第5話 ブルーインパクト

 爽やかな早朝、清々しい日差しを顔に受けて私は目を覚ました。


「眩し……カーテン買わなきゃ」


 なお、起きたばかりの私はこの日差しを煩わしいと思っていた。

 夜遅くまで慣れないレポートの作成をしていたせいで寝不足なのだ。


 別に今日出せとか言う話じゃないけど、色々有り過ぎて日を跨ぐと忘れてしまいそうだから……


「おはよー」

「カワラバトおはよー……」


 窓の外から先に起きていたカワラバトが私に声を掛けて、そのままバサササと羽ばたく音をさせながら飛んで行った。


「……ィェァ」


 やめて、完全起動していない私の脳に美少女が空を飛ぶとか衝撃映像叩きつけないで!!

 今のでポンコツヘッドメモリーからいくつか記憶が消し飛んだわぃ!!


 つーか何処飛んで行った!!


 とりあえず、今はカワラバトの事は放って置いて、朝ご飯の準備をしなきゃ!!

 と、キッチンの方へ向かうと何やら外から風を切るような不穏な音が聞こえる。


 一体何が?


 外へ出ると寮の敷地内でグリズリーとピューマがバトルアニメばりの動きで戦いをしていた。


「か、観客席のダチョウさん?これは何があったの?」

「おはようございます。今日も良い天気ですね」

「うん、良い天気だね。で、グリズリーとピューマは何しとん?」

「グリズリーさんが模擬戦をしたいとのことで、ピューマさんがグリズリーさんのお相手をしているんです。ちなみに本日のラッキーカラーは青色だそうですよ」


 最後は別にどうでも良いよね?


 それとアニマルガールの身体能力が人より高いと言うのは昨日の時点で分かっていた事なので、カワラバトが飛んだ事に比べればインパクトは少ない。


 長引きそうな模擬戦だけど、私にはそれを即座に止めることが出来る必殺技がある。


「はーい!朝御飯ですよー!」

「ごはーん!!」


 ピューマが即座に戦いをやめて私に飛び付いてきた。


 飯は強し!


 でも、ごはんと叫びながら私に飛び掛かって来るのはやめてほしいかな。


 補食されているような気分になる。


 て言うか、先程からピューマもグリズリーも息が上がってるのに汗一つ掻いてない。

 美少女は汗を掻かないって言う都市伝説は本当だったのかな?


「ん?ピューマちょっと熱くない?」

「そう?」

「ちょっと待て!体温ヤバいよ!?」

「ちょっと木陰で休めば大丈夫よ」


 まぁ、ピューマの言うとおりちょっと休めば体温も引いたけど、体温が引くまでずっとハァハァしてるし、体温調節が上手く出来ていないのかもしれない。


 メモメモ……っと


 朝御飯を用意が終わる頃にはカワラバトがちゃっかり戻ってきていた。

 どうも屋根の上にいたらしい。


 とろこで、朝からインパラの姿が見えないけど、まだ寝ているのかな?


「ああ、インパラの奴ならジョギングに行ったっきり戻ってきていない」


 と、グリズリーからインパラについての情報提供を受ける。


「インパラァ!!脱走癖でもあんのかおんどりゃあ!!」


 ミッション発令!

 インパラを探せ!


 と、行きたいところなのだけども私は研究所で今後の打ち合わせがあるのだ。

 遅れるわけにも行かないし、インパラを探さないといけないし……


 とりあえず、朝御飯食べよ!


 朝御飯を食べながら今日の予定はどうしようかと話していると、私が研究所に行ってる間にアニマルガール達がインパラを探しに行くと言う事になった。

 しかし、ただ闇雲に探すとなると迷子になっているであろうインパラの二の舞になる可能性が高いけど、カワラバトが生まれてこの方道に迷った事がないと豪語しているので、任せてみようと思う。

 伝書鳩ってのがあったくらいだし、ハトは道に迷わない生き物なのかもしれない。


「みんなお弁当は持った?じゃあ、後は任せた!」


 私は研究所に向けて自転車を漕いでいく。

 彼女達だけに任せるのはちょーっと不安だけど、ここは彼女達を信じてみようと思う。



 軽快に自転車を飛ばしてやっと研究所についた私は研究所の中に入って目的の場所へ向かう。


 そこはとある人物の個人研究室らしい。

 まぁ、カコさんの研究室だけどね。


 コンコンコン


「……あり?」


 確かここへ入るときに研究室の中に居るから直接向かってと言われたのだけど、ドアをノックしても返事がない。


 念のため……


 コンコンコン


 二度目のノックでも相変わらず返事がない。

 留守なのかなと思いながらドアノブを回すとあっさりとドアが開いて中へ入ることが出来た。


「カコさーん?勝手に入りますよーって、居るし」


 カコさんの研究室の中は書類や本ががところ狭しと並んでおり、殺風景さに悪あがきをするかの如く、カコさんのデスクの上に動物のフィギアが乗っている。

 サーバルキャット、マンモス、ギンギツネ、エミュー?かな。

 エミューとは少し違う気がするけど、何の動物かは分からないので後で聞いてみよう。


「カコさん。かーこさーん!」

「……」


 一心不乱にパソコンに向かって何か作業をしているカコさんの耳には私の声は聞こえないらしい。

 呼んで置いてこの仕打ちとは……ぐぬぬ


 私は研究所内にある自販機で飲み物を買い、急いで研究室へ戻る。


「回りの見えないあなたに青い衝撃。ブルーインパクト!」

「ひゃうっ!」


 カコさんのうなじにキンキンに冷えたコーヒー缶を当てると可愛い悲鳴が口から漏れる。


 呼んで置いて無視するからこうなるのだ!

 反省してください!

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