第16話6億

6億あたって人生は終わり。6億とは、100万を1㎝はばと換算すると、40㎝の札束が、横に3列と、縦に4列だ。6億あたって、人生というすごろくは、あがり。ここに、すごろくを、あがらせた男がいる。海老名秀平だ。秀平は、足が悪かった。だから、どこのしょくばにいっても、足手まといになった。人生を通して、秀平は簡単にいうと困っていた。そのすごろくが、おわったとき・・海老名は、なにも欲しがらなかった。なにもいらない・・・・・。すべて、手のなかにある時。現実にはもう見切りをつけ、さようならを言う。かわりに今日から、慣れなくてはいけない夢に、こんにちはだ。海岸には大きなブリッジがかかっていて、それを下から観覧できる、小さな公園のガラスばりになっている観光施設の休憩室に自動販売機が、たくさん並べてあり、いついても、いつまでいてもいい部屋がある。海老名はそこでコーヒーを飲んでいた・・・。なくなったなら別のを買いたした。お茶、カフェオレ、紅茶・・・・・。一日、日が暮れた。居通して。日がくれても、予定がなかった・・・・。動かなかった、体が。どこへいく気も起きなかった。ただ、ショック状態にちかく、体も頭も、固まったまま、動かなかった・・・・。この安心をずっと、待っていた。いつまででも、感じていたかった。秀平は、まだ何もしてない。マンションも借りていなかった。今日、帰る場所をまだ決めていなかった。会社をやめてきた・・・。ただ、それだけしかまだしてない。会社の寮からも、出てきた・・・・・。秀平をまっているのは、この自動販売機の部屋と、なだらかに平和にうねるこの静かな海と、ブリッジだけだった。アパートを借りようそのうち・・・。それまでは、ホテル暮らしだ。行き先と、予定を、すべて消そう。

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