5-11 魔王VS勇者(キチ)

 どうも焔です。現在魔王グリードと二ラウンド目の戦闘が開始しました。




「んじゃ先制攻撃いただきまーす。」




 俺は、一瞬の元グリードに近づき腹に一発入れるが、周囲の色をも飲み込みそうな黒いものに阻まれる。




「絶界か」




 絶界とは、防御魔法レベル10魔法で自分の指定した空間だけを消すことによって全ての攻撃を防ぐ魔法だ。


 空間防御系の弱点は…




「せいやー」




 次に放った拳は、絶界を貫き、グリードの体に当たる。


 グリードの柔らかいお腹に当たり中の内臓にダメージを与える。




「ぐふぅっ」




 口から血を吐き後ろに下がる。


 なぜ突破されたか理解して憎そうに睨む。




「概念攻撃か…うざったるい」




 概念攻撃とは、「何かをした」という概念を使った攻撃で、どんな防御や障害があっても事象として起こす攻撃だ。




 グリードは、後ろに飛びながら魔法を連射してくる。


 そのすべてがレベル8以上の高威力全体魔法を圧縮し単体魔法としているため当たっただけでさっきの数倍のダメージを受けるだろう。




「その程度の攻撃ぐらい壊せる。」




 ブラッドメタルを装備した拳で魔法を殴ると魔法が霧散し消える。




「魔王、さっきより弱くなってるぞ」




 再度、白兵し、正面から拳を振り上げ殴ろうとする。


 その動きは、大きく隙が大きい。




「甘い」




 殴ろうとした俺の体を剣で切ろうとしたグリードの脇を抜けるように避け背後から殴る。




「私が弱くなったのではなく君が強くなっただけだ。」




 殴られたところを、自分の身ごと爆発させ、俺にダメージを与えてくる。




「いっつ自分の身を削ってでも攻撃するとは面白い。」




 俺は、距離を離し、グリードの様子を見る。


 グリードは、全身にエクスヒールを使い傷を癒すが俺の攻撃で傷んだ内臓までは、治せなかったようで、せき込んだ勢いで吐血する。




「どうしたんですか、魔王様、早く続きをしましょうよっ」




 ブラッドメタルを日影と戦うために作った魔剣デュランダルの形に変形させる。


 デュランダルの形状は、禍々しい黒と赤の剣で銃剣のような形をしている。この形状は仮の姿で真の姿は別にある。




「何なのその武器は、さっきから複数の武器に変化するし、変化するごとに性能・素材・効果が変わってくチートじゃん。」




 グリードは、ブラッドメタルの性能に恐怖し始めていた。


 そりゃー銃にも剣にも刀にも武器ならなんにでもなれる物があったらチートって叫びたくもなるよね。




「これは、俺の血が練りこまれた金属で決まった形がなく使用者の意のままに形が変形する金属だ。そんな話は、どうでもよくてグリード今からの攻撃、すべてが即死級だからしっかりよけろよ。」




 俺は、無作法にデュランダルを横払いする。


 ここからだと今のデュランダルの刀身だと100%当たらない位置にグリードは位置するが、何かを察したのかグリードは屈んで避ける。


 するとグリードの後ろにあった玉座や壁が切り刻まれ塵と化す。




「ちょっ何してるの、こんなことしたらほかの人にバレて貴方達問題になるわよ。」




 さっきまでは、魔法とか色々ぶっ放していたがほとんどが相殺され霧散していたためバレることは、無かったが流石に城の一部が破壊されると色々まずいのだろう。


 だが一番の疑問は、なぜグリードは俺たちの心配をするのだろう。


 人を憎み、好戦的なら逆に他の魔族にバレるように、行動し人間を悪と歌えば魔族たちは信じ、戦争の口実になるのだろうが、グリードの表情は、いたずらした子供のように焦っている。




「安心しろグリードお前に会う前門の前でこの部屋のトレースをし複製して、空間遮断した部屋で俺たちは戦っていたからバレることはないだろう。」




 俺の言葉に理解できないのか?を浮かべるグリード。




「あー簡単に言うとお前の気付かないうちに玉座の間と同じ部屋を作り今俺たちは、そこで戦ってるってことだ。だから本物の玉座の間は何にも起きてないし今後俺たちが派手にやっても誰にもバレやしないよ」




 やっと理解したのか頷きながらも難しい顔をする。




「でも、私には、転移の魔法を受けた記憶も世界が入れ替わった感覚もないよ」




 基本、転移系の魔法などは、触れられるか範囲に入ると発動するもので、対象に少しながらも違和感を感じさせる。




「そのことか、グリード俺は、今お前に触っている」




 グリードの目の前の俺がそういう。


 グリードは、背中に違和感を感じたのだろう前に跳ね後ろを見る。


 すると、そこにも俺がいる。




「こういうことだ。俺がここが別の空間だという説明をしている間ずっと触れていたがお前は、気付かなかった。まぁ全探知妨害&温度匂い音と言ったものすべて消して空気と一体化させたからな。無意識まで意識することは、出来ないだろうそういうことだ。」




 俺の言いたいことを理解し、俺の怪物性を理解したのだろう。




「じゃあ貴方なら元から私を即殺することも出来たってことなの?」


「出来たが、俺は話し合いに来ただけで元から戦いに来たわけでは無いからやる気は無かったがな。」




 出来るか出来ないかで言ったら出来るが、やったかやんないかで言ったらやらない。


 理由は簡単、戦うために来たのでは無く、話し合いをする為に来たのだから。




「グリードお前は、話し合いに来たのに相手を殺すか?殺すと答えるのならお前は、サイコパスだな。後、いい女を殺す趣味は俺にはねぇ。」


「変なこと言うなバカ」




 最後の言葉を聞き体を抱きながら怒るグリード。


 俺の中では、魔王と言うより誰かの為にと頑張っている少女にしか見えない。




「まあそんな雑談は置いておいて、ここからは制限が無いから全力で来いグリード。お前の全力をねじ伏せ俺は、お前と話し合いをするんだ。」


「わかった。魔王グリードの名のもと本気で戦うことを誓うわ。・・・・プロテクト解除」




 何か制限が合ったのだろうそれが解除されさっきまでとは、大違いな力が溢れている。




「面白い、勇者 焔全力を持ってお前をねじ伏す」




 ブラッドメタル製デュランダルを構え宣言する。




「すべてを燃やせゲヘナの業火」




 グリードの手にカンテラがありそこからは、明るくも暗い地獄の火が燻っていた。


 グリードがカンテラの口を開けると、酸素を手に入れた火のごとく燃え上がり襲い掛かってくる。


 魔法の代償だろうグリードの腕には大やけどがあり、一部酸化していた。




「う~ん受けよう」




 俺は、防御せずゲヘナの業火を食らう。


 全身が焼け酸化し、呼吸しようと口を開くと一瞬にして水分が蒸発し焼かれる。


 声を出すことも出来ず全身が焼かれていく。


 このまま死んでやる気も無いため激痛に耐えながらリジェネのように毎秒回復するように設定し、耐え続ける。




「はぁはぁはぁ」




 何時間立ったのだろう…もしかしたら5秒だけかもしれないし1日たったかもしれない。


 痛みのせいで時間感覚がマヒしているがゲヘナの業火が止んだ。


 目の水分も奪われたため見ることは、出来ないが空間把握で周囲を確認することは、出来る。


 グリードは、発動の代償で右腕を失っており、俺も焼死体のようなミイラのような状態になっている。髪が焼け皮膚が爛れ所々骨が見えており、目は蒸発し穴になっていた。




「エ…ク…ス…ト…ラ…ヒ…ー…ル」




 焼かれ時々空気が抜けるような音になりながら呪文をかける。


 全身が光に包まれ炭化した腕が新しく生え変わり、火傷した皮が落ちあたらしい皮が出来る。


 エクストラヒールとは、死んだ後、死後硬直が全身に至る前ぐらいまでなら蘇らせることすら出来る最強回復魔法だ。


 最強だが、それゆえ消費MPが馬鹿にならす一般人一人で撃とうものなら、魔力が切れ、生命力まで吸われ死ぬだろう。


 まぁグリードの使ったゲヘナの業火も同じだけど。




「マジで死ぬかと思った。全身焼かれる感覚って気持ち悪いな、皮が溶けてデロデロしてるし、空気を吸うと、肺全体が言い表せない痛みに襲われるし、なんかもう受けたくないな」




 俺の生々しい解説とさっきの現状を思い出し身震いし恐怖する香蓮たち。だけどなぜか日影だけは、神妙な顔をして考え事をしていた。




「君、本当に人間なの?地獄の業火に焼かれて生きてること自体、おかしいのにその状態で回復魔法まで使うだなんてキチガイが頭のねじが飛んだ狂人よ。」


「だから、称号に、勇者キチとか言うのがあるんだろう。」




 目の前で起きた理解できないものを否定するように頭を振るグリードに向け魔法の準備をする。




「キチガイって話をするなら、一人でLv10魔法撃てるお前も大概だと思うぞ。」




 そう吐き捨てながらグリードに向かって緑色の光の球を発射する。


 不意打ちの様になった為に、回避が遅れ炭化した腕に緑色の球が当たり、吸収される。




「あっが‥‥」




 緑の球が当たり、吸収されて直ぐグリードが炭化した腕をむしり始める。




「焔…何したの?」




 急に一心不乱にむしり始めたグリードに驚きながら香蓮が現状解説を求めてきた。




「ん?遅延性のエクストラヒールをかけたんだけど、避けられるとは、思わなくって外れなくってよかったわー(棒)。後、急にむしり始めた理由は、炭化した下から新しい皮膚が生成されてるから異常に痒くなるんだよ…試してみる?」




 俺は、グリードに使った遅延性エクストラヒールの球を見せつけながら香蓮に問う。




「絶対に嫌」




 この魔法は、新しい体を生成するため、美容や健康にもいいが嫌なら止めよう…まあその代わり死ぬほど痒いけど。


 そんな話をしていると、息を切らしながらグリードがむしるの止め、息を整えている。


 炭化していた腕は、生まれたての様なつるつるしていた。




「お疲れさん、さっきのゲヘナのお返し。」




「最悪なお返しね、だけどありがとう」




 グリードは、悪態吐きながらもお礼をしてくる。




「何のことでしょう?俺は、俺の物を直しただけだ。」




「まだ、あなたの物になった記憶は無いのだけど。」




 俺の告白を、バッサリと断り、雷の剣を持ち白兵してくる。




「それは、悲しな。」




 ウソ泣きしながらも迎え撃つために、ブラッドメタルを変形させる。




「なぁグリード、飽きたからもう倒してもいいか?」




「やれるものならやってみなさい」


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