第6話 打ち合わせ
「こ、声を掛けてください!し、心臓に悪いです」
「声は掛けましたよ。大きめの声で」
「あ……えーと……すいません」
どうやら今回のことは始めてではないみたい。
「んん!き、気を取り直して昨日の健康診断の結果からお話しま」きゅー
何やら場に削ぐわぬ鳴き声が聞こえてきたような?
きゅー
「うぅ……」
どうやらこの鳴き声はカコさんのお腹の虫が鳴いているらしい。
「……お弁当食べます?」
「……いただきます」
昨晩から食事を忘れて一心不乱に研究に打ち込んでいたが、私の来訪で集中が途切れた為に身体が空腹を思い出してしまったらしい。
私には到底出来ない。
「では、昨日の健康診断の結果からお話します。レントゲン検査等の結果からアニマルガール達の身体構造は人間と変わらない事が判明致しました。また、動物的な特徴を残す部位に関しては、解剖学的に繋がってない無い可能性が高いです。こちらをご覧下さい」
そう言って見せてきたのは誰かの尾てい骨を横からレントゲンで撮影したものだった。
うっすらと尻尾の輪郭が見えているけど、尾てい骨と接続していない。
「でも、触れば温もりがありましたし、触覚も残っているみたいですよ?」
「おそらく、幻肢痛のようなものではないかと推測されます。服を含めてこれらは既存の物質に当てはまらないサンドスター由来の物質、仮に“けものプラズム”と定義されるもので構成されて──」
の、脳の容量が足りない!
カコさんの話が耳から入って口から垂れ流されるかの如く流れ出ていく。
「す、スタァアアアップ!!」
「は、はぃ!?」
「カコさん!バカにも分かるように短く簡潔にしてください!」
「え、えーと……つ、つまり彼女達は人でも動物でもなく、アニマルガールなのです」
「アニマルガールなのですね!分かりました!」
カコさんがこれで良いのかなって表情をしてるけど気にしない!!
「それと彼女達の運動能力はサンドスターを消費することにより動物時代の能力を再現していると思われます。映像にも彼女達が走った際にサンドスターの輝きが映り込んでいました。サンドスターには現象を記録再現する性質……や、止めときます。つまり、彼女達はサンドスターの力を使って運動能力を高めているのです」
「へぇ、サンドスターって凄いんですね」
「ですが、もし彼女達がサンドスターを消費し尽くしてしまった場合、アニマルガールの姿を保てなくなる可能性も考えられます」
そうなると……
「も、もしかして運動させたのは不味かったですか?」
「サンドスターを消費するような場合は問題かもしれませんが、現状普通に生活する分には問題はありません。それにサンドスターは大気中や食物中にも含まれておりますので、補給も可能あると考えられます」
「そうなんですか……ん?あり?それってもしかすると餌を食べてるだけでアニマルガールになるって事じゃ……」
「その心配は殆どありません。5人の内最も質量が多かったグリズリーさんを元に映像で映ったアニマルガール化の原因のサンドスターの推定量との比を食べ物からの摂取に当て嵌めて日数に換算すると……こんな感じです」
カコさんが食事だけでアニマルガール化に必要なサンドスターを摂取する場合の結果を見せてくれた。
「……人生を二回はやり直せそうですね」
普通に飼育している分には動物達がアニマルガールになることは無いみたい。
今回、カコさんの説明で理解できたのはサンドスターがスゲーって事くらい。
「話は変わりますけど、体力測定はどうします?運動公園程度じゃ収まり切れなさそうですけど……」
「近くのサバンナエリアで測定を行いましょう。種目は通常の短距離走等を除いて……」
「むしろ長距離が短距離走の代わりになりそうな勢いですね」
「ついでに運動前と運動後の保有サンドスター量を計測しましょう」
「体力測定前後に病院で計測することになりそうですね」
「いえ、持ち運び可能なサイズの計測機器がありますので、現地で測定することができますので、病院に立ち寄る必要はありません」
「便利なものもあるんですね」
と、こんな感じでカコさんと私の打ち合わせが進んでいく。
こっちは順調だけど、インパラを探しに行ったピューマ達は大丈夫かな?
そう言えばカコさん説明中は一度もどもらなかったなぁ。
「と、ところでイツキさん。こ、今度、寮にお伺いしても良いですか?アニマルガール達の私生活からでも、わ、分かることはあります。たくさん」
「あ、電池切れですか?」
「で、電池?」
カコさんのクールビューティモードは長くは続かないらしい。
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