■第1話 白魔道士クライ (3)

●3



「ななななっ、なんてことをしたのですか、あなたはあああーーーーーーっ!」


 するといきなり霊廟に駆け込んできたのは、実体化して現れた白の女神シルヴィーナだった。


「蘇生魔法!? そんな、それは禁忌の魔法ですわ! 死者再生は神のみに許された行為なのです!」

「ああ、知ってる」


 覚醒したポルテという名前のドワーフ少女を見て、慌てふためく女神に向かって俺は笑った。


 ここが『エムブリヲ』なら、白魔道士{ヒーラー}であっても本来は蘇生魔法を使えない。

 課金無課金どちらにせよ、なにせ転生が前提のシステムだからな。死んだら「はい、それまでよ」が当たり前なのだ。


 だが例外がある。

 いわゆるボーナス魔法の存在だ。


 すべての習得魔法を上限のLV99まで持って行ったときのみ、特別な魔法をひとつ与えられた。

 ……というのはたぶん運営側以外では、『エムブリヲ』でただ1人のSSSランクとなった俺だからこそ知る事実だ。


 俺は前職の黒魔術師{ソーサラー}時代に、すべてをカンストまで育てて死者を操る【死体操作{ネクロマンス}】を会得していた。

 それは目の前で他のプレイヤーが死んだとき、NPCとして蘇生し、パーティに組み込むというものだ。

 いわば掟破りの蘇生魔法を黒魔術師{ソーサラー}が使えるのなら、当然白魔道士{ヒーラー}も解放できるはずだと思い、習得したのだ。


「修練しろといったのは女神の方だろ? だからやってみせたんだ」

「なんてことを! あなた、この魔法の意味がわかっているのですか!? こんなもの、禁呪ですわ! 人が神を真似ても、その魂まではうまく戻しきれないのです!」

「え?」

「これをご覧なさいな!」


------------------------------

名前/種族:ポルテ/ドワーフ

年齢/性別:??/♀

ジョブ/ランク:戦士/?

LV/属性:35/?

HP:649

MP:0

ATK:306

DEF:282(△25)

MATK:0

MDEF:0

AGI:66(▼10)

LUK:88

------------------------------


 女神がいきなり空中に呼び出したのは、ポルテのステータスだった。


 一部が表示されなくなっている。

 これは、ゲームで言うところのバグか?

 それとも単に転生前提の世界だから、白魔道士{ヒーラー}の蘇生魔法は効果が限定的なのかもしれない。


「これはあなたのせいですわ、クライ! なんてかわいそうな娘……! 魂に欠損が生じてしまいましたわ! これでは生前の記憶も思い出せません!」

「うん? まあ、NPCならそんなものじゃないか?」

「記憶……別に、必要ないです。ポルテは生き返らせてくれたご主人様と一緒にいるだけです」


 ポルテは気にすることなく、石棺から這い出て頭を下げた。


「これからよろしくです、ご主人様。なんでも言うこと聞くですよ」

「俺の? へえ……」

「いいい、いけませーん! 完全に隷属関係になってしまってますわ! 奴隷と同じです! こんなの、絶対に許されませんわー!」


 やかましく女神がわめく。

 奴隷ねえ? なら……。


「とりあえず、ポルテ。この女神を拘束しろ」

「はいです」

「ふえっ? なにを……って、あああ、ダメえ!?」


 ポルテは俺が命じたとおり、素早く動いて正面から女神の腰に抱きついた。

 子供のようなポルテだが、ドワーフの怪力に掴まれれば女神とて逃れられない。いいように持ち上げられ、手足と6枚の翼を暴れさせる。


 だがその勢いが急速に衰えて、女神がくたっと力尽きた。


「ああ、あ……な、なんて、こと……! 放して、ポルテ! け、穢れ、ですわ! あなたの体は……わたくしにとって、ああ、あああああ!」

「なんです?」

「ははっ、面白いな」


 女神の大きな胸に埋まるポルテはきょとんとするが、俺は何が起きているのかを理解する。


 奴隷化は予想外だったが、もともとはこれを狙っていたのだ。


 俺は女神によって生き返らされたから、女神の力には逆らえない。

 しかし女神以外の者に蘇生されれば、そいつはきっと女神に縛られない。属性が「?」になっている今のポルテがそうだった。


 この世界は俺の幻想だからなのか、『エムブリヲ』そっくりだ。

 だからこそゲーム内では生き返ることのないポルテの復活は、完全にイレギュラーなはずと踏んだのだ。


 この結果は予想どおりだ。ポルテに女神の力は効かない。

 その彼女に、一部でも結界を破ってもらえば十分だったが……。


「まずい、ですわ……こんな、こんなっ」

「このまま弱体化させれば、まるごと結界を消し飛ばせそうだな。ポルテ、もっと女神の体をいじくってやれ」

「はいです。ええと、こうですか?」

「わきゃあああ! ど、どこ触ってるんですかああああ!?」


 ポルテが女神を片手で捕まえたまま、わさわさとあちこちまさぐった。

 そのたびに白いドレスの中で大きすぎる胸が弾み、俺はさすがに目を奪われる。

 本当に、すごい巨乳だ。グラビアアイドルも形無しだろう。


 ……そんな俺の視線にポルテが気付く。


「ご主人様も触るですよ。はいです」


 するといきなり彼女は、女神のドレスの胸元を引き下げた。

 こぼれ出たのは白い肉のふくらみがふたつだ。


「うっわ!」

「きゃ……きゃあああああ! なにしてるんですかああ! 出てる、出てますわ、わたくしの乳房があああ!」


 女神のおっ※いが丸見えになっていた。


 本当にこの世界はリアルだった。

 丸く、きれいな形をしていた。

 しかもメロンほどかと思った大きさは、ひとつひとつがスイカ以上もあった。

 真っ白で張りがあり、まったく垂れていない。それでいてポルテの頭や腕が当たるたびに、やわらかく形を変えて揺れていた。


「これが……」


 魔性の魅力だ。俺は初めて見た生おっ※いに、吸い込まれるように近づいていた。

 ポルテが女神の後ろに回り、羽交い締めの形になる。

 ふたつのおっ※いは自然と俺の前に突き出され、気が付けば俺の手が触れていた。


「は、っあ。クライ、なに、をっ」


 女神が顔を真っ赤にして身悶える。俺はしかし手のひらで感じたやわらかさに夢中になった。


「なんだこれ。すごいな……!」

「やっ、あ……ああん! クライ、クライ!?」


 初めて触れたおっぱいは少しひんやりとしていた。それがマシュマロのように吸い付き、揉んだ手と同じ形にへこむ。

 股間がむくりと怒張した。俺は痛いほど勃※する。さすが『エムブリヲ』、R18仕様なだけはあるな。


「やめて、ダメ……。これ、以上、はっ……あっあっあっ!」


 女神も興奮してきたのだろう。白いおっ※いが上気し、熱を帯び始めていた。

 唇と同じ桜色の乳首がぷっくりと勃っていた。感じているのだ。太ももをすりあわせてもじもじしている。


「いやっ、知らない! こんなの、わたくし、知りませんわっ! 怖い、怖いの!」

「気持ちいいんだな、シルヴィーナ」


 なら……俺は顔を近づけた。

 やってみたいことがあった。前世ではできなかったことだ。


 俺は思いきり女神の乳※にむしゃぶりつき、その※首を口に含んで舐め回した。


「ふわあああっ、そんなの、ダメえーーーー!」


 うまい。なんか、ほんのりと果実のように甘いぞ!?

 これが女の味なのか……?


「はあっ、ああん! あああ、あああああああーーーーーーーーーー!」


 やがて女神が全身を震わせて、立ったままのけぞって果てた。

 白の女神シルヴィーナは、俺に乳房を弄ばれただけで絶頂を迎えたらしい。

 磨かれた床にぽたぽたと落ちたのは、彼女の白い股の内側を伝って垂れた透明な滴だ。


「はあ、はあ、はあ……こ、こんな……」


 真っ赤な顔で女神がポルテに捕まえられたまま、へなへなと座り込む。

 その乳※から離れた俺の口から、唾液がいやらしく糸を引いた。

 鼻孔に残るのは、花の香りのような女神の甘い体臭だ。


 股間の勃起が収まらない。このまま射精してしまいそうなほどだ。


 女神はポルテに拘束されたままで、まだ胸元も隠せていない。ドレスの裾もめくれ、足の付け根が露わになっていた。

 そこから女神の下着が覗く。

 髪と同じピンク色のそれは、ぐしょぐしょに濡れて少し透けていた。俺がエロ動画でしか見たことのない縦筋がくっきりとしている。


 童貞の俺には刺激が強すぎた。頭がくらくらする。

 本来の目的は、別に女神を犯すことじゃない。結界をどうにかできれば十分なのだが……。


「ん?」


 そのとき、ぱきん! という強烈な音が霊廟に響いた。

 ドーム屋根を支える無数の柱たち。その間に白い光が薄く広がったかと思うと、一斉に音を立てて砕け散った。


「結界が消えたか!?」


 俺は慌てて外へと向かう。柱の間へと、恐る恐る手を伸ばすと……ダメージはない。簡単に通り抜けられた。

 俺は白の神殿の外に広がる、色とりどりの花壇がある庭園を踏みしめた。


「はっ!」


 ついに女神の束縛を突破できた。俺は霊廟を振り返り、まだ中で拘束されている女神を嘲笑った。


 だが蹲る女神の様子がおかしかった。ばさっ、と背中の翼の1枚が、大量の羽を舞わせて散華する。


「わっぷ。なんです?」


 突然のことに驚いて、ポルテが女神の体を放した。


「ああっ、なんて、なんてことを~~~~!」


 ドレスの胸元を引き上げた女神が、舞い散る羽を見て嘆いた。


「わたくしの翼が欠損するなんて!? 神格が堕ちたのですわー! あなたのせいですわ、クライ!」

「堕ちる? へえ」

「堕神化など、なんて無様な……! これではわたくし、神としての力をほとんど振るえませんわ! どうしてくれるのですかあ!」


 戻ってきた俺の前で、女神がぽろぽろ涙をこぼした。

 どうしたもこうしたもない。俺をこんな場所に幽閉しようとしたのが悪い。


 しかし目を引いたのは女神の胸元に現れた、赤い痣だった。

 花のつぼみのような紋章だが、もしかしてこれ「淫紋」の一種か?

 俺の行為で穢した証だった。どうやら間違いなく女神は「堕神」と化したらしい。


 そのとき、ばしゃあっ! という大きな水の音が聞こえた。


 霊廟の隣にある『命の泉』の部屋からしたようだが……。


「なんですか? 今の音……まさか、まさか!?」


 泣いていた女神が表情を強ばらせると、慌てて立ち上がって駆け出し、霊廟から出て行った。


 すぐに女神の悲鳴が届いてくる。

 俺も女神を追って霊廟を後にした。ポルテも一緒についてくる。


 『命の泉』の部屋は俺が目覚めたときとは、少し様子が変わっていた。

 中央にある石のベッドがずぶ濡れで、大量の飛沫が飛んでいる。

 そして空中に浮かんでいたはずの、あの『命の泉』がどこにもなかった。


 その光景を前に女神が呆然と立ち尽くしている。


「泉が……! わたくしの、『命の泉』がああ~~~!」


 どうやら泉がただの水となって落ちたらしい。

 あれ、消えてなくなるものだったのか。


「堕神となって弱体化したせいですわ!? あああ、これでは冒険者を転生させることもできませんわ! わ、わたくしの、存在意義がー!」


 ご愁傷様だ。だが俺には関係ない。

 二度と転生できないということだが、どうせ今の俺は課金できないしな。

 できたとしても女神の力が健在なら、また白魔道士{ヒーラー}にされるのがオチだ。嫌すぎる。


 というか、そもそもこれが俺の幻想なら、いつ終わるかわからない刹那の夢だ。

 白魔道士{ヒーラー}であってもせいぜい謳歌してやるさ。


 だから女神が頭を抱えている隙に俺はポルテを手招きした。

 治癒魔法しか使えない後衛職の俺にとって、従順な前衛が得られたのは幸運だ。今のうちに彼女をつれて冒険に出ることにしよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る