第9話 来客歓迎!

 アニマルガール達が現れてから1週間くらいが過ぎた。

 今は彼女達に文字を覚えさせたり、算数を教えたりとまるで学校の先生みたいなことをしている。

 動物飼育員ってこんな仕事だったっけ?


 飼育員ネットワークからの情報でサファリで動物の群れに混じって少女が居たって言う感じの証言も少しずつ増えている。


 そうだよねぇ……

 偶然、飼育下にあった動物だったのがこの5人ってだけで、サファリの方が動物の種類も数も多いんだから当然野生のアニマルガールが存在する。

 あ、カワラバトは野生動物か。


 色々事情があってサファリにいるアニマルガール達の保護には動けないらしい。

 たぶん、人手不足だと思いまーす!


 ところで……


「グリズリー、寮の前でうろうろしている白衣を着た不審者がいるんだけど」

「カコさんはいったい何をしているんだ?」


 グリズリーを連れて買い物に行った帰りに、私達の寮の前でインターホンを押そうかどうか迷っているカコさんがいた。


「カコさーん」

「!?」


 びくっと肩を震わせてカコさんが私達の方に振り返る。


「こ、こんにちは……」


 相変わらず見た目と言動が一致しない人だなぁ……


「カコさんの方から来るとは珍しいな」

「えーと……お、オフなので……」


 オフの日なのに白衣を着てるんですね……

 まぁ、私もほぼ毎日飼育員の服装だから同じようなもんだね。


「つまり、遊びにやってきたって事ですね!さぁさぁ!中へどうぞ!」

「え?あ、あの……」

「前に寮に来るって言ってましたよね?」

「は、はい」

「レッツゴー!」


 そこはかとなくこのまま帰ってしまいそうな気配を感じたので、半ば無理矢理カコさんを寮の中へ押し込む。

 上司に失礼かな?

 でも、オフの日だから関係無いよねぇ!!


 関係無いよね?


 と言う訳でカコさんを寮の中へ連れ込む事に成功した。


「ささ、適当に寛いでくださいね。グリズリー、ちょっとカコさんの話し相手になってて」

「それは構わないが……」


 私はお昼の準備のためにキッチンへ向かう。

 しばらくはグリズリーが相手をしてくれるだろうし、あと一時間もすればみんな帰ってくる。

 急がねば!


「……」

「……」


 グリズリーとカコさんはソファーに座るが、お互いに何を話して良いか分かんないみたい。

 何でも良いんだよ!何でも!


「カコさんは甘いものが好きか?」

「へ?は、はい」

「実はワタシも甘いものが大好きなんだ」


 そう言えば冗談で持ってきたハチミツを大層気に入ったようで、ピューマがグリズリーのハチミツを盗み食いしようとして滅茶苦茶怒ってたっけ。


 クマ達は執着心が凄いから気に入った物を取り上げるのは御法度らしいよ。


「カコさんは何が好きなんだ?ワタシはしーくいんさんから貰ったハチミツが好きだ」

「わ、私は……チョコレート」

「ちょこれーと?」


 あ、そういやまだチョコレートはあげたこと無かったっけ?

 さすが(?)のカコさんも一対一なら石化することも無いみたいで、前回みたい沈黙する事は無かった。


 しばらくすると私の部屋からピューマが現れた。

 また、私の部屋で昼寝をしてたんかい!

 日当たりはそんな変わらないと思うんだけど……


「あれ?カコさん来てたのね」

「こ、こんにちは」

「こんにちはー」

「カコさん、何しに来たの?何かの測定?」


 そう言えばカコさんが居るときは大抵何かの測定をしてたから、アニマルガール達の中ではカコさん=測定の人みたいな認識なのかも。


「カコさんは遊びに来たらしいぞ」

「遊びに!?」


 遊びが大好きなピューマが遊びと言う言葉に反応する。


「いえ……よ、様子を見に……」

「何して遊ぶ?トランプとかボードゲームとか色々あるわよ!」

「た、たくさんありますね。色々。べ、勉強はしていますか?」

「してるわよ。しーくいんさんが文字とか覚えた方が楽しく遊べるからって」

「ああ……そう言うことなんですね」


 すいません。

 勉強させるために娯楽で釣りました。


「あ!そ、その……ピューマさん達のお部屋を見てもよ、よろしいでしょうか?」

「み?別に楽しくないと思うけど……」

「き、興味あります。すごく」

「そう?じゃあ、案内するわね」


 ピューマ達は自分の部屋の様子を見せるためにカコさんを連れて寮の中を案内する。


「ここがわたしの部屋よ」


 ピューマの部屋は少しだけ物が散乱しているけど、汚いと言うほどじゃあない。

 普通のお部屋と言っても良いくらい。


 だけど、やっぱり少しだけ普通じゃない物が置いてあったりする。


「……この丸太は?」

「爪研ぎ用よ。この前、わたしが使っていたのを運んできてもらったの」


 アニマルガール達は人の姿になったのは良いけど、動物時代の習性がかなり色濃く残っている。

 ピューマは毎朝爪研ぎをしないと落ち着かないらしいので、ピューマが動物だった時に使っていた丸太を運んできてもらった。


 ちなみにピューマの部屋の壁に貼ってあるジャパリパークのポスターを剥がすのは禁止事項!!


 何故って?


 理由は丸太を運んだのが一昨日の事だったからです。

 ポスターの裏を見てはならないの、デス!

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