■第4話 魔法武器職人レイ (7)

●7


「やだあ、こっち見んなよぉ~」


 ※り終わった後、レイときたら急に恥ずかしがり、寝室のベッドに逃げて1人シーツにくるまった。


 マジでかわいいヤツだな。

 ギャルも悪くない。


 しかしいつまでもそうしているわけではなかった。


「クライ、アンタの武器だけどさー、こんなんでどう?」


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【アイテム製造】

アイテム:白魔道士用魔法強化打撃系武器×1

確定性能:ATK△200~600、HP▼100~300

使用素材:ミスリルの斧×1

金額:50000G+20000G

成功率:98.0%

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 俺がローブを纏う頃には、細い体にシーツを巻き付けたレイが寝室から戻ってきて、武器製造の提案に入った。


「さっきの戦いでさ、白魔道士{ヒーラー}の腕力でも打撃系武器がいけるんだってわかったからさー! こんなんでどう?」

「ふうん、どれ?」


 俺は叩き台に座ったまま、手元に表示された中身を確認する。

 隣に腰掛けてきたレイの目がきらきらしていた。


 自信作ってことか。


 魔法武器だから確定性能以外にも、おまけで付加する魔法効果があるはずだが、この段階ではそこまではまだわからないんだよな。

 追加は2万G{ゴールド}で、成功確率も高い。悪くないが……。


「レイ。どうせならもっとATKを引き上げて欲しい。できるか?」

「へ? いいけど……うーん。素材がミスリルの斧だけじゃ厳しいかなーって。……あっ、そーだ! 最後に使ったアレ、まだ持ってる?」

「アレ?」

「竜の体で爆発したヤツだってば。素材として使えるかも!」

「爆裂草の種か?」


 俺は【アイテム】欄を呼び出して、黒い粒をいくつか手のひらの上に顕現させた。

 それをさっとレイが奪い、光となって回収する。


「よーし! んじゃ、こうで?」


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【アイテム製造 リテイク】

アイテム:白魔道士用魔法強化打撃系武器×1

確定性能:ATK△200~800、HP▼100~400

使用素材:ミスリルの斧×1、爆裂草の種×6

金額:50000G+20000G

成功率:93.5%

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「へえ、いいな!」


 ATKの上限が200も上がっている。

 もちろん最大値近くでできあがるかどうかは運次第だが、成功率の数値を見るに、レイの腕前なら問題なく仕上げてくれるだろう。


 だが、どうせならもう少し欲張りたい。

 ……『エムブリヲ』のオーダー交渉は、だいたい2回までが許されるからな。3回目になると破棄されてまったく違うものが提案されてくるから、それはそれで面白いが。


 だが、爆裂草の種まで素材で取り込むなんて面白そうだ。

 たぶんこれは、消耗アイテムとして使われるんだろうが……。


「レイ。もう一声いいか? もう少しGを積むとどこまでできる?」

「マジ? ……しゃーない、んじゃこんなとこで!」


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【アイテム製造 リテイク2】

アイテム:白魔道士用魔法強化打撃系武器×1

確定性能:ATK△200~1000、HP▼100~500

使用素材:ミスリルの斧×1、爆裂草の種×6

金額:50000G+40000G

成功率:88.7%

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 ついにATKの加算値が、大台の4桁にまで届いた!

 追加で4万Gかかるが、成功率はまだ9割近い。


「よし、これで決定だ!」

「オッケー! じゃあさっそく作り始めるよ! 任せて!」


 レイが承諾すると俺から光が移動した。


【90000Gを支払いました】


 ごっそりとGが奪われたのだ。


 代わりに新たなカウントが【96:00】と現れる。

 するとレイが立ち上がり、扉の鍵をガチャンと外した。


「完成するまでは丸4日ってとこかなー。ほらほら、集中したいから出ていきなっ」


 現れたカウントはまだ【96:00】のままで、減少を始めていない。

 1人になってちゃんと作業を始めてから減る仕組みか。


「わかった。では4日後にな」

「楽しみにしてなよ! アタイの男にふさわしい武器を仕上げてやるからね!」


 最後は頬にチュッとキスされ、見送られた。


 突然のことに、外に出され扉が閉められてから俺は顔が熱くなる。

 さっきまでウブHでいっぱいいっぱいだったのに、自然体でこんなことができるとは。さすが黒ギャル、か?


【95:59】


 カウントダウンがスタートした。

 4日か。課金できればある程度短縮できるんだがな。


「……やっと、終わったのですか?」


 部屋を出た地下で、俺は待っていた白の女神シルヴィーナと出会った。

 騎士たちが用意したのだろう。レイの尋問でも使われた椅子と机が置かれ、そこで女神が寝ているポルテを膝に抱いて座っていた。


「クライ。その、長かったですわねっ」


 なぜか頬を上気させ女神が顔を伏せた。


 もしかして、何してたかだいたいわかるか?

 別に、女神相手に気にすることはないが。


「なんだ。俺に抱かれたいのか? シルヴィーナ」

「ち、違いますわ! そうではなくて、わ、わたくしは……!」

「むにゃ……ポルテは、いつでも、ご主人様ならおまた開くですよ……くぅ」


 寝言を漏らしてポルテがごろりと、女神の白い太ももで寝返りを打つ。


「ダメっ、あはうっ! ポルテ……ポルテ!」


 真上にあったたわわな巨※が揺れ、女神が甘い息を吐いた。

 いや、あわや椅子からずり落ちそうになる。


「もしかしてポルテにくっつかれて、弱体化してるのか?」

「う、うっかり寝落ちされまして……倒れ込んでこられて、逃げられなかったのですわああ~! 助けてください、クライー!」

「…………。死ぬわけじゃないだろ。しばらくそうしてろ」

「ええっ? クライ、あなた、ひどいですわ!? ああっ、あああああ……」


 城内だとパーティを組んでいても、俺1人で行動できるのはわかっている。

 今は1人になりたくて、俺は女神を見捨てて地下から出た。


 ……もう朝だ。

 王城の中が、窓から差し込む朝日に照らされ、淡く染まり始めていた。


 ヒキコモリで昼夜逆転していた頃、いつもこの時間に眠っていた。

 だが今は眠くない。

 バトル後に寝てないからMPは少し減ったままだが、HPは全回復しているからか?


 いや……胸がわくわくしていたからだ。

 もうすぐ武器が完成する。装備が整えば、ついに冒険の始まりだ。

 このリアルな『エムブリヲ』をもっと堪能できるのが、嬉しくてたまらなかった。


「まったく。大したご褒美ターンだ」


 ヒキコモリ生活が破綻して絶望にくれたときには思いもしなかった世界が、どこまでも開いていた。


 ……面倒な女神{オマケ}がちょっと、邪魔だけどな。


          ◇


 そして4日後の朝、ついにカウントが【00:00】となり、俺は地下の部屋でできあがった魔法武器と対面する。


「これが、俺専用の魔法武器?」

「どーよどーよ! はい、持ってみ?」


 仕上げたばかりで汗だくのレイから手渡されたのは、黒い鋼に青光りする精霊銀{ミスリル}の紋様が浮かぶ、背丈ほどもある大きな杖だ。

 だがその先端の無骨さに、一緒についてきたポルテや女神が首を傾げる。


「なんか、ハンマーみたいです!」

「……それにしては、穴が6つも空いていますわ?」

「これ、リボルバーか?」


 俺は一目で判別した。


 確かに杖の先端は回転式拳銃{リボルバー}のシリンダーのようになっていて、穴が6つ空いていた。

 別に回るわけではないし、穴も奥は塞がっているようだが。


「そ! わかってるじゃん、クライ! アタイって武器だったら銃でも作れるからね! そのノウハウをぶち込んでみたワケ!」


 はい! とレイが武器の詳細を表示させた。


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【リボルバーショットスタッフ】(999)

属性:打

魔法効果:耐火 耐久

性能:ATK△900 MATK△100

重量:AGI▼10

消費:▼HP450 ▼爆裂草の種×1

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「リボルバーショット、スタッフ? すごいな、ATKの加算は900までいったか!」

「アタイの自信作だよ! あ、それ1発ごとに爆裂草の種、使わなきゃだけどねー」

「なに? あ……」


 消費アイテムが追加されている。


「爆裂草の種を火薬代わりにして、リボルバー型のヘッド部分を加速させるってわけか? だからショットって……」

「そ、そ! 白魔道士{ヒーラー}でも使える打撃武器ってワケ! あくまで杖だけどさー」

「それって……また使うたびに、クライが傷つくのではないですか?」


 女神がリボルバーショットスタッフの詳細に目を通し、青ざめた。


 まあ、振るうたびにHPが▼{マイナス}450だからな。

 【自動治癒{オートヒール}】前提の武器なのは間違いない。


 それがどうした?


「白魔道士{ヒーラー}が近接戦闘をこなすんだ。これくらいの無茶は当たり前だろう」

「クライ……!」


 まだウダウダ言ってくるのかと思ったら、女神がいきなり俺に抱きついてきた。

 ぎゅっとやわらかな胸を押しつけ、頭を撫でてくる。


「シルヴィーナ?」

「あなたは……そうまでして、世界を救ってくれるというのですね」

「お、俺は自分の好きでやってるだけで」

「いいのです! そんなあなたをわたくし、誇りに思わないといけないのですよね」


 俺の頭をいっそう引き寄せ、撫で続ける。


 バブみか! 頬が女神の巨※に埋まって、やばい。

 やはり魔性のお※※いだ。このまま押し倒したくなってくるな。


「くっつきすぎですよう!」


 だがそこにポルテが割って入った。強引に女神と俺を引き剥がす。

 そうだった。こいつ俺が女神に手を出そうとすると、邪魔するんだよな。


 しかも今回はレイが冷たい目をしていた。


「ふーん、ほーん。クライって、いろいろモテるんだねえ」

「……知るかよ」

「けどさ、アンタってきっとそうやって、いろいろ女の子を巻き込んで……世界を救っちまうんだろーね」

「どうかな」


 手にしたリボルバーショットスタッフは、重い。

 杖だから装備できるが、本来なら白魔道士{ヒーラー}の手に余る代物だ。


 『エムブリヲ』でこんなもの、もちろん使ったことがない。

 持ち歩くには適さずに、俺は光に変えてアイテムボックスに格納した。


 使うときだけ装備すればいい。

 また、試し打ちも実際の戦闘で十分だ。


「助かった、レイ。後はせいぜい派手に暴れてみるさ」

「ま、アタイは気に入った相手ならいつでも作るよ。十分な素材と、手間賃はもらうけどさ」

「ああ」


 どのみち、もっと稼いで強力な武器をどんどん作ってもらうつもりだ。

 だがまずはこれで……姫からの依頼を達成しないとな。


 準備は整った。武器ができるまでの4日間で、食料や必要なアイテムはもう全部そろえてある。


 さあ邪神勢力の討伐のため、冒険に出るか!

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