■特別編 暗殺者サツキ(2)


 そして俺は次々と変装したサツキに出くわした。

 城の中を歩けば、今度は大臣の1人に成り代わり、いきなり襲いかかってきた。


 どうも女だけでなく男にもなれるらしい。

 衛兵の青年に化けていたこともあった。


 また人の形をしていれば問題ないようで、庭園に飾られていた等身大の女神像がネコミミを生やしていたこともあった。

 こいつには近づかなかったけどな……!


 となると街に出るのは悪手だ。人が多ければ多いほど、サツキが潜伏しやすいからな。

 さすがにうんざりして、城の広いバルコニーに1人で王都の街並みを見ていたのだが……なんと黒猫の姿で近づいてきやがった。

 でもな、さすがに小さくはなれなかったようで、人間サイズだったからすぐわかった。


「また見抜いたのだ! 本当にやるのだ、オマエ!」


 ことごとく見破ってきたが、毎回突きつけてくる【依頼契約】の報酬は少しずつしか上がらない。

 なんで800の次が900とか、100G単位で刻んでいくんだよ!

 おかげでうんざりするほどあしらっているのに、まだ2000Gにも届いていない。


 しかし、どうも同じものに化けて近づくことはないようだ。

 遭遇する間隔も開いてきて、そこだけはほっとする。

 もっとも俺を守ろうとするポルテは気が気でないようだ。


「絶対に、ご主人様に近づかせないです! ポルテが捕まえてみせるですよー!」


 張り切って城内を駆け回り、変装したサツキを捜そうと躍起になっていた。

 それに女神もくっついていく。


「ええ、クライのことはともかく……暗殺者だなんて! 人を殺すことを生業とするなんて、いけませんわ!!」


 ぜひとも改心させないと、ということらしい。

 だが2人にはネコミミが視界に入らないようで、どうにもならないと思うがな。


          ◇


 どのみち奇襲が成功しても、俺には【自動治癒{オートヒール}】があるからな。

 あんなナイフで殺されることなどあるものか。


 だから俺はもう暗殺者を気にせず、好きに行動することにした。


「そう言えば日課を忘れていたな」


 俺は1人、城の植物園を目指す。

 巨大な温室に足を踏み入れれば、そこにたくさんの植物に混じり、薬草などの採取できるアイテムがたくさん生えていた。


 ただし1日に収穫できる量には限りがある。

 だから俺はここのところ毎日通い、こつこつアイテムを採取していた。

 だがそのためには、毎回許可が必要となる。


「あっ、クライさん! 今日も来てくれたんですね?」


 俺の姿を見つけて嬉しそうに駆け寄ってきたのは、植物園を1人で管理する白衣の眼鏡美人、薬師イオリだ。

 その頭にはネコミミがなく、俺はほっとする。


「ああ。またアイテムをいくつかもらおうと思ってな」

「はい、いいですよ。でも……ね?」


 うふふ、とイオリが頬を染めて微笑んだ。


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【依頼契約】

履行者:白魔道士クライ

達成条件:薬師イオリのハーレムシナリオ

成功報酬:植物園にあるアイテム×30

依頼署名:_____

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 イオリがもじもじしながらも俺に【依頼契約】を突きつけてくる。

 その条件はHイベントをこなすこと。


 そう、こいつときたら最初と同様、アイテムと引き換えにセ※※スを要求してくるのだ。


「ああ。わかってる」


 毎度のことだ。

 俺は指を滑らせ空中で署名し、契約を完了させた。


「クライさぁあん~~~~♪」


 するとさっそくイオリが飛びついてきた。

 俺を抱きしめ、唇を重ねてくる。

 舌を絡めた濃厚なキスだ。


「んっ、れるっ……ちゅぶっ」


 こいつ、うまくなったな。

 最初は眼鏡が邪魔になったが、今はそんなことはない。

 俺の方もキスでいちいち目をつぶらない余裕ができていたがな。


 眼鏡の向こうで閉じ合わさった長い睫を見ながら、イオリの顔が上気していくのを楽しむ。

 俺も興奮し、互いに息が荒くなった。

 キスはいい。大好きだ。


「はあっ、クライさん……もう、あたし……!」


 キスだけで俺が股間に血流を集めたように、イオリもたまらなくなったようだ。

 俺から離れると、すぐに白衣を脱ぎ始めた。

 いいだろう。俺もローブを外し、腰のベルトに手をかける。


 いつもなら温室を支える大樹の中にある、イオリの部屋まで行くのだが、俺たちはたまらず近くの木陰で全裸になった。


「ふふ、クライさん。来て?」


 そそり立つ木の幹に手をついて、脱いだ白衣の上に立ち、イオリが白い尻を突き出した。

 まったく、いやらしい女だ。

 自分から秘肉を割り、濡れた花弁を見せつけてくる。


 それだけでなく、きゅっとすぼまった後ろの穴も丸見えだ。

 立ちバックのポーズって、こんなにエロいんだな。


「いくぞ」

「んあっ、はうんっ! ああ~ん、じらさないで……くださぁあーい!」


 挿入しようと思ったが、その前に俺は怒張した先端だけをあてがい、割れ目の熱さを堪能した。

 こするたびにびちゃびちゃとした音がして、止めどなく濡れてくる。

 イオリがいっそう興奮し、肌をほてらせ細い腰をくねらせた。


「あっ、あっあっあっ……こうですね♪ 入る、入っちゃうう! クライさんのおっきくて、熱いのがっ!」


 俺は何もしていない。

 動かず立っているだけなのだが、イオリの方からうまく尻を振り、ぬるりと先端を包み込んできた。

 そのままゆっくりと俺たちは、深く繋がっていく。


 ……はずだったのだが。


「にゃはああああああ!? なっ、なんなのだああああ~~~!! エッチすぎなのだっ!」

「えっ。きゃあーーーーー!?」

「お前……サツキ!!」


 突然の悲鳴にイオリが反射的に尻を引き、俺の一部がずるりと抜けた。

 そんな光景を前に固まるのは、変装もせずこっそり植物園にやって来た、あのサツキだった。


 どうやらチャンスとばかりに後ろから近づいてきたようだが、今は顔を真っ赤にして、ナイフさえ落としていた。


「アチシとの勝負を受けないで、なにやってるのだあ!? そっ、それ隠すのだ! 早くう!」

「……うるさい。そうか、お前。処女だな?」

「あ、当たり前なのだあ! このサツキ様が、男なんかに手を出されるわけがないのだ! だから、き、汚いもの見せるななのだっ!」


 ナイフを拾うこともできずに、サツキは尻尾を逆立てて、あわあわと両手で目を覆う。

 知るか。俺は裸のまま彼女に詰め寄った。

 いい加減頭にきたのだ。


「おい、勝負だったな? 受けてやる。ほらよ」


 俺は自分の方から【依頼契約】を手早くまとめ、サツキに突きつけた。


「にゃはっ? そっちから勝負を挑んでくるのだ? み、身の程知らずなのだ! わかったのだ、引き受けてやるのだ!」


 まともに文面も確認せず、サツキが署名する。


【契約は結ばれました】


 ……バカが。


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【依頼契約】

履行者:暗殺者サツキ

達成条件:暗殺者サツキの捕獲

成功報酬:暗殺者サツキのハーレムシナリオ

依頼署名:暗殺者サツキ

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「って……にゃ、にゃんなのだあ!? これえっ!」


 今更中身に目を通してももう遅い。


「【痛覚麻痺{ナァム}】!」


 素早く身を翻そうとしたサツキに、俺の魔法が炸裂した。

 白い輝きが彼女の体を包み込んだとたん、その場で足をもつれさせてサツキが転ぶ。


「にゃふうっ!? か、体が、変なのだあああ~~~!」


 別にたいした魔法じゃない。

 【痛覚耐性】スキルを持つための踏み台でしかなく、使えば仲間に【痛覚耐性】を一時的に与えるというだけだ。


 だが獣人族の素早い動きを狂わせるには十分だったようだ。

 人より五感に優れる種族だからこそ、この手の魔法に弱いんだよな。


 もちろんこんなのでダメージを負わせることはできないが……捕まえるには十分だった。


「ああっ! は、離すのだあー!」

「イオリ、手を貸せ。俺たちの逢瀬を邪魔した報いを受けさせるぞ」

「は、はいっ。それはいいんですけど、クライさん? この娘って、もしかして朝からお城を騒がせてる……?」


 慌てて白衣だけ羽織ったイオリが駆けつけて、戸惑いながらも後ろからサツキの尻尾をえい、と両手で強く握りしめる。


「にゃはあああああああああああんっ!? そこ、ダメなのだあぁぁぁぁ~~~~……!」


 それだけでサツキがへなへなと尻餅をついた。

 力が入らないようで動けなくなる。


【契約依頼が果たされました】


 同時に決定的な表示が出た。

 暗殺者サツキの捕獲、完了だ。


「俺の勝ちだな」

「にゃううう……こ、このサツキ様が、こんな……」


 ネコミミまで垂れさせて、完全に観念したようだ。


 なら、報酬をもらうとするか。

 さあエロイベントの始まりだ。

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