第4話正体

人の体は、水やカリウムやカルシウムや、その他の様々な金属イオンからなる。イオンにはプラスとかマイナスの電気的性質がある。すべて分子と原子から成り立っており、そのそれぞれには電極がある。脳であっても。例えば、うれしいとか怖いとか、ショッキングな刺激が脳をかけめぐる場合、そのかけめぐっているのは 感情ではなくて、電流である。うれしい刺激、恐怖の刺激、として脳波となる。そして、意外にも体の物質のみならず、体にやどっている魂もまた、電気である。感情が電気であるように、魂は空気中にその感情イコール電気が、体内から放出され浮遊することをいう。電気は3メートル先まで空気中を飛ぶこともできる。       また、わたし達の周りの空気中には、ラジオのような電波がとんでいる。ある周波数が。1192とか、872とか、周波数を合わせて受信すると、その電波の正体は、音声として現れる。おなじように、人間の体は、無意識のうち、感情という電流を、空気中に放出することもある。それは、とりわけ強い感情だ。放出された感情は、その感情の対象物へと向かう。その感情は、つまり電流は、空気中を、移動しまたは、浮遊する。感情が人へ伝わるのはこういった物理的な現象である。少なくとも、大沼健二の見解はそうである。だから、健二は非科学的なことにも、まったく、たじろがない。ましてや今、科学では説明できないことで、助けを必要としている女の子が目の前にいる。健二にしか、助けることはできないだろう。いや、自分にもできる保証はない。             感情が放出され、浮遊し、その感情の対象物へと向かった先に、その対象物が電気を通すものであった場合、その感情は、やすやすとそのものの、なかへ入る。・・・人は、電気を通す・・・・。うれしいとか、楽しいとか、しあわせだとか、そんなよい感情が放出されてその対象物へ向かった場合はよい。     問題は、・・・憎いとか、殺してやるとか、許せないなど、悪い感情が空気中を移動してその対象物、とりわけ人間に向かった場合である。感情とは形がなくて、ひとの心の中にあるだけの、そんなおとぎ話のなかの、やわらかいただの夢ではない。現実に存在する、物理的に発生した、電気的周波である。その電気的周波が7割が水分である自己のからだの中だけに流れ、とどめられ、けして空気中へもれないのであれば、安全である。けれどそれは、不可能だ。からだを、絶縁体でおおわない限り・・・。その放出した周波数で、ものを動かすことはできる。そしてその周波数で、ひとに害を加えることは、できる。それがもし、人に害を加えたいという、感情だった場合。                 そのマイナスな感情を受信し、体内に入ってきた人は、それを放った人間とおなじ感情が体内を、かけめぐる。それが、人を傷つけたいという感情ならば、その人も同じようにひとを傷つけたくなる。それはその人の感情ではない。その人がやさしいか、どうかは関係ない。もっとも、全くちがう波動が出ているひとはそんな電波を受信しないが。    憑依のからくりは、そんなところである。彼女は、目がよく見えないと言っていた。ときどき、はっと我に帰るのだという。そしてその時にだけ、視界がひらけ、ものがよく見えるのだと、言う・・・。健二は、ひっかかるところがあった。ストーカーの田村遼平は、夜盲だった。

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