第10話内山冬樹

内山冬樹が、亡くなったと知ったのは8年後だった。仕事がなかったからだ。いや、仕事はさがせば、あった・・・。内山冬樹は、働かなかった。働けなくなった。それが、正確だ。働く手や足は、十分あるのに。なぜなんだろう・・・・  。恋を、したからか?   内山冬樹は、時東あみに、そのころ、一層のめり込んでいた。していたパートの仕事も辞め、友人に誘われていた和食店の仕事も断っていた。なぜ?まず、なぜ、パートの仕事を辞めたのか・・・・・・・。分からない。あみには。あみは、ずっと、友人としてそんな姿を見ていた  それだけでも生活に困っているじょう態で、その状態で、辞める?とは。次の再就職があるわけでも、なかった。再就職先は、はじめの頃、さがしていた。はずだった。自分の20年のキャリアを活かした、技術職だ。経験のない20歳の応募者に決まったらしかった。2、3社は面接にいったんだろう。それ以来、面接のはなしは聞かなくなった。2、3、単発の仕事ならあったようだ。そして、あみが、きた100キロ先のこの会社のことも言っていた。夜勤で眠い仕事だと、確かに言っていた。何日かは、来たのだ。確かに夜勤で眠い仕事だが、割りのよい高給なバイトだ。他に仕事がないのなら、なぜ、続けないのか・・・・。          8年後に家賃を滞納していた大屋さんに、事情を聞いたところ、飢えていた、と言っていた。別れた彼女がみかねて、食事を作りに来ていたという。             内山さんのテナント兼アパートは、工場のならぶ大通りにあった。1回はテナント、2階は住まいに、なっている。あみは、廃業になった電気屋のかたずけを手伝いに、来たことがあった。8年後に、ここへ来たとき、1回部分は飲食店になっていた。       『四ツ葉』おもてに、かかげてある。   四ツ葉・・・・・・。果たして、縁起がよいのであろうか・・・・。死す場。死つ場。こうかんがえて、ぞっとした。4は、縁起がよいのだろうか・・・。あみは、背筋が寒くなった。   この四ツ葉に、食べに入ってみた。とっても感じのよいおかみさんだ。おかみさんが、ひとりでしている。まず、ドアをあけて・・・・打ちっぱなしの、地面のコンクリートは、あの時のままだ。ほぼワンルームの1回部分に台所が簡易につくられ、それをはさんで、カウンター、そしてあとは、かべ際に、二人がけの机が、2セットあるのみだ。日替わりの料理は絶品だ。まちがいない。そして、価格はすばらしく安い。おかみさんと、ふたりきりになりながら、しゃべり下手のあみは、沈黙を気にしないように、食べた。      

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る