌちゃんの体ほど完璧なものはございません。痛みも感じませんし、見られてもなにを恥ずかしがることがありましょうか」

「それであたしが呼ばれて、いくつか薬品を使ってみたんですが、効果がなくて……」

「命なきこの体に薬など、まさに滑稽というもの! 効くはずもありません。ふふふふ」

「……それで次は俺の出番、というわけか?」


 こういう流れでフランヌとのエロシナリオに入るのか。

 それはいいが……呼ばれた理由が納得できない。頼られても白魔道士{ヒーラー}の俺は、アンデッドに対する浄化魔法のひとつも習得できていないのに。


「僧侶{モンク}か神官{ビショップ}が呼ばれるならわかるが。イオリ、どういうことだ」

「それは、あのう……。クライさんを呼んだのはあたしじゃなくて、ですね。そのう~」

「このフランヌちゃんが呼びつけましてよ、クライ。よしなに」

「はあ?」


 意外な答えに驚けば、フランヌが目配せする。


「あなた相手ならば……考えてもよい。そう言ってみたのです」

「そ、そうなんです! だからクライさんなら情報を聞き出せるかなって。それで慌ててアンジェリカさんに頼んで、出向いてもらったんですよ。お願いします!」

「まったく、御しやすいこと。本当にこのフランヌちゃんが、すべてをしゃべると思ったのですか?」


 だがフランヌはくすくすと嘲笑った。


 えっ、と俺に頭を下げたイオリが固まる。


「ど、どういうことですか? だってクライさんを呼べば、話してもいいって!」

「ただの暇潰しの戯れというものですよ。フランヌちゃんがまともにあなたごときの相手をすると思って? まったくもって愚直ですね」

「そんな……! ひどいですっ」

「まあ、それでもこの男と2人にしてもらえれば、話してもいいかもしれませんことよ」

「え……あ」

「イオリ、外に出てろ。呼ぶまで戻ってこなくていい。こいつはやっぱり俺に用があったみたいだ」


 エロシナリオに突入する前準備だな。


 イオリは素直に従って、そそくさと拷問部屋を後にした。分厚い扉が重い音を響かせて閉じる。これで邪魔者は消えた。

 さて、エロシナリオ……といきたいところだが、その前に情報を聞き出さないと。

 フランヌとのHイベントは、あくまで情報を得たことへの報酬だからな。


 しかし白魔道士{ヒーラー}の俺に、どうやって尋問しろというのだ?

 どうせ普通に訊いたところで話す気なんてないだろうに。


「ねえ、白魔道士{ヒーラー}クライ。フランヌちゃんを殺しなさい」

「……なに?」


 いきなりとんでもないことを告げたのはフランヌだった。

 また適当にからかってるのかと思ったが、鉄のベッドに拘束されたまま、俺を真っ直ぐ見つめてくる。その眼差しは今までの態度とは打って変わって、真剣そのものだった。


「あなたなら、あの武器を使えばフランヌちゃんの頭を潰すことくらい可能でしょう? さすればさすがのフランヌちゃんも死ぬでしょう。よろしくて?」

「待て。なんでそんな話になる?」

「だってそのためにフランヌちゃんは、あなたを呼びつけましたもの。おわかり?」

「お前……」

「フランヌちゃんがあの方について、あなたたちごときに話すことはございません。そんな背信行為をするくらいなら死を選ぶというわけです」


 フランヌはそのまま静かに目を閉じる。


「さあ、いつでもよろしくてよ。死への恐怖など微塵もございません。もとよりあの方に作られたこの身に、最初から失う命などないのですから」

「……怖くない、だと? いいだろう」


 俺は反射的に、リボルバーショットスタッフを呼び出していた。


 空中に現れた長い杖を手にして、鉄のベッドに横たわるフランヌに狙いを定める。

 が、無骨な先端を叩きつけるためではない。リボルバーショットスタッフは打撃力だけでなく、魔法攻撃力{MATK}+100の効果も持っている。


「なら生を教えてやる。【復活{リザレクション}】!」


 杖から白い魔法の輝きが放たれ、両腕のないフランヌの体を包み込んだ。


 禁忌の蘇生魔法だ。ポルテのときは一発で成功したが、さてどうだ?


「ん!? なっ、はうっ!」


 びくん! とベッドの上でフランヌの体が跳ねた。


「なに? いったいなにをなさったの、白魔道士{ヒーラー}? ……がはっ、ごほっ!」


 困惑とともに目を見開くと、すぐに咳き込む。

 うまくいったようだ。心臓が動き出したのか、つぎはぎだらけの肌が明らかに血色を帯び始め、呼吸も始まったようだ。


 けれどもそれはフランヌにとって初体験なのだろう。鉄のベッドから起き上がろうとして、首の革ベルトが絞まり、苦しそうに息を詰まらせた。


「な、がっ……きゃああああ! 冷たいっ!? い、痛い! 痛い、痛いぃぃ~~~!」


 フランヌはいきなり泣きわめく。ベッドの上で裸の体を震えさせ、がちがちと歯を鳴らした。

 どうやら初めて感覚を覚え、鉄のベッドの寝心地の最悪さを知ったようだが。


「冷たい? 痛い? ふん、初体験にしては知ってるもんだな。いや、それはお前が死体になる前の、体が覚えていた感覚か」

「く、苦し、いぃ……! あなたっ、こんな……フランヌちゃんになにを!? ひいぃ!」

「お前を生き返らせたんだ。死を選ぶ? 怖くない? その口でもう一度言ってみろ」


 がん! と俺は両手で握ったリボルバーショットスタッフを、彼女の頭の真横にぶつけた。

 思い切りではなかったが、それだけでフランヌは恐怖に顔を引きつらせ、いっそう暴れる。声を上げようとしたものの、ベルトで首が絞まってそれどころではないらしい。涎でべとべとになりながら、かひゅうっ、と息を漏らすのがやっとだ。


 ざまあみろ。俺は本気で頭にきていた。


 ……死を、実際に体験したことがあるからだ。こうして『エムブリヲ』で転生できたが、リアル世界で最後に俺へ迫って来た、あのトラックが忘れられない。

 特にマリアが来たせいで、嫌でも思い出させられた。


 それにな、転生システムが組み込まれているものの、この『エムブリヲ』は死なないようにプレイするゲームなんだよ。


「力がないヤツが死ぬのはいい、自業自得だ。だがな、自分から生を放棄するのはむかつくぞ。死ってのはな、とんでもなく……痛いんだ」

「ああ、あああ……痛い痛い、痛い痛い痛いのーーーー! 腕がっ、腕があああーーー!」

「なんだ、今頃か」


 俺が痛みを教えるまでもない。フランヌはどうやら失った両腕の痛みに焼かれているようだ。

 全身から汗が噴き出し、ぽろぽろと大粒の涙をこぼす。肘から先を失ったために拘束を逃れた、ぞんざいに包帯が巻かれただけの2本の腕を、ばたばたと振った。


「た、すけ、て……! フランヌちゃん、死んじゃいます! 嫌っ、嫌あああああ!!」

「助けて? へえ……殺してじゃなくて、か」

「お願い、なんでもしゃべります! 死にそうなほど痛いのです! 助けてくださいましーーー!」


 なるほど、これで情報が得られるというわけか。


「無様だな。だが、よく言えた」


 【復活{リザレクション}】はレベル99まで鍛えていても、HPを最大回復まではさせないらしい。回復の表示も出ないしな。

 だから俺は改めてフランヌに【大回復{ビッグヒール}】を使用した。


【9999ヒール】


 白い治癒魔法の煌めきとともに、キメラ女の両腕に変化が起きる。包帯が自然とほどけ、ぬるりと現れたのは増殖した肉と骨だ。それらは瞬く間に皮膚に包まれ、フランヌの両腕となった。

 獅子や蛇の形をしたものではない。血色はよくなかったが、つぎはぎのないきれいな人の腕である。


「…………! これ、はっ?」


 痛みも消失したのだろう。汗で前髪を額に張り付かせるフランヌだが、ようやく落ち着きを取り戻した。生えそろった両手をかざして、細い指を動かしながら確認する。


「フランヌちゃんの、手……? こんなことが、あるなんて」

「それくらいサービスしてやる。そのぶんちゃんとしゃべってもらうぞ。お前の背後にいる、あの方とかいうヤツのことをな」

「……フランヌちゃんは恩義を忘れない女です。よくってよ」


 手が自由に使えることで、フランヌは自分を拘束する革ベルトに手をかけた。ベッドから直接伸びたそれらの金具を外していくが、暴れるそぶりは見られない。

 ポルテと同じだ。蘇生魔法で命を得た相手は、どうやら無条件で俺に隷属するらしい。


「あの方とは、フランヌちゃんを作り上げた創造主です。その名は『ゼロ』様……」

「ゼロ? 魔物の名前にしては妙だな」

「いいえ、ゼロ様は……あなたたちと同じ、冒険者の1人です。闇属性の」

「は?」


 魔物じゃない? 簡単に情報を聞き出せたものの、俺は絶句する。


「邪神側についた、キャラの仕業か? ……知らないな」


 緊急バトルミッションを起こすほどの存在だ。しかもゼロだなんて単純な名前なら、ゲーム内で見かけていたら忘れないだろう。


「まあいい。で、そいつは今どこにいる?」

「それは……あ、んっ?」


【依頼契約が果たされました】


「ふあうっ! なっ、どうなっています、の……!」


 すべてのベルトを外したフランヌだが、ベッドの上に起き上がったまま身震いした。

 鉄の冷たさに今更ながら音を上げた、のではない。はああっ、と漏らすのは艶っぽい吐息だ。ああ、これは……契約の報酬としての、エロシナリオが始まったか。


「体が、フランヌちゃんの体が熱いのです! やあっ、ココが、ココが一番火照るのお!」


 できたばかりの両手の指で、いきなり股間をまさぐった。すると硬いベッドを濡らしたのは、噴き出た透明な液体だった。

 濃密な女の匂いが放たれて、俺はそれが蜜液だと知る。


「お前、まさか、発情してるのか。……アンデッドを生き返らせた反動か?」

「そ、そんなのわからな……ダメえ! あーー! 止まらないっ、止まりませんのーー!」


 ぐちゃぐちゃとフランヌが自分の蜜※を掻き回し、体を淫靡に仰け反らせた。


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【キメラ巫女フランヌ】LV?? ――媚薬――

HP:23499/27000

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 俺に下ったフランヌのステータス表示を呼び出してみれば、状態が【媚薬】だと?


「そうか。確か尋問のためにイオリが薬を使った、とか言ってたな? それがこれか」

「ど、どうなっていますの! ぜんぜん収まらなくて……ふああっ、あーーーー!」

「なるほどな。今回はこういう形でエロシナリオに入るわけだ」


 まだ、ゼロとかいう相手の情報の触りを聞いただけだが。


「ふん。薬の効果が切れるまで待つか、それとも俺がフランヌを満足させるか、というところだな」

「なに? フランヌちゃんのこれ……あなたが鎮められるというのですか? なら、早くっ! よろしくてよ! こんな感覚、初めてすぎて、もうおかしくなりゅうううッ!」

「わかった。入れてやる。それだけ濡れてればもう前戯もいらないだろう」

「はひっ? ……なっ、なんというものですか、その肉の棒は?」


 俺も準備万端だ。白ローブを脱いでズボンを下ろせば、そそり立った一物が現れる。

 フランヌは見るのも初めてなようだが、なぜか目を離さず、涎をだらだら垂らし出した。媚薬のせいなのか、完全にエロの本能に支配されているようだ。


 それでも俺が肌に触れれば、びくりと強ばる。


「ひっ……フランヌちゃん、どうなってしまいますのお?」


 押し倒せば、肌を重ね合うのも初めての感触なのだろう。フランヌが戸惑い、息を荒くした。こっちは、命を得てもまだひやりとするフランヌの体温が心地よい。

 鉄のベッドは硬くて冷えていてよくないため、脱いだローブを敷いてやった。


「さあ、温めてやる。外からも、中からもな」

「中って、あっ、あうあーーーーー!」

 ぬぷりと俺はフランヌの中に押し入った。


 媚薬の効果のおかげだろう。濡れそぼった肉壺は、ばきばきに勃った俺の分身を一気に根元までくわえ込んだ。がくがくとフランヌが痙攣し、俺にしがみついてくる。

「あーーっ! あーー! あーーー! なんですの、こりぇえ! あーーーーーー!!」



 ――俺に足を絡めるフランヌの中に、俺はたっぷりと長く精を吐き出した。



 そのたびにフランヌは反応し、すべてを受け止めた。


「あ、あ、あ……あぁぁああああああああ……」


 しかし最後はずるり、と崩れるように鉄のベッドへ倒れ込む。


「おい? ……あ」


 急にぴくりとも動かなくなったので慌てたが、どうやら気を失ったようだ。

 ひゅーひゅーという疲れ果てた呼吸音だけが聞こえ、フランヌの乳※が揺れる。


「これ、イかせすぎたか……」


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【キメラ巫女フランヌ】LV?? ――気絶――

HP:23499/27000

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 ステータスを確認して俺はほっとする。どうやら【媚薬】状態も脱したようだ。


 ならばあとは、残りの情報を聞き出すだけなのだが……。

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