■第5話 勇者マリア(7)


●7




「クライくん?」

「……マリア?」


 部屋の中にはなんと、先客の勇者マリアがいた。


 だが俺は少し面食らう。彼女の格好が、普段のビキニアーマーではなかったからだ。

 姿見の前に立つ彼女は、リボンをあしらったブルーのドレスを着こなしていた。

 鏡には背中が丸見えになっている様子が映る。かなりエロいデザインだ。


 マリアが頬を赤く染めて、恥ずかしそうに身をよじった。


「これはね、違うのよ。パーティに華を添えて欲しいって、メイデル姫に頼まれてね。ほら、依頼契約ってあるじゃない。あれに応えたら、こんな格好に変わっちゃって……」

「ふうん。リーダーの俺に関係なく、指名された依頼を引き受けたってことか。しかし、なんでこんなところに」

「う……うるさいなあ。行けばいいんでしょ、行けばっ。ふんだ!」


 どうもドレス姿に気後れするところがあるようだが、バカか?

 普段のビキニアーマーの方がよっぽど露出度高いくせに。


「だいたい誰なのよ、こんなのデザインしたの……。あら?」


 だが彼女は部屋から出て行こうとして、扉の前で困惑する。


「なんで? うっそ、鍵かかってる。どうして中から開けられないのよ、これー!」

「なんだと?」


 俺も急いでマリアのもとに向かい、確かめた。

 扉についた取っ手を強く押しても引いても、びくともしない。そもそも鍵穴らしきものがなかった。どのみち俺は【解錠】スキルを持ってないから、どうしようもないが。


「いや。これは、まさか……」

「わかるの? クライくんっ」

「……イベント発生で開かないようになった感じだな。開けるためにはたぶん、ことを片付けるしかない」

「は? イベントって……なんでそんなのが、いきなり? え、アタシのドレス披露って、ここから出ないとどうしようもないんだけど!」

「違う、そっちじゃない。たぶんこれだ」


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【リーダー譲渡申請】

リーダー署名:勇者マリア

リーダー譲渡先:白魔道士クライ

報酬:勇者マリア×1

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 いつぞやのパーティリーダー譲渡の文面を呼び出すと、マリアが固まった。


「嘘。報酬が……ア、アタシになってるよ、これーーーー!」

「本気で気付いてなかったのか。でもわかるだろ、『エムブリヲ』を知ってるなら。つまりお前とのHイベントが始まったってわけだ。今、ここで」

「Hって……ない! ないない、そんなのあり得ないって! あはははは……はは?」


 笑い飛ばしたマリアだが、俺が真顔なことに気付いて勢いを失った。


「えっと、マジなヤツ? ……ほんとに?」

「リーダーは譲渡してもらったが、さっきはバトルイベントの最中だったからな。俺はまだ報酬をもらってないぞ」


 ほら、と部屋の中に改めて目をやれば、ここはどうも簡単なゲストルームになっているようだ。窓ひとつない中に化粧台が置かれていて、その横には休憩用なのか当たり前にベッドが置かれていた。


「ここでヤれということか。わかりやすいな」

「い、嫌ーーーー! 絶対に嫌だからね、アタシ!! そんな、Hなんて……誰か、ここから出してよー!」


 マリアが強く扉を叩く。が、素手ではびくともしないようだ。慌てて周囲を確認するも、やはりこの部屋には窓がなく、他に出口は存在しなかった。


「なら、力尽くで! ……あ、あれ? アタシの剣はっ?」


 【装備】ボックスを呼び出して「光の牙」を身につけようとしたようだが、ウィンドウそのものが起動しなかった。


「なんで? なんにもできなくなってる? 嘘お!」

「だから、イベントが発動したって言っただろう。回避することはできない。ここは『エムブリヲ』だからな」

「う……そんな、そんなあああ~~~!」


 マリアは絶望に青ざめたが、俺も別に乗り気じゃない。


 こいつとセ※※スする、だって?


「……ヤる以外に出る方法はないが、そそられないな」

「はあ? な、なによ、それー!」

「かわいげがないんだよ、お前は」


 2人きりになってもまったく※たない。それはマリアが、ゲームキャラではなくリアルな存在だと知っているせいもあるか。俺はコミュ障だからな。


「わ、悪かったね、かわいくなくて! ……いや、かわいいよ! ほら、マリアはアタシが魂込めてデザインしたんだからさー!」

「……中身はアラサー女のくせに」

「うるさーい! 女盛りって言ってよねっ」

「もういい、ヤるしかないんだから、さっさと終わらせるぞ。脱げ、マリア」


 俺はとりあえず白いローブを剥いだ。


 だがマリアときたら……。


「ヤるって……そ、そんな。アタシっ」

「なにしてる。ほら、ベッドへ」

「い、嫌っ! ダメえ、無理い!! アタシ、そんなのシたことないんだからあ!」


 怯えた様子で後ずさり、勝手にベッドとぶつかってマリアは枕の上に尻餅をついた。


「は? お前、まさか……」

「う。ご、ごめんね! アラサーなのに、まだバ※※ンでさ!」


 冗談や嘘ではないのだろう。マリアはベッドに腰掛けたまま、泣きそうな顔でそっぽを向いた。


「それが、なに? こんなゲームの中で、シちゃうことになるわけ? なんで……」

「マリア……そうか、お前」

「…………」

「リアルだと相当不細工なんだな。女なのにアラサーで、まだ処※とは」

「ちっ、違ーう! なんでそうなるの! アタシはリアルでもそこそこよ! 美人とは言わないけど、普通よ普通! ただ彼氏ができたことないだけで……だって絵さえ描いてれば楽しかったしさ。『エムブリヲ』に関わってからは、ひたすら仕事してきたし! 特に、最近はそんな余裕なんか……」


 必死に言い訳するマリアだが、最後にははっと息を呑んだ。


「そうよ。アタシは、この任務をちゃんと果たさなきゃ。こんなところで余計な時間を食ってる場合じゃないのよ……! これは、ゲーム。うん、ゲームなの……そうよ、ほら! クライくん、ちょっと後ろ向いてよね!」

「はあ? なんで」

「あんたならわかるでしょ! Hイベント……してあげる! でもね、本番はなし! ……こ、ここでアタシ、一人Hするからさ。あんたはこっち見ないで! いい?」

「オ※ニーか? あー」

「そ、そういうシナリオでもいいでしょ! 『エムブリヲ』なんだからねっ」


 マリアの言うとおり、確かに『エムブリヲ』のエロシナリオは2回目、3回目があるために……1回目でセ※※スに到達せず終わるパターンが存在した。


 多くのエロCGを担当してきた彼女だからこそ、そのことはよく知っているのだろう。

 それで終わらせられるのなら面倒がなくて助かるか。俺は彼女に従って、ベッドに背を向けることにした。しかし、少し離れた場所に大きな姿見が立っていて、ちょうどベッドの様子が映り込んでいた。


 さすがに移動しようと思ったが、緊張した面持ちのマリアは気付かない。ベッドの上でこっちに背を向けて座り直し、ドレスを少しはだけた。


「はあ。なんでアタシが……」

「おい、マリア」

「話しかけないで、集中するから! こんなの、リアルじゃ絶対あり得ないんだからね!」


 深呼吸する音が聞こえた。やがてマリアの手が、自分の胸をまさぐり始める。

 ……そこから始めるのか。


 いや、女でもやっぱりオ※ニーするものなんだな。


「ん……なに、これ。そこに男の人がいるのに、アタシ、まるで変態じゃない。くっ」


 鏡越しに、マリアの背中が赤みを帯びてきたのが見えた。呼吸も荒くなってくる。


「は、あっ。この体、ゲームなのに、いつもより敏感んん、んっ!」


 ドレスからこぼれた乳房の先端に触れれば、マリアの体がくねった。

 ぎしり、とベッドもいやらしく軋む。


「音だけでも、エロいな……!」

「あっ。い、言うなああ! 仕方なくやってるんだからあ! アタシ、バ※※ンなのに。こんなの、ほんとは嫌なのにっ」


 だが途中でやめることはなかった。マリアの手が下に伸びていく。


「……ふああッ!」


 一際甘い声が漏れた。

 鏡越しに、真っ赤になって振り返ったマリアが見えた。俺の様子を確かめたのか。


 が、姿見には気付かなかったようで、口を手で塞ぐとオナニーを再開した。

 んっ、んっ、としばらくくぐもった吐息だけが伝わってきたが……やがてそこにぴちゃぴちゃと湿った音が混ざってきた。あそこが滴ってきたのだ。


「やだっ、アタシ、こんな濡れてっ。聞こえる、全部クライくんに聞こえちゃうよ~~~! くうううん!」


 恥辱にまみれるマリアだが、もう指が止まらないのだろう。がくがくと腰を浮かせながらもいっそういやらしい音を響かせた。それだけではなくて、ベッドから少し離れた位置にいる俺のもとに、濃密な甘い香りが届いてきた。


 俺はこれを知っている。発情した雌の匂いだ。

 マリアから滴る蜜が完全に俺を誘っていた。


 鏡の中で彼女はベッドに倒れ込み、尻だけを持ち上げてすっかり自慰にふけっていた。スカートが乱れ、白い太股と付け根が露わになり、そこに滑り込んだ手が一心不乱に動いている。


 俺の股間がいつしか硬く怒張していた。ヤりたい。ヤりたい、ヤりたい!

 俺は自ずと振り返り、鏡越しではなく直にマリアの痴態を捉えた。


「やあんっ、ダメえ! 気持ちいい、気持ちいいよう! クライくんに聞こえてるのにっ、止まらないの! やめられないよー! あーーーーーーー!」


 マリアの指が割れ目の奥に入り込み、中を掻き回していた。そのたびにベッドのシーツが湿っていく。


「イくっ、イっちゃう! 全部聞かれちゃう! くっ、あ……イってりゅっ、イっ、ん! くう、ンン、ンッ~~~~……!」


 そして果てた。大きくのけぞり、荒く呼吸してベッドに深く倒れ込む。


 ……そのときには俺はベルトに手をかけ、ズボンを脱いでいた。


「マリア」

「んはっ? ク、クライくん!」


 ベッドに上がって声をかけると、快楽の余韻に浸っていたマリアも俺に気付いた。

 驚きに見開かれたその瞳が捉えるのは、そそり立つ俺の肉棒だ。


「きゃあ! すご……こんなふうになって? は、初めて、見たあ……!」

「お前の中に入りたがってこうなったんだ、マリア。いいな?」

「あ……するの? シちゃうの? アタシ、バ※※ンなのに。されちゃうの? やだっ。そんなおっきなの、入らないよお!」

「入るさ」


 うつ伏せのままの彼女に覆い被さり先端をあてがえば、マリアは尻を震わせた。


「熱っ……! 熱いよ、え、えええ?」


 掴んだ尻肉はやわらかく、しっとりと汗で濡れていた。

 その下に隠された秘裂が吸い付いてくる。挿れてもいいと下の口が言っていた。


「な、なにこれえ! 頭、おかしくなりゅう……! 無理っ、挿れちゃダメえ! メチャクチャになるようう!」

「うるさい」


 肉欲に堕としてやる。じらすようにぬるりと濡れた太股の間に擦り付ければ、それだけで一度果てて敏感になったマリアの体が何度も跳ねた。


「ああう! あう、あう! 硬いっ、かちかちだよ、すごいよー! クライくうううん!」


 もういいだろう。俺はマリアの中にゆっくりと入っていこうとした。


 めりっ、と処※膜がわずかに抵抗するが無意味だ。

 そのまま押し破ろうと、腰を落とす。あっ、とマリアが仰け反って……。


「クライ~! クライはどこにいるのですか? あっ、いましたわ~!」


 だが、先に破られたのはなんと部屋の扉だった。

 そこからぐでんぐでんに酔っ払った白の女神シルヴィーナが現れる。


 いきなりのことに驚いて、いきり立った肉棒がマリアの外に滑った。


「……シルヴィーナ?」

「あー! なにをしていますの、クライ! こっちへきて酌をしなさいっ。まったくもう、あなたって人は、女神はもっと敬うものですわ~~!」

「女神様あ、ちょっと酔いすぎですよう!」


 女神の後ろからポルテも姿を見せた。


 ……どうやらHイベントはここで終わりのようだ。察したマリアが慌てて俺の下から抜け出し、ドレスを直して睨んでくる。


「クライくん……もう大丈夫だから! しなくていいから!」

「マリア? 俺はヤり足りないけどな」

「バカあ! 絶対しないからーーー!」


 マリアが真っ赤になって部屋を飛び出し、逃げた。


 次いで女神やポルテも、裸だった俺に気付いて赤くなる。


「ちょっと、クライ? な、なんですかその格好はー! いやらしい、いやらしいですわあああ!」

「ご主人様っ、お邪魔したですか? でもポルテに言ってくれればよかったですのに、もう」

「黙れ」


 すっかり萎えて俺はすぐに服を着る。


 まあいい。ここは『エムブリヲ』だ。マリアとする機会はまたそのうちできるだろう。

 たとえ相手が勇者であっても、な。

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