第9話迷路
これから寝ようと思う。まだ迷路の中だ。コンクリートの迷路の中で、おびただしい数のあしおとがする。理由は、こうだ。あみが、時おり休みにいく、ガラスになっている壁に もたれかかる、あみは、なお うつくしかった。そして美しい美女が、閉じこめられたコンクリートのなかでもがくのは、なお、うつくしかった・・・。これを見た隣の陸からは、男たちが、大勢美女をたすけるため、その、たったひとつ、ある、出口のない入り口を、入っていた。あみにとってこれは、恐怖だった。救いでもある、救いに似せた恐怖だった。大勢の男が、自分を探して迷路のなかで、迷えば迷うほど、迷路の面積は増えた。 目を冷ましても、やはり迷路・・・・・。あきらめられたなら、迷路は消える。そんな噂があった。そうかもしれないな。 『もう、いらない』あみは、言ってみた。もともとなかったものだ。もともと、なかったものが、手に入るはずだ、と考えたときから、それは、あったはずのもの、になる。あったはずのものがないんなら、消えた。パニックだ。 あみは、根気よく、言ってみる。豪邸は もう、いらない。友達は、もういらない。働かなくてすむ、夢のようなお金持ち、になって、世界をたびし、ワインとチーズを、ホテルのベットの上で飲んで、ぐっすり寝る。朝食はバイキング。コーヒーが透き通るくらい熱くて、湯気をだしながら、カップにそそがれて・・・・・・。朝食のあとは、美術館。明日は牧場。おしごとは、ちょっとだけ、する。週に2日くらい。もう、恋はしないと、決めた美女は、つぎの恋まで、待つことにする。・・・つぎの、恋まで。ワインを、飲んで、おつまみをいろって、テレビでも見て、待つ。酔ってきたなら、振り返ろう。今日までの、よかったことだけ。お酒と幸せに酔って、半わらいで、にんまりして、寝る。 明日は、えっと・・・ふきの煮物をじょうずに作る婦人会の立食パーティーへ行く・・・。分かっている。場違いだと。でも、じんわりと、ゆっくりと、失恋をいやそう 。 あさっては、競馬、宝くじを当てる必勝法コンテストを見てすごし、ごごからは、海へいく。 働かなくていい、暮らし。みんなが、夢みるにきまってるじゃないか。そして、決まってる。だれにも、叶わないと。
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