第13話ストーカー

世の中は、損と得でできている。損得感情のある人間関係は人間関係としては、おわりだ。損得感情がないなら、本物の関係だ。人間は利益をうむ。その利益がほしいらしい。どんな種類の利益か、しらないが。あるストーカーに言わせれば、同時にリスクを、生むらしい。そのリスクが、こわいらしい。だから誰とも付き合わない。ひとと、つき合うことが、損益?と、考えたことなかった。ただし、まぁ、そのストーカーのような、人から摂取するような人種とつき合うのは、たしかに損益だ。君がもっているバナナがほしいため、近づく人種が いるわけか。そんなこと想像もできなかった。バナナより、本人の人としての、ぬくもりが、バナナに負けるなど想像しない。自分の人間的ぬくもりに、そばにいるんだろう、と。バナナなんか・・・バナナなんか、持っていることも、忘れている。そのバナナのために、やさしくしたと バナナをくれないんなら、返せと、やさしくした労力を。ストーカーは、言う。労力は投資だと。ほんとうに投資家が、向いている。投資家が、ストーカーに向いているのか。狙った獲物を一心に追う・・・・いつでも冷静沈着に。 あみは自分のことも自己反省してみた・・・。自分も過去に損得感情で、利益目的で人とつき合ったことは、ないか・・・・。思い当たる。あみは、その相手とつき合っていてたのしかった。そして、相手はもっと楽しそうにしていた。相手にたのしみを、与えられていた・・・。つまりだましていた。だましている、そんな感覚もあった。利用している、と。相手は自分を信じていた。自分がだまして、いる部分には、まんまと気づいていなかった。自分もだましている部分には、意識しないようにしている。そんな歳月で、失ったのは、時間だ。当たり前だが、なにも得しない。楽しい時間を過ごせても、ほんとうの、時間じゃない。あいてを、だましても。それがつづくと、だますことがどんどん、うまくなっていく。そして、最後にはだますことしか、できなくなっていく。だます時、自分のこともだましている。それに、そんな嘘には、とう然、ボロが出る。すぐ、見抜かれる。そして、自分自身にも、バレる。それなのに、他人をだますやり方しか、分からない。本当の自分でいる、やり方が・・・・分からない。はじめて就職した先は、たしか、営業だった。人をだますうでが、ものをいった。先輩や上司はすごかった。かっこいいと、しびれた・・・・ひとを、だます、テクニック。  だまされるのは、自分だ。自分の神様にあざむく、ことだ。営業先で営業マンは、けっしてすがおを、出さない。そんなとこも、当時はかっこよかったが。あのすとーかーを、説明するのには、ピッシャリとはまる。あいつは、営業だった。まさに。あいつは、わたしにも、わたしのともだちにも営業だった。素顔ではない。いつもえがおで接し、他人をおだてる。じぶんが欲しいものを、ぽろっと、相手がじぶんに差し出さないか、待っている。とんでもない、誤算だ。小脇にかかえている札束を、自分は仲間だと信じこませられたら、ひと束かふた束、いやまるごと全部、まちがって ぼくに渡すかも分からない 今に渡すだろう。そのときにゃ、しめたもんだ。そのときに、とろう。そんなかおを、している。全部顔に出ている。それを、すべて読まれているのに。営業か、営業ではないか、の違いは、・・・・むずかしいが、ほんとうの自分か、だろう。そして、かくしている、ことはないか。相手のしあわせを、本当に想っているか。人間かんけいが、いつも、営業だと、ほんとの自分を、うしなう。また、人間関係には、どこかに、営業は、必要でもある。                    でも、バナナを得るために、その営業にティッシュをくばり、ボールペンをくばり、笑顔を配り、営業にいく交通費もかさむ。顧客が、とうとう、バナナを差し出さなかったら・・・・・。                『埋め合わせ させてやる 』      『一年半もの、労力とコスト、リスク、エネルギーが、かかっている、それに・・・・』  『回収できると、かけたから、渡したものも・・・回収できると、信じたから、渡したものも、ある。』              ストーカーの遼一は、時東あみのことを、忘れたわけではなかった。車につけた発信器も、その音信を途絶えた。くるまを、代えたのか・・・・。今、どこに・・・・・。最後に会ってから、2年になる。だが、りょういちのめのまえにいつでもあみの姿は、あった。手を伸ばせば触れられる。感触さえある。あの笑顔、あの声 すべてぼくのものだぜったいにひとには渡さない。ぼくのもの       つよい独占欲は鎖とかして、100キロの距離でも空をとんだ。くさりは、しっかりと彼女の体をがんじがらめに、しばった。   りょう1の想念は、あみの脳波にやどった・・・・。あみは、おしゃれなカフェなどいかなくなった。大好きだった出張でのビジネスホテルにもときめかない。服はなんでもよく、食べるものも何でもいい。趣味嗜好が、変わる それは 危険信号だった。7割のあみの人格は、遼一が、支配している。    ヤドカリだ・・・・・・。            まるで・・・・・・・・。           だれかかのじょをたすけられるのか・・・・。 大沼は、コーヒーを飲みながら、長い間 デスクにいたが、なにもよい考えはうかばなかった ・・・・。だが、よいきざしがある   大沼のなかに、もやもやと、いやしっかりと、彼女を助けたい・・・という意思がわき上がってくる。               かなしげに、じぶんがみた依頼人の中でも忘れられないほど、悲しげに、こぼした涙。無理に笑おうとして、姿勢をくずし、倒れこんだ、あのときのかのじょの絶望を知っているのは、オレだけだから ・・・・

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